ベンベエの詩的つぶやき

世の中をちょっと斜めに見て・・・

吟遊詩人

2011-08-19 23:33:47 | 日記・エッセイ・コラム

ラジオの深夜放送から流れてくる
ベートーベンのピアノソナタ「月光」。

(月光、自分もピアノで弾いてみたい)
笑いながら
一杯の井戸水を出してくれた人も居て。

そう! もしもピアノが弾けたなら
ぼくも今頃は吟遊詩人・・・・・

ラジオに耳を傾け
一粒一粒ブドウを啜りながら
切なくも美しい恋の情景など夢想している。
ライラックの香りが立ちのぼってくる。

詳しい記憶は幽か
になってしまったが
周りの女性たちを虜にさせる
「若き日のウェルテル」や
「赤と黒」のジュリアン・ソレルの姿があらわれる。

深夜放送には青春があり
若き日の悩み多きぼくがいる。

    西瓜食ぶ昔こどもの賑やかし


何が残っただろうか

2011-08-18 11:19:24 | 日記・エッセイ・コラム

ひさしぶりに覗いた魚屋
カンパチのかまを見つけたので
早速、照り焼きにして夕飯のメーンデッシュ。
定番の
モロヘイヤ・オクラ・茎ワカメの
ぬるぬるサラダと共に。

向かいの農家のカミさんが
バイク事故で全治4カ月の大けが。
ぼくと同じ歳の主人は膝関節に故障があるので
しばらくの間たいへんだ。
すぐ食べられるように
トンカツを一枚とどける。

NHK BSプレミアム「人間の条件」
五味川純平著を観る。
関東軍の満州侵攻、著者自らの体験を小説にし
発刊後1300万部の大ベストセラーとなる。
二十歳の頃読んだが
正気と狂気、生と死、
人間の心の奥底にある「悪」と「善」について
考えさせられた。
殊に兵舎の片隅で妻美千子と一夜を共にする場面は
なんとも憐れである。

戦争、
あれほどの悲しみと犠牲を重ね
そのあとに一体、なにが残ったか・・・

毎年、8月になると
戦争をテーマとした映画やドラマが放映されるが
見るたびにやるせない思いが沸き上がる。
一体、なにが残ったのだろうか・・・・

ヴェトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争・・・
ほんとうに、何が残った!!

     落蝉を草の日陰に抱かせむ


花火

2011-08-15 16:07:09 | 日記・エッセイ・コラム

きょうも記録破りの猛暑!
高温注意報が各地で発令され
セミさえも葉裏でじっと声を潜めている。

里帰りのほとけたちは
さぞかし驚いているにちがいない。
自分たちは熱帯に迷い込んでしまったかと・・・・・

いや、いや、
すでに肉体のないほとけたちだから
太陽熱は素通りして
どれほどの暑さにも平気かもしれない。
〈 心頭滅却・・・・ 〉 などとは
肉体を有している生者にのみ与えられた修行。

確かに、夢の中に現われるほとけさんは
みんな涼しい顔をしている。
汗だくのほとけさんなんて聞いたことも
見たこともない。

ついに節電の意識ももうろうとしてきたので
正気を失くす前に
キッチンと2階のエアコンを使うことにする。
ふたりの姫たちのためにも。

岩塩を舐めながら
冷たいウーロン茶を飲みながら
送られてきた詩集などめくっている。

今夜はわが町恒例の花火大会。

     憂きことは闇に飛び散れ大花火


盆迎え

2011-08-13 11:34:01 | 日記・エッセイ・コラム

老いも若きも男も女も
白い開襟シャツがまぶしく
ランニングを着たこどもらは
長い昆虫網をかかげ欅の木を仰ぐ。

静かな村がにわかに賑わって
墓場への道は
幼馴染みに出会うところ・・・・

墓碑に刻まれた先祖たちの享年を
手のひらで撫でながら
ぼくの知っている祖父も曽祖父も
人生の悟りをひらき
立派なお爺さんであった。

「おせんちゃん」と 母は周りの人々から慕われ
父は財を成し 
叔父は幽玄の画風をととのえ。

それに比べて
すでに祖父の歳を越え
曽祖父の歳と同じになっても
未だ くだらない詩なんぞ書いている自分に
恥ずかしさを覚えてしまう。

ぼくは死ぬまで立派なお爺さんにはなれそうもない。

背中に覆いかぶさってくる大勢の御霊たち、
一年ぶりの里帰り。
・・・・・・さあ帰りますよ。

上空ではトンボの数がふえている。

      箸を置き黙祷八月十五日


とんぼ玉

2011-08-10 14:07:24 | 日記・エッセイ・コラム

花は咲くまでが愛おしいもので
いざ、咲いてしまうと
もう終わりのような気がして
急に寂しくなる。
これは我が儘というものだろうか。

ようやく夏水仙が咲いた。
長く真っ直ぐな茎のてっぺんで咲く桃色の気品。
夏水仙などと他の名前を借りずとも
ちゃんと独自の名前を与えられるべき孤高の花である。

約百年前に作られたという
ヴェネチアガラスのとんぼ玉をネットで見つけ
さっそく取り寄せる。
 〈 看板に偽りなし 〉
深紅の連珠は期待を超えて艶やかに
ヴェネチアガラス特有の深い光彩を放っている。

高温注意報が出る中
汗垂らしながら熱々のトウモロコシをたべる。
一本は姫ロクサーヌの分。
よほど好きなのだろう、まだ熱いのに食べたがる。
(彼女たちは猫舌の筈だが・・・・)

西山の向うから雷鳴が近づいてくる。
ひと荒れきそうな雲行き。

     稲びかり一瞬猫の眼と合ひぬ