第36回将棋ペンクラブ大賞特別賞受賞のこと
このほど、将棋ペンクラブ大賞特別賞受賞の報
をいただいた。受賞理由は「駒と歩む」刊行と永
年の将棋駒研究とあり、大変うれしく光栄なこと
と思っている。
将棋は小学校入学前に覚え、深く楽しむように
なったのは、社会人となって会社の先輩と同好会
を立ち上げて南口繁一先生を迎えてから。
そんなあるとき、漆の文字がこんもりした宝石
のような美しい「盛上げ駒」に出会って、俄然、
欲しくなった。当時は駒づくり名人とされた宮松
影水さんがいて、頼もうと思っていたところ突然
亡くなってしまった。それでやむなく、自分で作
ることにしたのが30歳少し前であった。
試行錯誤を経て、初めての駒(盛上げ駒)出来
上がったのは半年後。すぐさま南口先生に、これ
で教えてもらおうと持参したところ「良くできて
いる。使うのはやめて今春予定している中原名人
と加藤一八段との記念対局で使おう。それまでは
大切にしまっておくように」と。駒には「無双」
の銘まで頂戴した。
駒づくりにのめり込んだのは、そのような幸運
があったからであるが、やがて将棋駒に関する歴
史や古いことにも興味を抱くようになり、調査探
索を始めたところ、思わぬ発見に出くわしたりで、
それがいくつか続いた。
中でも、水無瀬神宮(水無瀬家)での調査で、
400年前に作られた「水無瀬駒」と、その制作
と需要の記録「将棋馬(駒)日記」との出会いは
大きな出来事で、その後の生涯の指針となった。
今回の「駒と歩む」は、それら調査研究成果と、
マスコミが取り上げてくれた関連記事を、80歳
盤寿を区切りにして1冊にまとめたものである。
内容は第1章・水無瀬駒。第2章・水無瀬駒を
探る。第3章・近代将棋「駒に生きる」。第4章・
発見された水無瀬駒。第5章・良尊風景。第6章・
図録で見る熊澤コレクション。第7章・将棋駒論
考。第8章・将棋駒日記。第9章・大局将棋駒の
復元までの総数270ページ。大判のカラー写真
は200枚以上を収録して、どのページを開いて
も写真や図表を配して「観る本」を目指した。
出来上がったのは半年後の81歳盤寿真近の頃。
書店を通さない自費出版とした。
価格は1冊4500円(別途送料500円)。
どうか、とくとご覧いただきたい。
以上ーーー