知人が子ども撮影用の写真スタジオで働いている。
ある時、一歳児を連れた両親が来た。
何枚か写真を撮った後、母親が、
「泣き顔も撮りたいんです」
と言い出した。
え?
わざわざ泣かせるのかと戸惑っていると、
「大丈夫です。これを聴かせたらすぐ泣きますから」
と言って出したのはスマホ。
そして『鬼の電話』といったような、
子どものお仕置き用のアプリを立ち上げた。
呼び出し音が鳴るだけで、子どもの表情が崩れ始める。
そして、電話が繋がると(繋がったことになると)、
子どもは泣き出した。
「はい、今、撮ってください」
撮影する方は複雑な気持ちになったそうだ。
それにしても、
どうしてそんなに泣き顔を残したかったのだろうか。