山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

急傾斜地の小さな径

2015-08-25 | 山里
  前の記事から続く

今は集落には車道がある。下から上までつづら折になって、この道が家と家を結んでいる。
大正とか昭和になって、荷車やリアカーができたとき、この道の原型ができただろう。
もしかするとそれ以前から、こういう形でも人の歩く幅の小径はあったのかもしれない。
    (*後日記/車道の原型となる道は元からなかったということ。
      昭和45、6年頃今の車道ができ、それ以前は小径だけで移動していた)  

けれどこれが車道になって、耕地は大幅に削られた。こんな急傾斜地では、幅2、3メートルの道をつけるのに、斜面をたくさん削らなければならない。こんなところでなくても、棚田のあるところでは、圃場整備によって田んぼが減ったという話をよく聞く。
まあ、今となってはどこでも耕地はお荷物のようなもので、ない方が手を入れなくていいから喜ばれるのが実態だけれど、この車道は、昔からあった人の歩く小径を分断している。
耕地もまた分断されて、ときおり、わずか幅30㎝ぐらいの畑が道の脇にあるのを見かける。





小さな径をどれだけの人がどれだけの年月歩いたことだろうと思う。
人が行き来してにぎやかだった村の昔のことを思う。
人が耕さなくなれば村は必要なくなり、村に人がいなくなれば、耕地も径も消えていく。
日本が、アジアが向かうところはどこなのだろうか。

写真/長野県遠山郷・下栗(飯田市旧上村 2015年6月)Simoguri,Tooyama, Nagano-pref.

ブログランキング参加中
にほんブログ村 ライフスタイルブログ 田舎暮らしへ にほんブログ村 ライフスタイルブログ 緑の暮らしへ にほんブログ村 地域生活(街) その他ブログ 全国地域情報へにほんブログ村


人が行き来する小径 傾斜地の集落で

2015-08-23 | 山里

急傾斜の畑のあいまに、人が一人歩ける幅の径がある。
両側に栗の丸太を置いてそこが道であることをはっきりさせ
はしご状に、横にも短い栗の丸太を置いてある。
それは歩きやすくする役にも立っているが、常に下へと落ち続ける土を留める役割もしている。

径は大きな杉の木の下へと続く。
そこには心地よさげな暗がりがある。
その大木の根元に丸い石が据えられていたり、小さな鳥居があったりするかどうかは分からないけれど、座ってむらの耕地や家々を見下ろしたり、対岸の山を眺めたりするにはいい場所だろう。
鍬や種や作物を背負ってこの急傾斜の小径を上った人たちは、きっとこの木陰で足を止めて、汗をぬぐったに違いない。

こういった小さな径が、家と家、家と耕地を結んでいる。
この径は今も住宅地図の中ではっきりと点線で示されている、使われている径でもある。
古い時代にはこの径を主にして人が往来していただろう。ちょっと隣の家に行くのに、このかわいらしい径を辿っていただろう。
今よりももっと人は歩いていて、この土地に密着して生きていて、誰かと出会うことも多かっただろう。

続く

写真/長野県遠山郷・下栗(飯田市旧上村 2015年6月)
    Simoguri, Tooyama-go, Nagano-pref.


ブログランキング参加中
にほんブログ村 ライフスタイルブログ 田舎暮らしへ にほんブログ村 ライフスタイルブログ 緑の暮らしへ にほんブログ村 地域生活(街) その他ブログ 全国地域情報へにほんブログ村


雨の音

2015-08-22 | めぐる季節と自然

名古屋で夜、雨の音を聞いていた。
比較的強い雨でも、しとしととした静かな音。その大部分は、庭の柿の木の葉を打つ音。
柿の葉はやわらかいので、音もやわらかいのだろう。
そして、家が瓦葺なので、屋根を打つ音は全く聞こえない。
中津川の家で聞く音とはずいぶん違う。

中津川の家には、テラスにプラスティック製の波トタンの屋根をかけてある。
まず、それを打つ音がとても大きい。
庭には柿の木もあるけれど、周囲の広い面積の雑木林の樹々を打つ音が混じり合って
奥行きのある雨の音になっている。

中津川の家で聞く雨の音が好きだ。
都会のマンションなんかに住んでいたら、雨の音は全く聞こえないのかもしれない。


お盆が終わって中津川に帰ってきたら
セミの声はすっかりツクツクボーシになっていた。
道端では、アキノエノコログサが盛大に出穂。
お米と同じような角度でうなだれている。




写真/畑の中の道(奈良県十津川村 2009)

ブログランキング参加中
にほんブログ村 ライフスタイルブログ 田舎暮らしへ にほんブログ村 ライフスタイルブログ 緑の暮らしへ にほんブログ村 地域生活(街) その他ブログ 全国地域情報へにほんブログ村



木造の小学校 鳥取県智頭町那岐

2015-08-09 | 山里

鳥取県智頭町那岐の小学校。
素敵な校舎です。
できたすぐに、廃校になり、今は公民館として使われています。

今の学校はどこもこんなふうにお洒落で
子どもはこんな校舎が使えて恵まれていると思います。

廊下の両側に教室があるのですが、
ここの地区のお年寄りが、昔の学校は片側一列に教室があってよかった、と言っています。
どの教室も南向きで明るいからというのが理由です。
昔は100m校舎といって、ものすごく長い校舎だったということです。
それって移動が大変そう。


先日、整体の先生と、
昔、いつも校舎が工事中だったよね、とか、俺プレハブ校舎だった、とかの話で
盛り上がりました。
子どもがわしわし増殖していた時代の話です。
余談ですが、実は先日、その先生が私と同じ中学校に行っていたことが分かってびっくり。
中学校とは全然違う場所にある院なので、まさかそんなこと思いもせず、
1年も通っていて全然知らなかった。


ところで、私の家のまわりでは
ヒグラシはまだまだ鳴いていました。
夜明けには特によく聞こえます。夜明けに起きていたことなどなかったので知らなかったのです。あまり眠れてない気がしていても、明け方には爆睡しているようです。けれど今朝は例外でした。
4時45分という、まだほとんど暗いうちに最初の一声が聞こえ、
やがて大合唱となり、明るくなった頃みんな鳴き止んで、透明な青い空気が白くなってあたりが静寂に包まれます。
そして、遠くでキジバトが鳴き始めます。

続いて、ヒヨドリのピーピーいう声、スズメらしき声。

そんな鳥が鳴いていても、ヒグラシの後では、静寂のほうが押し迫ってきます。

それから、ギチギチギチギチとけたたましいモズの声。秋と夏が入り混じる。
静寂を楽しみたいので、モズとヒヨドリとスズメにはちょっと静かにしてもらいたいと思います。
しかしこれが車の音でなくてよかったと思うのです。


ブログランキング参加中
にほんブログ村 ライフスタイルブログ 田舎暮らしへにほんブログ村 ライフスタイルブログ 緑の暮らしへにほんブログ村 地域生活(街) その他ブログ 全国地域情報へにほんブログ村


家々を結ぶ小径と用水

2015-08-08 | 山里

鳥取県智頭町那岐。
今は集落の中を普通の車の走る道が通っていますが、
家々の裏には小さな道があり
ここを通って人々が隣の家に行ったり来たりしていた(している)ことが分かります。
道の横には用水が流れています。
この水が昔は飲料になっていたということです。

このあたりの用水も、今は下水道が完備したので、きれいになっていますが、
一時期は大変に汚れていたということ。おそらく昭和30、40、50年代ぐらいのことでしょう。

うんと昔の人は、食器を洗うのに洗剤など使わなかったのです。
油ものなどめったに食べなかったので、それでよかったのだと思います。



今日は夕方、庭の草取りをしていたら、突然バリバリ、メリメリ、と近くに雷が落ち
怖くなって家に入りました。
雷は本当に怖いものです。

チョウセンヨメナが咲き始めています。
ヒグラシはすっかり鳴かなくなり、ツクツクボーシがよく聞こえるようになりました。