酒場のカウンターで、
男が女に漢字のうんちくを披露していた。
そのたびに女は大きく感心する。
ともに四十代と思しき男女。
男が言う。
「愛っていう字から心をとって”受”けるって字が出来たのかな。
それとも、
”受”けるっていう字に心を加えて愛って字が出来たのかな」
女がまた大きくリアクションする。
ぼんやりと聞きながら、テーブルに2つの漢字を書いてみた。
愛 受
ちょっと待った。
「愛」という字から心をとっても「受」にはならないぞ。
「愛」の下の部分は「夂」
「受」の下の部分は「又」
それ違いますよ、と言いたくなったが、
もちろん、そんな無粋なことはしない。
だが、違うよ。
「愛」から心をとっても「受」にはならない。