私的図書館

本好き人の365日

『舟を編む』

2011-10-18 19:31:00 | 日本人作家
三浦しをんさんの小説、

『舟を編む』(光文社)

を読みました。

辞書を作る辞書編集者たちが主人公。
日常生活を送りながらも、つい細かい言葉の使い方が気になってしまう彼らの生態がすでに可笑しい♪

言葉という大海原を行く舟のような辞書を作る。
言葉という誰にとっても身近で、それでいて奥深い世界にハマってしまった人間たち。

出版社の片隅で脚光を浴びることなく、毎日毎日黙々と仕事をこなす彼らが、言葉を定義しようと情熱的に議論する様子がとっても面白いです。

「恋愛」とは何か?
「右」の定義とは?
「島」はどう説明するのか?

言葉を言葉で定義することがこんなに楽しいなんて!

恋愛の定義を異性に対する恋慕だとしてしまったら、同性愛は恋愛ではないのか?
二次元のアニメのキャラクターに恋してしまったら?

最近はパソコンで文章を打つ人が多いので、ほとんどの漢字は変換してくれるし、意味もある程度表示してくれるから辞書を引くことも少ないかも知れませんね。

ひとつひとつの言葉を吟味し、大切に大切に辞書に載せていく。

出版社内での人事異動。
私生活での「恋愛」
辞書にこめた名もない編集者たちの思い。

ちょっと辞書に対する見かたが変わってしまいそう♪

私は辞書ってけっこう使います。本もそうですが、辞書ってなかなか捨てられないので、未だに小学生の頃の辞書が机の上に並んでいたりするんですよ☆

ふと気になった時いつもお世話になっている広辞苑第三版は、田舎から出て横浜で暮らすようになり、休日に東京見物に出かけた時に買ったもの。
原宿とか渋谷とか、いろいろ見て回って結局買ったのが広辞苑って、どんだけ都会に緊張してるんだよ(苦笑)

都会出の広辞苑は今は岐阜の山奥で重々しく机の上に鎮座しています♪

いつもは当たり前すぎて意識すらしない辞書。
でも初めて異国の言葉を翻訳したり、自分の国の言葉を集めて本にするって、昔は国家的な大事業だったんですよね。
長い年月の間に、どれだけの言葉が生まれてきて、どれだけの言葉が消えていったことか。

辞書編纂に情熱を傾けるちょっと個性的な編集者たち。
三浦しをんさんらしく、そこかしこに遊びが散りばめられています。

面白い本でした☆