この頃 姫たちの寝ている時間が長くなっている。
別荘地で拾い上げてから15年が経ち
人間ならもはや相当の歳になる。
こんなに永く一緒に暮らしていると
ことばの響きや顔色でこちらの心が読まれてしまう。
冗談なのか本気なのか
ちゃんと区別できて
甘えてみたり さっさと自分の寝床にもぐってしまったり
腰の重い客には はやく帰れとばかり
ワーワー鳴きつづけ
わたしが食事をはじめると
必ず砂トイレにたっぷりの糞をして逃げていく。
急いで換気扇を回しても もう間に合わない。
あいつら楽しんでいるのだ。
生姜焼きの匂いと姫のにおい
味わう余裕もなく
ひたすらかき込むだけである。
あぢさゐの紺の滴り雨あがる