礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

米英は大東亜隷属化󠄁の野望󠄁を逞うし……

2023-07-16 05:42:28 | コラムと名言

◎米英は大東亜隷属化󠄁の野望󠄁を逞うし……

 情報局編『アジアは一つなり』(印刷局、1943年12月)から、「一、大東亜会議と大東亜共同宣言」の部を紹介している。本日は、その二回目で、「大東亜会議の経過」の節の後半において、「大東亜共同宣言」を引用しているところを紹介する。

  大東亜共同宣言

 抑〻〈ソモソモ〉世界各国が各〻〈オノオノ〉其の所󠄁を得、相倚り〈アイヨリ〉相扶けて万邦󠄁共栄の楽〈たのしみ〉を偕〈トモ〉にするは世界平󠄁和確立の根本要󠄁義なり。然るに米英は自国の繁栄の為には他国家、他民族を抑圧し特に大東亜に対しては飽󠄁くなき侵󠄁略搾取を行ひ大東亜隷属化󠄁の野望󠄁を逞うし〈タクマシュウシ〉遂󠄂には大東亜の安定を根柢より覆さんとせり。大東亜戦争の原因こゝに存す
 大東亜各国は相提携して大東亜戦争を完遂󠄂し、大東亜を米英の桎梏〈シッコク〉より解放して、其の自存自衛を全󠄁うし、左の綱領に基き大東亜を建󠄁設し、以て世界平󠄁和の確立に寄与せんことを期す
一、大東亜各国は協同して大東亜の安定を確保し、道󠄁義に基く共存共栄の秩序を建󠄁設す
一、大東亜各国は相互に自主独立を尊󠄁重し互助敦睦〈ゴジョトンボク〉の実〈ジツ〉を挙げ、大東亜の親和を確立す
一、大東亜各国は相互に其の伝統を尊󠄁重し、各民族の創造󠄁性を伸暢〈シンチョウ〉し、大東亜の文󠄁化󠄁を昂揚す
一、大東亜各国は互恵の下〈モト〉緊密に提携し、其の経済発展を図り、大東亜の繁栄を増進󠄁す
一、大東亜各国は万邦󠄁との交󠄁誼を篤うし〈アツウシ〉、人種的差別を撤廃し、普く〈アマネク〉文󠄁化󠄁を交󠄁流し、進󠄁んで資󠄁源を開放し以て世界の進󠄁運󠄁に貢献す

 ウィキペディア「大東亜共同宣言」の項、ウィキソース「大東亜共同宣言」の項には、同宣言の「原文」が載っているが、カタカナ文、句読点なしで、旧漢字を使用している。
 上に紹介したのは、『アジアは一つなり』に載っていたもので、表記・句読点などは、『アジアは一つなり』に従った(ただし、旧漢字は、新漢字に改めた)。『アジアは一つなり』が引くものは、ひらがな文で句読点が施されており、「原文」そのものではない。

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「アジアは一つなり」大東亜会議、開催さる

2023-07-15 03:12:56 | コラムと名言

◎「アジアは一つなり」大東亜会議、開催さる

 四、五年前、古書展で、情報局編『アジアは一つなり』(印刷局、1943年12月)という冊子を入手した。本文114ページ、定価20銭、古書価300円。
 表紙および扉には、「アジアは一つなり/大東亜会議各国代表演説集」とある。
 本日は、同冊子から、「一、大東亜会議と大東亜共同宣言」の部を紹介してみたい。なお、大東亜会議が開催されたのは、1943年(昭和18)11月5日、および6日のことであった。

   一、大東亜会議と大東亜共同宣言
 
 聖戦こゝに満二年、今や皇威大東亜に洽く〈アマネク〉、大東亜の建設日を逐うて進み、早くもアジアの黎明を迎ふ。我々はこの輝かしい現実に当面して感慨まことに深きものがあるが、殊に過日の大東亜会議の結果、青史始つて以來の大東亜の結集成り、大東亜共同宣言の宣明によつて、アジアは一心一体となつて大東亜戦争完遂と、大東亜共同建設必成の決意を表明し得たことは、正しく「光は東方より」、世界人類の歴史に輝かしい新紀元を画したものといふことが出来るのである。

  大東亜会議の経過
 大東亜会議は十一月五日、六日の二日間に亘つて帝国議事堂内で開かれた。これこそは正しく大東亜の共同意志を表明し、大東亜十億民衆の団結を、事実を以て全世界に向つて明示したものであつて、東亜の歴史に、否人類の歴史に初めて見る盛観であり、全世界の視聴が挙げてこの会議に集注されたのもまた当然であつた。
 相会する〈アイカイスル〉代表六名、帝国代表東條〔英機〕内閣総理大臣、中華民国代表国民政府行政院院長汪精衛〔汪兆銘〕閣下、タイ国代表内閣総理大臣代理ワンワイタヤコン殿下、満洲国代表国務総理大臣張景惠閣下、フィリピン国代表大統領ホセ・ペ・ラウレル閣下、ビルマ国代表内閣総理大臣ウー・バー・モウ閣下のほかに、晴れの陪席者として自由印度仮政府首班スバス・チャンドラ・ボース閣下を迎へて、会議は終始、最も真剣に、しかも極めて友好的な雰囲気の裡〈ウチ〉に進められ、大東亜の家族会議の観を呈した。
 開会劈頭〈ヘキトウ〉、帝国代表東條内閣総理大臣から、米英の非望を剔抉〈テッケツ〉し、帝国の聖戦目的を明確にし、さらに大東亜建設の基本方針を闡明〈センメイ〉する歴史的な演説があり、次いでイロハ順で、各代表からそれぞれ別掲の如く本国政府の見解と抱負とが率直に、且つ力強く闡明され、関係各国の大東亜戦争完遂の決意並びに大束亜の建設、延いて〈ヒイテ〉は世界平和の確立に対する理想と熱意とは、完全に一致するものであることが確認されたのであつた。
 かくして会議第二日において「大東亜共同宣言」が提案されたが、満場一致採択をみるに至り、堂々と中外に宣明された。次いでバーモウビルマ国代表立つて「自由インドなくしては自由アジアなし」とインド独立について熱烈な意見を吐露〈トロ〉すれば、ボース首班、インド独立に対する支援を感謝し、「誓つて英国をインドより葬り自由インドを一日も早く確立せん」ことを闡明した。これに対し東條内閣総理大臣より、「帝国はこゝにインド独立の第一階梯として、目下帝国軍において占領中のインド領たるアンダマン諸島及びニコバル諸島を近く自由印度仮政府に帰属せしむるの用意ある」旨の重大発言があり、帝国がいよいよインド独立のために全幅の協力をなす決意を重ねて表明したのであつた。

「大東亜会議の経過」の節では、このあと、「大東亜共同宣言」が引用されるが、これは次回。

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統帥権独立の思想は間違っている(東條英機)

2023-07-14 00:33:35 | コラムと名言

◎統帥権独立の思想は間違っている(東條英機)

 東京憲友会編『殉国憲兵の遺書』(研文書院、1982)から、東條英機の「遺言」を紹介している。本日は、その三回目(最後)。改行、用字、仮名づかいは『殉国憲兵の遺書』のままとした。

 なお言いたき事は、公・教職追放や戦犯容疑者の逮捕の件である。今は既に戦後三年を経過しているのではないか。従って、これは速やかに止めてほしい。日本国民が正業に安心して就くよう、米国は寛容な気持ちをもってやっていってもらいたい。
 我々の処刑を以て一段落として、戦死傷者、戦災死者、ソ連抑留者の遺家族を慰安すること。戦死者、戦災死者の霊は遺族の申出あらば、これを靖国神社に合祀せられたし。出征地に在る戦死者の墓には保護を与えられたし。従って遺族の希望申出あらば、これを内地へ返還せられたし。戦犯者の家族には保護を与えられたし。
 青少年男女の教育は注意を要する。将来大事なことである。近時、いかがわしき風潮あるは、占領軍の影響から来て居るものが少くない。この点については、我国の古来の美風を保つことが大切である。
 今回の処刑を機として、敵・味方・中立国の国民罹災者の一大追悼慰安会を行われたし。世界平和の精神的礎石としたいのである。
 勿論、日本軍人の一部の間に間違いを犯した者はあろう。此等については衷心謝罪する。これと同時に無差別爆撃や原子爆弾の投下による悲惨な結果に ついては、米軍側も大いに同情し憐憫して悔悟あるべきである。
 最後に軍事的問題について一言する。我国従来の統帥権独立の思想は確に間違っている。あれでは陸海軍一本の行動は採れない。兵役制については、徴兵制によるか、傭兵制によるかは考えなければならない。我が国民性に鑑みて再建軍の際に考慮すべし。
 再建軍隊の教育は精神教育を採らなければならぬ。忠君愛国を基礎としなければならぬが、責任観念のないことは淋しさを感じた。この点については、大いに米国に学ぶべきである。
 学校教育は従前の質朴剛健のみでは足らぬ。人として完成を図る教育が大切だ。言いかえれば、宗教教育である。欧米の風俗を知らすことも必要である。俘虜のことについては研究して、国際間の俘虜の観念を徹底せしめる必要がある。
【一行アキ】
 辞 世
我ゆくもまたこの土地にかへり来ん国に酬ゆることの足らねば
さらばなり苔の下にてわれ待たん大和島根に花薫るとき

 末尾に、辞世がふたつ挙げられていた。ひとつ目の辞世に、「かへり来ん」(かへり来む)とあるが、これは「帰ってくるだろう」の意味。「来ん」の読みは、「こん」であろう。
 明日は、話題を変える。

※昨日の夕方、ヒグラシの声を聞いた。記憶では、昨年は、たしか一度もヒグラシの声を聞かなかった。

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産児制限の如きは神意に反する(東條英機)

2023-07-13 00:01:44 | コラムと名言

◎産児制限の如きは神意に反する(東條英機)

 東京憲友会編『殉国憲兵の遺書』(研文書院、1982)から、東條英機の「遺言」を紹介している。本日は、その二回目。改行、用字、仮名づかいは『殉国憲兵の遺書』のままとした。

 今次戦争の指導者たる米英側の指導者は大きな失敗を犯した。第一は、日本という赤化の防壁を破壊し去ったことである。第二は、満州を赤化の根拠地たらしめた。第三は、朝鮮を二分して東亜紛糾の因たらしめた。米英の指導者は之を救済する責任を負うて居る。従ってトルーマン大統領が再選せられたことは、この点に関して有り難いと思ふ。
 日本は米国の指導に基き武力を全面的に抛棄した(註―憲法第九条)。これは賢明であったと思う。しかし世界全国家が全面的に武装を排除するならばよい。然らざれば、盗人が跋扈する形となる。(泥棒がまだ居るのに警察をやめるやうなものである)
 私は戦争を根絶するには慾心を人間から取り去らねばならぬと思う。現に世界各国は、孰れも自国の存在や自衛権の確保を主としている。(これはお互に慾心を抛棄して居らぬ証拠である)国家から慾心を除くということは不可能のことである。されば世界より今後も戦争を無くするということは不可能である。これでは結局は人類の自滅に陥いるのであるかも判らぬが、事実は此の通りである。それ故、第三次世界大戦は避けることが出来ない。
 第三次世界大戦に於て主なる立場に立つものは米国及びソ連である。第二次世界大戦に於て、日本と独乙というものが取り去られてしまった。それが為、米国とソ連というものが、直接に接触することとなった。米・ソ二国の思想上の根本的相違は止むを得ぬ。この見地からみても第三次世界大戦は避けることはできぬ。
 第三次世界大戦に於いて極東、日本と支那と朝鮮がその戦場となる。此の時にあって米国は武力なき日本を守るの策を立てなければならぬ。これは当然米国の責任である。日本を属領と考えるのであったならば、また何をか言わんや。そうでなしとすれば、米国は何等かの考えがなければならぬ。米国は日本人八千万国民の生きて行ける道を考えてくれねばならない。凡そ生物として自ら生きる生命は神の恵である。産児制限の如きは神意に反するもので、行うべきでない。【以下、次回】

 文中、トルーマン大統領が「再選」されたことに触れている。トルーマン大統領が、大方の予想を裏切って再選されたのは、1948年(昭和23)11月のことであった。このことから、この「遺言」が書かれたのは、1948年(昭和23)11月もしくは12月のことだったことがわかる。

今日の名言 2023・7・13

◎およそ生物として自ら生きる生命は神の恵みである

 東條英機の言葉。上記コラム参照。生命は「神」の恵み、と言っているが、東條は、この宗教的な生命観を、どこから、どのようにして得たのだろうか。なお、晩年の東條が、浄土真宗に深く帰依したことは、よく知られている。処刑の直前に詠んだ歌のひとつに、「さらばなり 有為の奥山けふ越えて 弥陀のもとに 行くぞうれしき」がある。

*このブログの人気記事 2023・7・13(9・10位に極めて珍しいものが入っています)

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東條英機の「遺言」(1948)を読む

2023-07-12 02:39:47 | コラムと名言

◎東條英機の「遺言」(1948)を読む

 東條英機の「遺言」とされているものが、何種類かある。いずれも、インターネット上で閲覧できるが、その中には、表記や典拠の点で、疑問を感じるものが含まれている。
 先日、東京憲友会編『殉国憲兵の遺書』(研文書院、1982)という本を読んだところ、その冒頭に、東條英機の「遺言」が載っていた。ただし、典拠は示されていない。書かれた日時も示されていないが、内容から見て、処刑の少し前に書かれたものと思われる。
 本日以降、何回かに分けて、これを紹介してみたい。改行、用字、仮名づかいは『殉国憲兵の遺書』のままとした。

    陸軍大将 東 條 英 機
      東京都。陸軍大学卒業。関東憲兵司令官、首相。
      昭和二十三年十二月二十三日、巣鴨に於て刑死・六十四歳。
  遺 言    
 開戦当時の責任者として敗戦のあとをみると、実に断腸の思いがする。今回の刑死は、個人的には慰められておるが、国内的の自らの責任は死を以て贖えるものではない。
 しかし国際的の犯罪としては無罪を主張した。今も同感である。
 ただ力の前に屈服した。
 自分としては国民に対する責任を負って満足して刑場に行く。ただこれにつき同僚に責任を及ぼしたこと、又下級者にまでも刑が及んだことは実に残念である。天皇陛下に対し、また国民に対しても申し訳ないことで、深く謝罪する。
 元来、日本の軍隊は、陛下の仁慈の御志により行動すべきものであったが、一部過を犯し、世界の誤解を受けたのは遺憾であった。
 此度の戦争に従軍して斃れた人及び此等の人々の遺族に対しては、実に相済まぬと思っている。心から陳謝する。
 今回の裁判の是非に関しては、もとより歴史の批判に待つ。もしこれが永久平和のためということであったら、も少し大きな態度で事に臨まなければならないのではないか。此の裁判は結局は政治裁判に終った。勝者の裁判たる性質を脱却せぬ。
 天皇陛下の御地位及び陛下の御存在は動かすべからざるものである。天皇存在の形式については敢て言わぬ。存在そのものが絶対に必要なのである。それは私だけでなく多くの者は同感と思う。空気や地面の如き大きな恩は忘れられぬものである。
 東亜の諸民族は今回のことを忘れて、将来相協力すべきものである。東亜民族も亦他の民族と同様この天地に生きる権利を有つべきものであって、その有色たることを寧ろ神の恵みとして居る。印度の判事には尊敬の念を禁じ得ない。
 これを以て東亜民族の誇りと感じた。今回の戦争に因りて東亜民族の生存の権利が了解せられ始めたのであったら幸である。
 列国も排他的の感情を忘れて、共栄の心持を以て進むべきである。現在の日本の事実上の統治者である米国人に対して一言するが、どうか日本の米人に対する心持を離れしめざるように願いたい。又、日本人が赤化しないように頼む。東亜民族の誠意を認識して、これと協力して行くようにされなければならぬ。
 実は東亜の多民族の協力を得ることが出来なかったことが今回の敗戦の原因であると考えている。今後、日本は米国の保護の下に生活して行くのであろうが、極東の大勢はどうであろうか。終戦後、僅に三年にして亜細亜大陸赤化の形勢は斯の如くである。
 今後のことを考えれば、実に憂慮にたえぬ。もし日本が赤化の温床ともならば、危険この上ないではないか。
 今、日本は米国よりの食糧の供給その他の援助につき感謝して居る。しかし一般が、もしも自己に直接なる生活の困難やインフレや食糧の不足等が、米軍が日本に在るが為なりというような感想をもつようになったならば、それは危険である。実際はかかる宣伝を為しつつある者があるのである。依って米軍が、日本人の心を失わぬよう希望する。【以下、次回】

 文中、「空気や地面の如き」という表現がある。インターネット上に、これと同じ「遺言」と思われるものがあるが、その「遺言」では、この箇所が「空間や地面のごとき」となっていた。どちらがオリジナルかは不明だが、感性に訴える点では、「空気や地面の如き」のほうがまさっているように思う。

今日の名言 2023・7・12

◎東亜の多民族の協力を得ることが出来なかったことが今回の敗戦の原因である

 東條英機の言葉。上記コラム参照。東條の言う通りだと思う。では、東亜の解放を目指した「大東亜戦争」は、なぜ、「東亜の多民族の協力を得ることが出来なかった」のか。この重大な問いに、東條は、答えていない。反省の弁もない。ところで、私たち戦後日本の日本人は、この問いに答えられるのだろうか。

*このブログの人気記事 2023・7・12(10位になぜか柏木隆法さん)

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