〈 昨日のウナギの所為か今日は一日体が軽い 〉
近いうちにもう一度連れて行ってくれと
女房が言う。
ウナギはあまり好きでなかった筈、
食べたいなんて言ったことはないのに・・・。
初めての「ひつまぶし」がよほど気に入ったのだろう。
また連れていくと約束する。
ぼくには決して忘れられないウナギの想い出がある。
詩人阿久津哲明先生が河原で焼いてくれた蒲焼。
眼前を流れる余笹川で先生が自ら3本捕らえたもので
石ころの間に炭を熾して焼いた。
タレだけは知り合いのウナギ屋さんから分けてもらったが。
まさに天然ウナギの芳ばしさ!
これを越える蒲焼には出会ったことがない。
いつまでもぼくの記憶から消えることはない。
そのひと月後、
余笹川の氾濫で
先生は家ごと濁流にのみ込まれてしまった。
ウナギを食べるたびに
あの美しい余笹川の流れが思い出される。