活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

想説/活版印刷人あれこれ5

2009-08-11 14:52:03 | 活版印刷のふるさと紀行
イエズス会総長猊下

 私は総長猊下が日本に関して出来るだけ明確な事情把握を得られるよう心から願って
本日はこの国の印刷事情をご報告すると同時に私の提案に耳を傾けていただくべくペンをとった次第です。
 なにとぞ、取り急ぎ当報告書を提出する私の微衷をご賢察の上、その不備をご寛恕いただきたいと存じます。-…-…

 3日目の夜住院に戻ってヴァリニャーノはさっそくローマの総長宛の書簡を書き出したのでした。
まず、報告書の前半では、禅僧から得た知識を次のように簡潔にまとめておりました。

 日本では仏僧(ボンヌ)と呼ばれる宗教家が300年も前から木版印刷で開版事業を行っている。日本の上層階級たる領主、殿(トノ)、公家、武家(ブケ)と呼ばれる騎士たち、彼らは押しなべて仏僧を尊敬、仏教に帰依してきたので、木版印刷された中国伝来の「宋本」、「元本」、「明本」など各時代の仏典、経本、あるいは儒教書をこれまた中国伝来の印刷術で本にして、競って知識を求めて来た。部数は上層階級相手であるから限られているようだ。
 この開版事業は日本の有数なテラのある本山(ホンザン)で行われてきたが、このところ相次ぐ戦争と混乱でかつてのように盛んではない。近年、ミヤコの禅寺では仏書以外に歴史書,医書、詩文など文学書も手がけるようになっている。

 身分上これらの書物を手にすることのない商人や地主、奉公人も私のみるところ知識欲は旺盛で、日本人の識字率はヨーロッパのどこの国民をも凌駕するのではないか。

 日本人が優雅で礼儀正しいことは先に報告したとおりだが、書物を愛し、文字に書かれた知識に関心を寄せることで、彼らが優れた天性と秀でた理解力を持つことはおどろくほどである。日本を司牧するわれらとしての着目点はかかってここにある。

 そしてヴァリニャーノは報告書の後半でいかにも彼らしいアイデアを披瀝しているのです。

 


コメント
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