礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

ゴーン元会長、オンラインで会見(2023・7・18)

2023-07-21 02:56:38 | コラムと名言

◎ゴーン元会長、オンラインで会見(2023・7・18)

 7月18日の午後、インターネットで、カルロス・ゴーン日産自動車元会長のオンライン会見を視聴した。あいかわらずの迫力と能弁で、日産の「仕打ち」、日本の人質司法を厳しく批判していた。
 FNNプライムオンラインは、19日、この会見について、次のように簡潔に報じた(10:22配信)。

 日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告がオンラインで会見し、日産などに対し、1400億円の賠償を求める訴えを起こした理由を説明した。
【画像】逃亡先のレバノンからオンライン会見するゴーン被告
 カルロス・ゴーン被告:
 私は復讐をしたいわけではない。私の権利の一部を取り戻したいだけだ。
 ゴーン被告は、逃亡先のレバノンからオンラインで会見し、名誉を傷つけられたなどとして日産などに対し、およそ1400億円の賠償を求める訴えを起こしたことについて、「修復が不可能な損害を受けたから」と述べた。
 また、保釈中に国外逃亡したことについては「全く後悔していない」と断言した。(「イット!」7月18日放送より)

 カルロス・ゴーン氏が逮捕された当時、私は、当ブログに、いくつかの記事を寄せたが、本日は、そのうちのひとつを再録する。

◎カルロス・ゴーン前会長の意見陳述を読む  2019-01-12 02:03:31

 今月八日午前一〇時半、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏が、公の席に姿をあらわした。逮捕から五〇日ぶりのことだったという。この日、東京地裁で、「勾留理由開示」があり、ここでゴーン氏は、みずから英語によって意見陳述をおこなった。
 この意見陳述の内容は、同日午後三時から、日本外国人特派員協会で開かれた記者会見の席で、ゴーン氏の弁護人である大鶴基成弁護士から、文書の形で公開された。
 私は、翌九日発行の東京新聞朝刊で、その「日本語訳」を読んだが、その後、インターネットで調べてみると、日本経済新聞は、早くも八日一三時五二分の段階で(更新は、同日一八時一二分)、その意見陳述(英語と日本語訳の両方)を公開していた(東京新聞は日本語訳のみ。なお、東京新聞と日本経済新聞とでは、訳文が違う)。これを読んで、いくつか感じたこと、考えさせられたことがあるので、以下、それを述べてみたい。
 ゴーン氏は、みずからが、道義に反するようなことをしていないこと、法律を犯していないこと、ニッサンに損害を与えていないことを強調している。おそらく、ゴーン氏は、ニッサンの再建のために、全身全霊を捧げてきた自分が、そのニッサンの経営に関する案件で逮捕されるなどという事態は、想像すらしなかったことであろう。
 そして、こういう形で自分を葬ろうとしたニッサンの現・経営陣に対して、あるいは、現・経営陣の意を汲んで自分を逮捕した東京地検特捜部に対して、激しく憤っているはずである。
 しかし、この意見陳述を読んでも、そうした「憤り」は感じられない。
 なぜか。おそらく、ここには、ゴーン氏の(あるいはゴーン氏側の)冷静な判断と強かな戦略がある。ゴーン氏は、意見陳述という形をとって、日本と全世界に向けて、有効なメッセージを送った。そのメッセージの対象として意識したのは、第一に、ニッサンの従業員であり、ニッサンの関係者である。第二に、ニッサンを愛する日本人一般であろう。そして、第三に、この事件を注視している海外のメディアだったと思う。
 このメッセージにおいて、ゴーン氏が一番、強調したかったことは、自分がニッサンを愛し、日本を愛し、日本人を愛していることではなかったろうか。そんな自分が、思いもかけない容疑で、長期間の勾留を余儀なくされているという事実を、日本人全体に、あるいは広く世界に訴えようとしたのではなかったか。そして、このよく推敲された意見陳述は、その意図を、余すところなく伝えるものになっていたと思う。
 今回の意見陳述で、もっとも力が入っていたのは、4の「日産への貢献」のところだったように感じた。日本経済新聞電子版から、その箇所の英文及びその訳文を引用させていただく。

4. Contribution to Nissan
 I have dedicated two decades of my life to reviving Nissan and building the Alliance. I worked toward these goals day and night, on the earth and in the air, standing shoulder to shoulder with hardworking Nissan employees around the globe, to create value. The fruits of our labors have been extraordinary. We transformed Nissan, moving it from a position of a debt of 2 trillion yen in 1999 to cash of 1.8 trillion yen at the end of 2006, from 2.5 million cars sold in 1999 at a significant loss to 5.8 million cars sold profitably in 2016. Nissan's asset base tripled during the period. We saw the revival of icons like the Fairlady Z and Nissan G-TR; Nissan's industrial entry into Wuhan, China, St.Petersburg, Russia, Chennai, India, and Resende,Brazil; the pioneering of a mass market for electric cars with the Leaf;the jumpstarting of autonomous cars; the introduction of Mitsubishi Motors to the Alliance; and the Alliance becoming the number one auto group in the world in 20l7, producing more than l0 million cars annually. We created, directly and indirectly, countless jobs in Japan and reestablished Nissan as a pillar of the Japanese economy.
 These accomplishments-secured alongside the peerless team of Nissan employees worldwide-are the greatest joy of my life, next to my family.

4 日産への貢献
 私は人生の20年間を日産の復活とアライアンス〔企業連合〕の構築にささげてきました。私は、この目標のために、日夜を問わず、地上でも機上でも、世界中で懸命に働く日産の従業員と肩を並べて、価値を創り出すことに取り組んできました。私たちの努力は目覚ましい成果を上げてきました。私たちは日産を変革しました。1999年に2兆円の負債を抱えていたところから、06年末には1.8兆円の現預金を有するまでに至りました。99年に250万台の販売にとどまり多大な損失を計上していたところから、16年には580万台を販売して利益を上げるに至りました。この間に、日産の資産規模は3倍になりました。日産の象徴であるフェアレディZやG-TRを復活させました。中国の武漢、ロシアのサンクト・ペテルブルグ、インドのチェンナイ、ブラジルのレゼンデにも進出しました。そしてリーフで電気自動車の市場を大きく開拓し、また自動運転車開発をスタートさせ、三菱自動車をアライアンスへ招き入れました。このアライアンスは、17年には世界第1位の自動車グループとなり、年間1千万台以上を生産しています。私たちは、直接または間接に、日本で無数の雇用を創出し、日産を日本経済の主軸へと回復させたのです。
 これらの成果は、世界に比類ない日産従業員のチームによって得られたものであり、私にとっては、家族の次に、最も大きな人生の喜びです。

 以上が、当時のブログ記事である。
 日産の「仕打ち」は道義に反するものであった。日本の人質司法には重大な問題がある。そのことをゴーン氏は、2019年1月8日に、全世界に向けて説いた。そして、2023年7月18日、改めて、そのことを、全世界に向けて説いたことになる。【この話、続く】

*このブログの人気記事 2023・7・21(10位になぜか「ひとのみち」)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大東亜は米英多年の搾取の対象となってきた(東條英機)

2023-07-20 02:37:51 | コラムと名言

◎大東亜は米英多年の搾取の対象となってきた(東條英機)

 情報局編『アジアは一つなり』(印刷局、1943年12月)の「二、各国代表の演説」の部から、「帝国代表 東條内閣総理大臣演説」の章を紹介している。本日は、その三回目(最後)。

  大東亜建設の基本方針
 次に大東亜の建設に関する帝国政府の基本的見解を申述べたいと存じます。抑〻世界各国が各〻其の所を得、相倚り相扶けて、万邦共栄の楽を偕に致しまするは、世界平和確立の根本要義であると信ずるのであります。而して特に関係深き諸国が互に相扶けて各自の国礎に培ひ、共存共栄の紐帯を結成すると共に、他の地域の諸国家との間に共和偕楽の関係を設定致しますることは、世界平和確立の最も有効にして且実際的方途であると申さねばならぬと存ずるのであります。
 大東亜の各国が、有らゆる点に於て離れ難き緊密なる関係を有しますることは、否定し得ざる事実でありまして、斯かる関係に立つて、大東亜の各国が協同して大東亜の安定を確保し、共存共栄の秩序を建設致しますることは、各国共同の使命であると確信するのであります< 大東亜に於ける共存共栄の秩序は、大東亜固有の道義的精神に基くべきものでありまして、此の点に於て、自己の繁栄の為には不正、欺瞞、搾取をも敢て辞せざる米英本位の旧秩序とは、根本的に異なるものであります。大東亜各国は互に其の自主独立をば尊重しつゝ、全体として親和の関係を確立すべきものであります。相手方を単に手段として利用する所には、親和の関係を見出すことは出来ないのであります。親和の関係は、相手方の自主独立を尊重し、他の繁栄に依つて自らも繁栄し、自他共に其の本来の面目を発揮する所にのみ生じ得るものと信ずるのでありまず。
 由来大東亜には優秀なる文化が存して居るのであります。殊に大東亜の精神神文化は、最も崇高、幽玄なるものであります。今後愈〻之が長養醇化して広く世界に及ぼすことは、物質文明の行詰りを打開し、人類全般の福祉に寄与すること尠からざるものありと信ずるのであります。
 斯かる文化を有しまする各国は、相互に其の光輝ある伝統を尊重致しますると共に、各民族の創造性を伸暢〈シンチョウ〉し、以て大東亜の文化を益〻昂揚せねばならぬと考ふるのであります。更に大東亜の各国は民生の向上、国力の充実を図る為、互恵の下に、緊密なる経済提携を行ひ、協同して大東亜の繁栄を増進すべきものと信ずるのであります。大東亜は米英多年の搾取の対象となつて来たのでありまするが、今後は経済的にも自主独往、相倚り相扶けて其の繁栄を期さなければならぬと思ふのであります。
 斯くの如くにして建設せらるべき大東亜の新秩序は、排他的のものではなく、広く世界各国との間に、政治的にも、経済的にも、将又〈ハタマタ〉文化的にも積極的に協力の関係に立ち、以て世界の進運に貢献すべきであります。口に自由平等を唱へつゝ、他国家、他民族に対し抑圧と差別とを以て臨み、他に門戸開放を強ひつゝ、自らは尨大なる土地と資源とを壟断〈ロウダン〉し、他の生存を脅威して顧みず、世界全般の進運を阻碍して来ました米英従来の遣り方とは全く趣を異にして居るのであります。
 道義に基く大東亜の新建設は、現に戦塵の真只中〈マッタダナカ〉に在つて著々〈チャクチャク〉として実現を見つゝあるのであります。然るに米英側の印度に対しまするやり口は果して如何〈イカガ〉でありませうか。今や英国の断圧は、日に月に其の度を加へ、又最近に於ては米国の野望も加はり、彼等と印度民衆との軋轢乖離〈アツレキカイリ〉は愈〻激化し、印度四億の民衆は言語〈ゴンゴ〉に絶する苦悩を続けて居るのであります。特に最近之に依つてせられたる空前の飢饉は、米英自らも之を認むる所であります。
 斯くて印度に於きましては志ある者は悉く牢獄に投ぜられ、無辜〈ムコ〉の民衆は総て〈スベテ〉飢ゑに泣いて居るのであります。是れ正に世界の悲劇であり、人類共同の痛恨事であり、義憤に燃ゆる我々大東亜民族の断じて放置し得ざる所であります。時なる哉〈カナ〉、スパス・チヤンドラ・ボース氏の蹶起するあり、之に呼応して内外の印度人士は起ち上り、茲に自由印度仮政府の樹立を見、印度独立の基礎は現に成つたのであります。帝国は曩に〈サキニ〉印度独立の為、有らゆる協力と支援とを致すべきことを中外に闡明〈センメイ〉致したのであります。大東亜の諸国家も亦斉しく〈ヒトシク〉印度独立完成の為、心からなる協力を寄せらるゝことを私は確信致すものであります。
 米英が所謂大西洋憲章に依つて標榜せる所と、現に印度に対して実際に執りつゝある事実とを、彼等は如何なる論理に依つてか之を調和せんとするも、それは不可能の事であると存ずる〈ゾンズル〉のであります。併しながら吾人は今更彼等の矛盾を見て驚くものではないのであります。全世界の人々は今日迄米英の表面に掲ぐる美しき看板と、其の肚裏〈トリ〉に包蔵するものとの矛盾を、余りに多く見せつけられ、欺瞞と偽装と迷彩こそ、彼等米英の本性であることを已に〈スデニ〉熟知致して居るのであります。仮令〈タトイ〉敵側の為す所が如何なるものであるにせよ、帝国は大東亜各国と相携へて天地の公道を歩み、大東亜を米英の桎梏より解放し、大東亜各国と協同して大東亜の復興興隆を図らんことを期するのみであります。
 今や大東亜諸国諸民族の結集は成り、万邦共栄の理想に向つて大東亜新建設の巨歩は堂々発足致したのであります。翻つて欧洲の情勢を見まするに、盟邦ドイツは愈〻国民的結束を鞏固にし、必勝の信念を以て米英撃滅と欧洲建設とに邁進しつゝでありまして、洵に力強き限りであります。大東亜戦争は実に破邪顕正〈ハジャケンセイ〉の聖戦でありまして、大義名分炳乎〈ヘイコ〉として我に在り、正義の向ふ所敵なく、究極の勝利の我に帰すべきことはを我等の信じて疑はざる所であります。
 茲に大東亜諸国が、衷心より大東亜戦争に協力せられつゝあることに対しまして、深甚なる謝意を表しますると共に、今後益〻苛烈の度を加へむとする戦局に対処し、帝国は大東亜諸国と共に欧洲盟邦との提携を愈〻固め、必勝の確信の下、不抜の闘志を以て、如何なる困難も之を克服し、我等の共同使命とする此の大東亜戦争を完遂し、大東亜建設を完成致しまして、真の平和の確立に貢献せんことを固く期する次第であります。(拍手)

『アジアは一つなり』の紹介は、このあとも続けるが、明日は、いったん、話題を変える。

*このブログの人気記事 2023・7・20(10位に極めて珍しいものが入っています)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一億一心、必勝の確信の下に……(東條英機)

2023-07-19 00:12:15 | コラムと名言

◎一億一心、必勝の確信の下に……(東條英機)

 情報局編『アジアは一つなり』(印刷局、1943年12月)の「二、各国代表の演説」の部から、「帝国代表 東條内閣総理大臣演説」の章を紹介している。本日は、その二回目。

  大東亜戦争の原因
 顧みれば東亜の諸国家諸民族の間に於て、解放の義挙の起つたことは、一再に止まらなかつたのでありまするが、或は米英の暴戻〈ボウレイ〉飽くなき武力的弾圧に依り、或は彼等の異民族統御の常套手段である所の悪辣極まる離間策に依り、多くは失敗に帰したのであります。此の間に在りて日本の興隆は米英に取りましては最も好ましからざるものとなつたのであります。
 茲に於きましてか、彼等は、一方に於て事毎に日本抑圧の態度に出づると共に、他方に於きましては日本と東亜に於ける爾他の諸国家諸民族との離間を策することを以て、彼等の東亜政略の要諦とするに至つたのであります。蓋し〈ケダシ〉東亜の隷属化を維持する為には、東亜に於て何れ〈イズレ〉かの国が強国として勃興致しますることも、又東亜の諸国家諸民族の団結することも、彼等に取り、其の最も不利とする所であるからであります。而して斯くの如き米英の東亜隸属化の野望は、特に最近数年間に於て愈〻悪質露骨となつて参つたのであります。即ち蒋〔介石〕政権を使嗾〈シソウ〉して、日華両国の国交を阻碍し、其の極、遂に不幸なる支那事変の勃発に至らしめ、之が解決に対しても有らゆる手段を弄して其の妨碍を策したのであります。而して今次欧洲戦争勃発後に於きましては、戦争の必要に藉口して平和的通商を妨碍し、更に進んで其の本質に於て戦争と異ならざる所の経済断交の手段に愬へ、他面東亜の周辺に於て武備を増強し、以て我に屈従を強ひんと試み、東亜の安定は根柢より重大なる脅威を受くるに至つたのであります。
 斯くの如き米英の態度に拘らず、帝国は、只管〈ヒタスラ〉禍乱の東亜の天地に波及することを避けんと欲しまして、堪忍自重、最後迄平和的交渉に依つて時局の収拾を図つて参つたのであります。然るに米英は、何等反省互譲の態度に出でず、却て〈カエッテ〉益〻脅喝と圧迫とを強化して、帝国の存立を危殆に瀕せしめたのであります。帝国は遂に自存自衛の為、蹶然起つて東亜に対する挑戦に応ずるの已むなきに至り、茲に一切の障碍を破摧〈ハサイ〉して、東亜永遠の平和確立の為、国運を賭して征戦に邁進することとなつたのであります。
 大東亜戦争開始せられますや、帝国陸海軍は、善謀勇戦、開戦後半歳ならずして克く東亜の全地域より米英の侵略勢力を駆逐、掃蕩致したのであります。大東亜各国は、或は宣戦を布告して共に戦ひ、或は緊密に戦争完遂に協力しつゝありまして、今や大東亜諸民族の自覚と熱情とは澎湃〈ホウハイ〉として大東亜の天地に漲り〈ミナギリ〉、内に於きましては各国相信じ相和し、外に対しましては米英の反攻を撃摧〈ゲキサイ〉して、自存自衛を全うし、以て大東亜永遠の安定を確立する為、勇躍邁進しつゝあるのであります。
 惟ふ〈オモウ〉に、今次の戦争は大東亜の全民族に取りましては実に其の興廃の岐るゝ〈ワカルル〉一大決戦であります。此の戦〈タタカイ〉に勝ち拔くことに依りまして、始めて大東亜の諸民族ば、永遠に其の存立を東亜の天地に確保して、共栄の楽〈タノシミ〉を偕に〈トモニ〉致しますることが出来るのであります。洵に大東亜戦争の完遂こそ、大東亜新秩序建設の確立を意味するものであります。素より米英は、其の恃み〈タノミ〉とする物質的戦力を挙げて大東亜に反攻を繰返すことは当然であります。大東亜の諸国家は、其の全力を尽して之を徹底的に破摧し、更に彼等に痛撃を加へ、以て戦争を完遂して、大東亜永遠の安定を確保しなければならないのであります。此の秋〈トキ〉に当りまして、帝国は緖戦に獲得せる戦略的優位に立つて、雄渾なる作戦を続行して居るのであります。而して国内に於きましては此の雄渾なる作戦に呼応致しまして、愈〻国内態勢を整備し、特に最近之が決戦化を図り、真に一億一心、必勝の確信の下に強靱なる闘志を以て、飽く迄も此の大戦争完遂に邁進致して居るのであります。
 茲に各位に依つて代表せられまする所の大東亜諸国も亦帝国と策応〈サクオウ〉し、其の全力を挙げて宿敵米英の反攻を撃摧し、以て大東亜永遠の安定を図らんとする決意の鞏固なるものあることを私は確信するものであります。【以下、次回】

 本日、紹介した「大東亜戦争の原因」の節は、既に紹介した「一、大東亜会議と大東亜共同宣言」の部における「大東亜戦争の原因」の節と、内容や表現がかぶっている。これは、「一、大東亜会議と大東亜共同宣言」が、東條演説を踏まえて書かれているからであろう。

*このブログの人気記事 2023・7・19(8位の山本有三、9位の優性保護法は、ともに久しぶり)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大東亜会議開催方を提議致しましたる処……

2023-07-18 02:54:04 | コラムと名言

◎大東亜会議開催方を提議致しましたる処……

 引続き、情報局編『アジアは一つなり』(印刷局、1943年12月)を紹介する。
 本日は、「二、各国代表の演説」の部から、「帝国代表 東條内閣総理大臣演説」の章を紹介する。

   二、各国代表の演説

  帝国代表 東條内閣総理大臣演説

 大東亜戦争完遂と大東亜新秩序建設の方針に関しまして、隔意なき協議を遂ぐる為、今般大東亜会議開催方を提議致しましたる処、幸ひ関係各国の衷心よりの御賛同を得まして、茲に〈ココニ〉大東亜各国代表として各閣下の御参集を見ましたることは、主催国と致しまして最も欣幸〈キンコウ〉とし、深く感謝の意を表する所であります。尚御来朝中の自由印度仮政府首班閣下の御陪席を得ましたることは、是亦洵に〈マコトニ〉欣幸と存ずる〈ゾンズル〉所であります。

  米英の世界制覇の野望
 惟ふ〈オモウ〉に英帝国は、過去数世紀に亘り侵略と征服とに依つて、全地球上に広大なる領土を獲得し、而してその優越的地位を飽く迄〈アクマデ〉も維持せんとして、世界各地に於て他国をして相互に対立抗争せしめて来たのであります。他方米国は、欧洲の動乱常なき情勢に乗じて、米大陸に覇権を確立するに止まらず、概ね〈オオムネ〉米西〈ベイセイ〉戦争を契機と致しまして、太平洋及びアジアに爪牙を伸ばすに至り、遂に第一次世界大戦争を転機と致しまして、英帝国と共に世界制覇の野望を逞しうし来つたのであります。而して今次の世界戦争勃発後に於きましては、米国は更に飛躍して、北アフリカ、西アフリカ、大西洋、進んで印度方面に対しましても、逐次〈チクジ〉其の魔手を伸ばし、英帝国の地位に取つて代らんとして居るのであります。
 米英の平素唱道致しまする国際正義の確立と世界平和の保障とは、畢竟〈ヒッキョウ〉欧洲に於きまする諸国家の分裂抗争の助長と、アジアに於ける植民地的搾取の永続化とに依る、利己的秩序の維持に外ならないのであります。而してアジアに於ける米英の遣り方を見まするに、被等は政治的に侵略し、経済的に搾取し、更に教育文化の美名に匿れて〈カクレテ〉民族性を喪失せしめ、相互に相衝突せしめて、其の非望の達成を図つたのであります。斯くてアジアの諸国家諸民族は、常に其の存立を脅威せられ、其の安定を攪乱せられ、民生は其の本然の発展を抑圧せられて今日に至つたのであります。彼等の呼号する門戸開放、機会均等主義も、東亜を植民地視する根本観念に発したるものでありまして、実は彼等が東亜侵略の非望を遂げんが為の便宜手段に過ぎないのであります。彼等は自国の領土内に於ては、東西の諸民族に対して常に門戸を閉鎖し、機会を不均等ならしめ、交易を阻碍しつゝ、只管〈ヒタスラ〉彼等のみの利己的繁栄を追及したのであります。洵に米英両国の懐く世界制覇の野望こそは、人類の災厄〈サイヤク〉、世界の禍根と謂ふべきであります。【以下、次回】

*このブログの人気記事 2023・7・18(10位になぜか内村鑑三)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大東亜戦争は貪慾限りなき米英の野望に発する

2023-07-17 00:02:24 | コラムと名言

◎大東亜戦争は貪慾限りなき米英の野望に発する

『アジアは一つなり』(1943)の「一、大東亜会議と大東亜共同宣言」の部は、「大東亜会議の経過」の節のあと、「会議の意義」、「大東亜共同宣言の根本理念」、「大東亜戦争の原因」、「大東亜戦争の共同完遂」、「共存共栄の原則」、「独立親和の原則」、「文化昂揚の原則」、「経済繁栄の原則」、「世界進運貢献の原則」、「大東亜建設と我々の使命」の節が続く。
 本日は、これらの節のうち、「大東亜戦争の原因」の節を紹介してみたい。

  大東亜戦争の原因
 大東亜戦争が何故起つたかについては、二年前の敵米英の東亜に対する出方を想ひ、あの宣戦の大詔を拝するとき、多言を要せずして明らかである。一言にしていへば、今次の戦争によつて世界における米英の覇権を確立し、アジアにおけるその植民地的支配を回復しようとする貪慾限りなき彼等の野望に発するものである。
 英帝国は、過去数世紀に亘り侵略と征服とによつて、全地球上に広大な領土を獲得し、その優越的地位を飽くまで維持しようとして、世界各地において他国をして相互に対立抗争せしめて来た。他方、米国は、欧洲の動乱常なき情勢に乗じて米大陸に覇権を確立するにとゞまらず、米西戦争を契機として、太平洋及びアジアに爪牙〈ソウガ〉を伸ばすに至り、遂に第一次世界大戦を転機として英帝国と共に世界制覇の野望を逞しうして来たのである。
 そして今次の世界大戦勃発後は、米国は更に北アフリカ、西アフリカ、大西洋、濠洲〔オーストラリア〕、西南アジア、進んでインド方面に対しても、次第にその魔手を伸ばして、英帝国の地位に取つて代らうとして来た。
 彼等はアジアに対してどういふやり方をやつて来たであらうか――彼等は政治的に侵略し、経済的に搾取し、さらに教育文化の美名に匿れて〈カクレテ〉固有の民族性を喪失せしめ、相互に相衝突せしめて、その非望の達成をはかつたのであつて、かくしてアジアの諸国家、諸民族は常にその存立を脅威せられ、その安定を攪乱〈コウラン〉せられ、民生はその本然の発展を抑圧せられて今日に至つたのである。
 勿論、今日までに、東亜の諸国、諸民族の間において、解放の義挙の起つたことは一再にとどまらなかつたのであるが、或ひは米英の暴戻〈ボウレイ〉あくなき武力的弾圧により、或ひは彼等の異民族統御の常套手段であるところ悪辣〈アクラツ〉極まる離間策により、多くは失敗に帰したのであつて、それは正しく〈マサシク〉抑圧された東亜民族の血と涙と怒りによつて綴られた圧制の歴史であつた。
 この間にあつてたゞ一つ、わが国が明治維新以来、急速に興隆の一途をたどりつゝあることは、米英にとつて最も好ましからざるものとなつたのである。そこで彼等は、一方において事毎に〈コトゴトニ〉日本抑圧の態度に出ると共に、他方においてわが国と東亜における他の諸国家諸民族との離間〈リカン〉を策することを以て、彼等の東亜攻略の要諦とするに至つたのである。何故ならば、彼等が東亜を隷属させてゆくためには、東亜においていづれかの国が強国として勃興することは、また東亜の諸国家、諸民族が団結することは、彼等にとつて最も不利とするところであつたからである。
 かくして彼等は、蒋介石を使嗾〈シソウ〉して日華両国の国交を阻碍〈ソガイ〉し、その極、遂に不幸な支那事変の勃発に至らしめ、これが解決に対しても、あらゆる手段を弄して〈ロウシテ〉その妨碍〈ボウガイ〉を策したのであつた。
 そして今次の欧州戦争が勃発してからは、戦争の必要に藉口〈シャコウ〉して平和的通商を妨碍し、さらに進んでその本質において戦争と異らないところの経済断交の手段に愬へ〈ウッタエ〉、他面、東亜の周辺において武備を増強して、我に屈従を強ひようとし、東西の安定ほ根柢より重大な脅威を受けるに至つたのである。
 帝国は、隠忍自重〈インニンジチョウ〉、最後まで平和的交渉によつて時局の収拾を図つたのであつた。しかるに米英は却つてますます脅喝と圧迫とを強化して帝国の存立を危殆〈キタイ〉に瀕せしめたので、帝国は自存自衛の為め蹶然〈ケツゼン〉立つて東亜に対する米英の挑戦に応ずるの已む〈ヤム〉なきに至り、こゝに一切の障碍を破砕して、東亜永遠の平和確立のため、国運を賭して〈トシテ〉征戦に邁進することになつたのである。それは二年前の、あの十二月八日のことである。

*このブログの人気記事 2023・7・17(8位になぜか優性保護法)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする