読書感想文

「この星を支配し続ける人類を脅かす最大の敵はウイルスである」というノーベル生理学・医学賞受賞者ジョシュア・レダーバーグの言葉から始まる。読み進むにつれ、今現在それを体感しているだけにその意味が迫ってくる。武漢でいち早く“謎の肺炎"をキャッチした二人の医師の運命、翻弄される武漢市民、動き出す共産党の規律検査委員会、警察の公安部門。現地の状況を分析しながら、その秘密を暴いていく。武漢に派遣された現役の中国人医師が明かす医療最前線は驚愕の連続。暗中模索の中、信じられない方法で医師たちは謎の病と戦う。中国人を救った「5種類の薬品」。なぜ中国はこの病を克服できたのか。一方、後手にまわる日本と、いち早く的確な対策で国民の命を救った台湾、両者の根本姿勢の違いは、時間が経過するにつれ、信じがたい「差」となって現われてくる。官邸・厚労省はなぜ国民の期待を裏切ったのか。政府の足枷となった2つの"障害物"の正体にも迫る。迷走する安倍政権は緊急経済対策でも国民の期待に応えられなかった。苛立った日本最大の圧力団体の“絶対権力者"が動き、あり得ない逆転劇が起こったことを日本のジャーナリズムは全く報じなかった。その裏舞台が初めて白日の下に晒される。我々が知るよしもない事実から謎を解いていくノンフィクション。日本人はなぜこれほどの政策失敗の中でも生き抜くことができたのか。コロナ襲来の「現実」と未来への「教訓」にまで提言している。