山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

粉雪と、糸寒天

2019-01-28 | めぐる季節と自然

白く垂れこめた空から音もなく細かい雪が
さらさらさらさら落ちてきて
みるみる間に景色が白くなりました。
この冬初めての雪らしい雪。

これまでも3回ほど、夜の間にうっすらと積もったのですが、「雪の日」という感じは初めてです。

いつのまにか大寒も過ぎていて
いつの間にか冬も終わっていくのかなと思っていました。

山奥の里の雪景色はどんなふうかなと思います。
雪景色を見るのは心休まるものです。
多すぎる雪の地方は、辛いものだろうと思います。


先日、岩村町で糸寒天を干す景色を見かけました。
糸寒天は岩村の隣の山岡町が一番の産地です。
岩村でもやっているのだと知りました。
冬の間利用しない田んぼをつかって、干しています。
「寒さ」というのは熱エネルギーとは言わないと思いますが
寒さ→乾燥 の力を利用したフリーズドライフードです。

今気づいたのですが、「寒天」っていうのは、寒いとき干すからなのでしょうか。
天は空という意味ではなく、天草(てんぐさ)の天だと思いますが。



(写真/2018年12月 恵那市岩村町)

木曽のすんき漬けとオオウラジロノキ

2019-01-20 | 植物利用

塩を使わない菜漬、木曽の「すんき」にオオウラジロノキの実が使われるという件が、どうも気になって仕方ないので、長野県木曽町で行われたすんきの講演会とすんき料理試食会に参加してきた。
  過去の記事 乳酸発酵をうながす「すなし」
気になって仕方ないというのは、疑わしいとか不思議とかいう意味ではなく、好ましくてその話に近づきたいといったところである。
行ってみて、そして帰ってきて調べてみて初めて知ったのだが、木曽町はスローフードでまちおこしをしようという方針らしく、その目玉としてすんき及び発酵食品を取り上げ、学者先生を招いて「研究所」をつくり、すんきの謎を研究しているということである。

オオウラジロノキは、その標準和名で呼ぶ人など山里には誰もいなくて、各地でいろいろな呼び名がある。
すんきの本場、この木曽町では「ズミ」と呼んでいることが判明。
長野県のある地方では「すなし」(多分、酸っぱい梨)と呼ぶ。中津川ではオオズミという人がある。

別途「ズミ」という標準和名の植物があるのでややこしい。中津川で「きいズミ」と呼ばれているのがきっとズミだろうと思う。春にピンクの濃淡のある非常にきれいな花が咲くが、よくマイマイガ(毛虫)の巣窟になってしまうのが欠点である。実は直径8㎜ぐらいと小さくて黄色い。


今日の講師の先生は、東京農大名誉教授の岡田早苗先生で、
漬け物を漬けている女性かと思ったら男の人だった。
先生のお話で知った主要なこと。

●驚き1 すんきはただの乳酸発酵ではない。コハク酸というものがすんきの味を特徴づけている。
●驚き2 すんきは赤カブでないとうまくできない。白カブだとただの乳酸発酵の漬物になる。赤カブのなかに、コハク酸の元になるリンゴ酸が多く含まれているため。(カブといってもカブ菜)

である。
そして、なんといっても
●驚き3 すんきを漬けるときに入れるオオウラジロノキの実には乳酸はない。
 けれど、リンゴ酸があるので、それがコハク酸を作る。
ということ。

リンゴ酸ねぇ。オオウラジロノキは、バラ科リンゴ属。りんごの仲間。リンゴ酸とはよく言ったものです。
で、オオウラジロノキが乳酸発酵を促進すると思っていたのだけど(本にもそう書いてある)、
そうではなかったのですね。

以上は岡田先生のお話です。

そのほか、会場に来られていた開田高原のお姉様方からいろいろお話を聞きました。
その話は次の機会に回します。