山のあちこちに白いものが急に目立ったのは、4、5日前。
それまでは、山の緑のころどころが少し灰色がかっている程度だったのだけど、まるで白い花が咲いているかのように白く見えた。
それはホオの葉裏が風に吹かれているのだけど、瞬間的なある時期にその白さが特に目立つのだと知った。ずっと続くわけではなく、今のこの時期、特別に白いのだ。
ホオの葉は5月には出てくるが、葉をお寿司や団子を包むのに利用するのは6月からだと言われている。6月の方が香りがいいからと聞いていた。つまり、葉裏が真っ白になるときが、一番利用できるときなんだと思う。
そして、その真っ白なホオの葉を見ると、無性に利用したくなる。実際、この地方の人たちは、そんな木があると、「あ、ほうばがあるな!」と目を輝かせる。
この地方の人たちは、ホオノキのことを、「朴葉の木(ほおばのき)」と言う。そして、ホオノキの葉のことを、「朴葉の葉っぱ」と言う。「葉」を2回言うわけである。葉を指す場合は「朴葉」ではだめで「朴葉の葉っぱ」なのだ。
ちなみに、朴は日本全国標準では「ほお」と書くがこの地方では「ほう」と書く。森林公園的なところの樹木の看板にも「ほう」と書いてある。図鑑の植物名(標準和名)では、ホオノキである。
いろいろと、ややこしい。
さて。以上は前置きである。常に、前置きが長い。どうも、植物について話し始めると止まらない。
数日前、木曽の入口である道の駅賤母(しずも)に行くと、「朴葉まつり」なのであった。
柏餅の朴葉版を、美濃では朴葉餅というが、木曽では朴葉巻という。木曽の朴葉巻は、輪生する朴の葉をその形のまままとめて蒸してあるのが特徴。
3個が一緒になっているのもあれば、6個ぐらいまとまっているものもある。好きなのを買えばよい。1個ずつバラのもあった。団子を朴の葉でくるみ、いぐさで縛ってあった。
朴葉巻だけでなく、朴葉寿司も並ぶカウンター。
今日は私も朴葉巻を作ってみようと思っている。
朴葉の利用の時期はまた、ホオの花の時期でもある。
上品なアイボリー色の花が好きだ。下を通るといい香りがした。
花の時期に葉が特に白いというのは、虫に対して何かの効果を出しているかもしれない。
(写真/2019年5月末~6月初 岐阜県中津川市)