山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

ニラとスイセン、毒草の見分けについて

2019-11-27 | 植物利用

どこかの青果店でスイセンの葉をニラとして販売した件。

その青果店に行ってみたいものだ。単純に興味がある。どんなものを売っている店なのか。何か珍しいものが並んでいるのではないかと。

道端に生えているものを採取して売るなど、チャレンジャーである。道端のワラビやミツバやサンショやコシアブラやウドやタラノメや、ウコギやツリガネニンジンやギボウシや、アサツキやノビルやフキやタンポポの葉やナズナの葉や春の七草や、カキドオシやゲンノショウコやカワラケツメイやセンブリや、桑の実やアケビやサルナシの実やグミやキイチゴやナツハゼやシャシャンボや、山栗やトチの実やクルミやシイの実を採取して売ったからと言って、それ自体は悪いことではないと思う。いや、むしろ私的には好ましいことである。(所有権の問題は別である。)(ちなみにミツバとキツネノボタンは間違えやすいので注意が必要)

しかしながら、青果店というプロとして営業する以上は、商品知識はきちんと持っていなくてはいけない。毒草を売っていいわけはない。スイセンはヒガンバナ亜科の毒草。食べると嘔吐に止まらず大変ひどい状態になることもあるらしい。(ヒガンバナも毒である)

ガーデニングでスイセンになじんでいる人ならすぐ分かるが、スイセンの葉はちぎると透明のゲル状の液が出てくる。ニラではそういうことはない。ニラはちぎると強い「ニラの匂い」がするので、採取したときにすぐニラだと思うはずで、ニラだと思わない場合はニラではないのである。

多くの品種のスイセンはニラよりはずっと大型で葉も厚く、ニラとはかなり違うので、以前はニラとスイセンを間違えるなんてありえないと思っていたが、最近はそう思わない。スイセンの園芸品種は多種多様で、いろいろなものがどんどんつくられているので、小型の、ニラみたいなものも見ることがあるからである。

なので、ネットでスイセンの写真を検索したりしてニラと比べて見分けようとすること自体、やらない方がいい。写真で見ても分からない。間違いの元なのでやめた方がいい。

もし採取して食べようと思うなら、写真でニラを同定するのではなく、においをかぐことが必須である。

そして、どんな野草でも、最初にちょっとだけ食べてみて(毒見)、なんともなければたくさん食べるという段階を踏まなければならない。(逆は真ではない。なんともないからといって無毒だとは断言できない)

また、野草で、ちょっと噛んでみて苦いものは食べてはいけない。それにはアルカロイドが含まれている場合が多い。有毒のキンポウゲ科やトリカブトなどである。前述のキツネノボタンもキンポウゲ科。それらを適量(微量)服用して薬にする場合もあるが、しろうとのやることではない。苦くてもさほど毒でないものもあるが(タンポポなど)、分からない場合は、念のため、苦ければやめるということである。タンポポの苦みはあの白い液体に含まれるシュウ酸であり、食べ過ぎると体に良くない。そもそも苦味というものは毒であることを知らせるための味だとよく言われる。ちぎると黄土色の液が出るのはたいていケシ科で、それも有毒である。

さらに、薬用効果についていえば、ほかのみんなにとって体にいいからといって、自分にもいいということにはならないので、むやみに人の真似をしたり、テレビやネットで「みんなが」言っていることを自分に適用したりしないことである。ちなみに私は「玄米を食べないように」と鍼の先生から言われている。玄米は胃に負担がかかるので胃の弱い人は食べない方がいいのである。


ハックルベリージャム……

2019-11-07 | たべもの・台所

ようやく山々が色付いてきました。家の周りも、ドウダンツツジがやっと赤くなったけど、ちょっと鮮やかさに欠けます。

2週間ほど前、長野県伊那市の産直市場グリーンファームで、季節外れのブルーベリーを見つけた。結構大きいパックに入って500g400円ぐらい。安いので買ってジャムにしようと思う。けれどラベルをよく見ると、「ハックルベリー」なのだった。

ハックルベリーという名前は知っている。確かアメリカの何かの物語の題名に入っているような気がする。それが果物で、ブルーベリーの兄弟だとは知らなかった。でもまあ、こんな季節にブルーベリージャムが作れたら嬉しいので(ハックルベリーだってば!)買ってくる。

家に持ち帰り夜寝る前に、デザートデザート、ちょっと生で食べちゃお、と一粒口に入れたら……。うえっ。

なんじゃこれっ(怒)。

すぐ吐き出した。ブルーベリーとは全然違う味。パックの上に挿しこまれている折りたたんだ説明書を見ると、「ハックルベリーはブルーベリーと似ていますが、生では食べられません」とある。まあ、近縁の種でも味が全然違うということはよくあることだ。

やっとジャムを作る気になったのは数日後のこと。説明書を広げると……

「ハックルベリーはブルーベリーとは違い、ナス科で、……」

!!!!!

全然近縁じゃないじゃないか! アカの他人ではないか!

ブルーベリーはツツジ科である。コケモモなんかと同じである。

ナス科と知ったとたん、ハックルベリーがイヌホウズキに見えてくる。紫黒色の実がなるのは、イヌホウズキやらアメリカイヌホウズキやらワルナスビやら。あと、ナス科といえば、ヤマホロシ。トマト、ナス、ピーマンもだけど、野生の種には有毒のものがいっぱいある。有名なのはハシリドコロ、ホオズキ、チョウセンアサガオ。野生じゃないけどタバコ。

何だか怖くなってきた。それでもせっかく買ってきたのでジャムをつくるのである。煮たら変な匂いがする。焼き芋の匂いなんだけど微妙にいやな匂い。わずかにヨウシュヤマゴボウの臭い匂いを薄めたような匂いもする。いい匂いだと思えばいい匂いのようなのだが、イヌホウズキだと思うと変な匂いに感じてくる。これがバイアスってやつだろう。変なやつだと思うとどうしても変に思える。

砂糖をどさどさ入れてジャムにしたが、味見すらしていない。一度変なやつだと思ってしまうともうだめである。潰すとぶちゅっとはじけて汁が飛ぶし、その弾力加減もやな感じでいまいましい。おどろおどろしい。我ながら、こうまでハックルベリーをうとまなくていいじゃないかと思う。産直市場で堂々と売ってるんだからいいやつに違いないのである。みんながおいしいという人気商品に違いないのである。変だと思う私が間違っているのである。

でも、怖くて味見すらしていない。できあがったジャムはタッパーに入れて冷蔵庫の中にある。食べられる日が来るのだろうか。誰か代わりに味見してくれないだろうか。一体どんな味がするのだろうか。

私の偏見のせいでかわいそうなハックルベリーである。

 

*追記:調べたところ、ハックルベリーはツツジ科のブルーベリーに近い種で、ガーデン・ハックリベリーはナス科のイヌホウズキの仲間だとのこと。私が買ってきたのはガーデン・ハックルベリーの方です。あいつめ、やはりイヌホウズキだったか!

ちなみに、イヌホウズキは植物図鑑には有毒と書いてあるが、薬草の大家の故村上光太郎先生は「イヌホウズキが有毒というのはデタラメだ」とおっしゃっていた。