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2022.5.5 『知来岳』(ちらいだけ・988m)  いまだ豊富な残雪の稜線行

 GWの4日は雨模様のため、

休養日として午後石狩市浜益区に移動した。

そして御料地牧場の丘で車中泊とした。

この「御料地牧場」は、

この地域がかつて「浜益村」であった頃、

村営の牧場として、

広い牧草地に多くの牛を放牧していた。

それが経営破綻して、

その後はただ放置されたままのようだ。

放牧場の風景は広くて気持ちがいい。

車中泊地からは、

翌日に登る予定の『知来岳』が、

美しい姿を見せている。

 この日の夕方、

FacebookにKasaneが、

キジの写真をアップしたのを確認。

それを見たHiromiが、

「あっ、クジャクだ」と言った。

「バカだねえ、クジャクが北海道の山にいるかよ!?」

キジの件でちょっと気になったので、

Hiromiに質問してみた。

「桃太郎の鬼退治のおともはなんだったっけ?」

するととんでもない答えが!

「キジとサルと、あとは鳩だったかい?」

おいっ!!

恐れていた答えが現実に・・・

「鳩を連れてって、鬼が島を平和にしてくるのか!?」。

この記事を綴っている今、

このことを思い出すと、

女房がすぐそばにいるので、

笑いを押し殺すのが大変だ。

Hiromiは決して頭が悪いわけじゃないんだよ。

ただ頭のネジが数本、

正常ではないところについてしまっているだけ。

おかげで毎回会うたびに、

大笑いさせてくれて寿命が延びる~

冒頭から余談が長くなってしまった。

 5日の朝5時50分、

御料地牧場の駐車地からそのままスタート。

通常のルートは、

『知来岳』から南東に伸びる稜線を、

3kmほど下った地点から派生する尾根に、

林道途中から取り付いて登る。

しかし今回は最短ルートで登ることとした。

これが間違いだったのだが。

 牧場内の作業道から林道に入った。

この林道は以前はっきりしていたものだが、

もう人の手が入らなくなって久しく、

荒れ放題だ。

で、しょっぱなより問題発生!

林道に架かっていた橋がない!

大雨で流されてしまっていた。

こりゃ困った。

水量がけっこうなもので、

歩いては渡れない。

しばらく考えて倒木の上を歩くことにした。

一人なら最初からそうしているが、

Hiromiがもし落ちたら?

と考えると躊躇してしまう。

ストックを思い切り伸ばして、

慎重に渡って、「ホッ…」。

伸縮式のポールの最大の利点が発揮できた。

 荒れた林道を詰めて行くと、

樹木の向こうに『知来岳』の頂上部が見える。

そして途中で林道を離れて、

尾根に取り付いた。

ところがここからは予想以上に融雪が進み、

笹が結構な勢いで露出している。

笹をかき分け、シカ道を利用して登って行く。

尾根の上部から正面の急斜面を登って、

稜線に続く尾根にのるのだが、

それも雪がなく、

ブッシュが丸ごと露出して登れそうにない。

仕方なく右手の雪崩斜面でルートを探る。

もう落ちるものは全て落ちてしまっているので、

雪崩の心配はない。

雪渓を目で辿って行くと、

わずか一筋つながっている部分が見えた。

これを利用することにして、

アイゼンを装着。

急斜面を一歩一歩登って行く。

先を登る私が滑落した場合、

Hiromiを巻き込む恐れがあるので、

間隔を空けて着いてくるように指示をする。

しかしこいつは何度言っても、

すぐ後ろまで詰めてくる。

何度言ってもだよ・・・

 雪渓の斜度が増し、

足下も締まって氷状になってくると、

Hiromiが恐怖を感じだし、

もう打ち切って下山してもいいようなことを言い出したので、

脇のブッシュ帯に逃れて、

両手でブッシュをつかんで登るように指示した。

結果問題なくブッシュ帯を抜けて尾根上に出た。

背後には高度感あふれる風景が広がる。

と、そのとき前方を見ていた私の目に、

ヒグマの姿が飛び込んできた。

真っ黒の若いヒグマが、

50mほど先で我々と同じ側の沢形から、

フワッと躍り出た。

そしてまだこちらに気付かず歩いている。

こちらが鈴を鳴らしたことに驚き、

一旦立ち止まったので、

カメラを取り出そうとした。

するとその若いヒグマが、

一瞬こちらに向かってきた。

それで写真をあきらめ、

まだ気付いていないHiromiに声をかけた。

「Hiromi、ヒグマだ、静かにこっちに来い」と。

しかしHiromiは度胸が据わっているんだか鈍いんだか、

ほとんど反応がない。

それからそう長くはない時間、

鈴を鳴らし続けてにらみ合い。

するとヒグマは登ってきた方とは反対側の沢筋へと、

走って逃げて行った。

結局にらみ合いの末逃げていく、

というこれまでの経験通りだった。

しかし一瞬でもこちらに向かってくるというのは驚きだ。

まだ若いヒグマで好奇心が強かったのだろう。

 ルートの冒頭から藪漕ぎや雪渓の急登で、

もう結構疲労が積み重なってしまった。

腐りだした雪に飲まれて足が重い。

二か所で露出した笹を漕いだ。

そして広い稜線に上がると、

いまだ純白の増毛山地核心部が美しい。

そんな素晴らしい風景を眺めながら歩く稜線は楽しい。

稜線は『知来岳』に近付くにつれて狭くなり、

頂上手前では登山靴一足分に近い幅だ。

雪が半分腐っていたからよいが、

クラストしていたなら怖いところだ。

 10時05分、『知来岳』(ニ等三角点:知来岳)

そこに三角点標石が露出していた。

このピークに立つのは、

これが14回目だった。

しかし積雪期にしか登ったことがなかったので、

三角点標石を目にするのは初めてだ。

なんだか疲労困憊だが、

標石を確認できたことはよかった。

そして結局14回ここに立った中で、

最も長い時間がかかってしまった。

まあ、歳も歳だしねえ・・・

 頂上でパンを食べていると、

我々の後からやってきた男性単独行者が、

ゆっくりと上がってきた。

そして札幌からやってきたというその男性と、

しばらく話しをした。

この日出会ったのは、

この男性一人だけだった。

 下山は登行ルートを辿らず、

長い安全ルートを下ることにした。

長い稜線から見渡す素晴らしい風景を堪能し、

下降尾根にのったところ突然ピンテが現れ、

それが5~10m間隔で続いている。

ここもまたピンテの嵐だ。

誰がいったいどういう目的で、

必要以上に多くのピンテを付けて、

それを放置して下山するのか?

どうしても理解しがたいし、

到底納得できない。

ひところ猫も杓子も『知来岳』、

と言って登られた時期があった。

それが今は落ち着いたと思ったのに・・・

ピンテのデパートみたいなものを目にするのが不快なので、

尾根を外し沢形に下り、

沢伝いに下降して林道に出た。

あとは林道を歩いて御料地牧場へ。

 12時25分、駐車地。

最後のピンテは不快だつたが、

この日は天候が良く、

風も弱かった絶好の山日和だったことに感謝し、

帰途に着いて早い時間から、

Hiromiといつものように「反省会」。

 

 

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