「欲」
「欲」
米国史に埋もれていた実際のクーデター事件を、独自の解釈で映像化した。
第一次大戦下の仏戦線。3人は出会った時からウマが合い、除隊後はアムステルダムで共同生活を送り「生涯お互いを守り合う」という誓いを立て固い友情に結ばれていた。時は流れ1933年のNY。軍部絡みの殺人事件に巻き込まれてしまい、容疑を晴らすため資産家や、戦争の英雄将軍に接近する。だが、それは巨大な陰謀の入口に過ぎなかった。
第一次大戦で軍最高位の名誉勲章を2度も授与された伝説的軍人。沖縄にあるキャンプ・バトラーはその名に因むが、退役後は、少数の軍事企業家に莫大な富が集中する矛盾を指摘した著書「戦争はペテンだ」を出版、理論派の反戦活動家に転身した。その後貧困に苦しむ復員兵を支援、それがルーズベルトの大統領選勝利を呼び込み、貧困層救済の景気対策ニューディール政策へとつながっていく。実在した人物や事件を随所に絡ませ、豪華キャスト勢揃いの娯楽サスペンスに落とし込んだ。前述の少将はもちろん、謎めいた反ユダヤ主義資産家、薬物中毒の刑事や怪しいMI6の諜報員、反ルーズベルトの元軍人など、くせ者キャラたちが奇妙な現実感を伴って映画は大きく動きだす。
いわゆる敗者に光を当ててきた。米国が次の大戦に参戦したことは周知の事実。だが、それを阻止するために、本作の主人公トリオのような名もない敗者たちが、人知れず戦ってきた物語も実在する。その真実に熱い思いを抱かずにはいられない。
高速列車を舞台に、乗り合わせた殺し屋たちの任務と因縁が交錯する。いつも事件に巻き込まれる、運の悪い殺し屋てんとう虫は簡単な仕事を請け負ったハズだった。しかし、なぜか9人の殺し屋たちに命を狙われ、すぐに終わるはずだった仕事は困難を極める。伊坂作品は、伏線や仕掛けが張りめぐらされ、終盤で回収されていく構成にある。映画では10人の殺し屋たちを小気味良く絡めとっていく。本作での殺し屋や泥棒やギャング、ならず者が数多く登場するが、誰もがそれぞれの人生哲学を貫き、個々の在り方が尊重されている。レモン、オレンジ、てんとう虫、王子、長老、白い死神、狼、蜂、それぞれの殺し屋たちのキャラクターが生き生きと立ち上がっている。そのカラーを衣装や音楽でも表現したことで、殺し屋たちの人間ドラマは、より深みを増している。そして物語の中には「制限」がある。その中で各々が如何に対処するか?それもまた面白くしている。全く持ってふざけた映画だ。でもそのバカらしさ、なぜか9人の殺し屋たちに命を狙われ、すぐに終わるはずだった仕事は困難を極めるのか?それを楽しんでもらいたい。