箱根にはまた行きたいです。でも超有名観光地だけあって、ホテル代も飲食代も超ボッタクリ価格です。カツ丼や親子丼でも1700円します。かけそば、かけうどんも1杯1100円。ホテル代も1泊2万円ならまだ安い方です。高いホテルになると10万円近くします。
私の場合は、直前まで天候が読めなかった事もあり、宿の予約も旅行当日の朝にようやく取れたので、宿と食事についてはもう諦めました。宿は小田原で前述のビジネスホテルに泊まり、食事も、旅行1日目の朝は前日夕食に食べたカレーの残り、その日の昼は当日朝に食べる予定だったパン、夕食は小田原駅構内の立ち食いそば屋さんで冷やかけそばとミニ天丼のセット(左上)。旅行2日目はホテルの前述のショボいバイキング朝食(右上)、昼は強羅で一番安かった900円のショボい餃子定食(左下)、夜は小田原駅のコンビニで買った駅弁(右下)。
でも、食事については、超ボッタクリ価格だったのは強羅周辺だけで、箱根町周辺では、私の近所の飲食店ともそう変わらない価格だった印象を持ちました。駆け足での旅行だったので、きちんと調べた訳ではありませんが。
強羅周辺でも、駅から川を渡って宮城野という地区まで来れば、普通の住宅街もありコンビニもあるようです。周辺にはそのコンビニしかなく、競争相手もいない為に、ネットのクチコミ情報の評判は余り宜しくはありませんでしたが。
それでもバカ高い飲食店と比べたらまだマシではないでしょうか。わざわざ箱根まで来てコンビニ食で済ますのも気が引けますが。何を目当てに旅行するかで、飲食店やホテルの価値基準も変わって来ます。
私は今回、鉄道旅行を主眼に置いたので、宿や食事については二の次、三の次でした。次はもう少しまともなホテルに泊まり、もう少しまともな店で食事をしようと思います。(箱根旅行記全7巻 完)
箱根旅行2日目のハイライトは何と言っても大涌谷です。まず箱根山の成り立ちから説明します。
箱根山は巨大なカルデラ火山で、40万年前は盛んに火山活動を行っていました。カルデラ火山とは、巨大火山の内側に更に小さな火山がある地形の事です。巨大火山の火口壁が外輪山、内側の小さな火山が中央火口丘です。芦ノ湖はその火山活動で川が堰き止められて出来た湖です。やがて火山活動が収まり、火口原に人が住み着き、箱根の町が出来ます。交通路も整備され、東海道や箱根の関所が置かれます。近代に入ってからは観光開発で登山鉄道も作られました。
しかし、今も火山活動が活発に行われて、硫黄ガスが噴煙を上げている場所があります。それが大涌谷です。ここも観光地で、谷の周囲にはロープウェイの駅や展望台、自然博物館(箱根ジオパーク)や土産物店が軒を連ねるようになりました。温泉場では卵が茹でられ、黒たまごとして4玉500円で販売されています。
でも一皮向けばここは危険と隣り合わせです。今も有毒な硫黄ガスが噴煙を立ち上げ、観光客は立ち入りを禁止されています。例外的に一部の見学路のみ制限付きで公開されていますが、見学には予約が必要で、ヘルメット着用が義務付けられています。見学路には、いざと言う時の為に、7ヶ所の避難シェルターも設置されています。
私はここにすっかり魅せられてしまいました。西日本にはこんな場所はありません。カルデラ火山なら九州にも阿蘇山がありますが、湖まであり、登山鉄道やケーブルカー、遊覧船まで楽しめるのはここだけです。大涌谷の黒たまごも温泉卵の一種です。硫黄ガスが卵の殻の鉄分と化学反応を起こし、硫化鉄となって殻が黒くなって出来ました。黒いのは殻だけで中身は普通の固茹で卵です。
でも、普通の温泉卵よりコクがあって美味しいです。「一つ食べると寿命が7年延びる」と言われています。私の作るゆで卵は、半熟だったり殻がきれいに剥けなかったりしますが、このゆで卵は完熟で殻も簡単にきれいに剥けるので重宝しています。
強羅駅には箱根登山鉄道の旧型車両モハ1形の模型が展示されていました。高校生の作った模型ですが、前照灯のガラスの襞まで精巧に再現されていて、その見事な出来栄えに驚かされました。モハ1形は、それまでの木造車が1950年に鋼鉄製に作り替えられた車両です。ケーブルカー等を除けば日本最大の傾斜80パーミル(80/1000m)の勾配でも走行できるように、随所に色々な工夫が施されています。
まずブレーキですが、通常の車両にある電気ブレーキ、空気ブレーキ、手動ブレーキ以外に、レール圧着ブレーキも装着されています。いざと言う時には、特殊な石をレールに当て、その摩擦でブレーキをかけるのです。そして水タンク。電車の前方下部にはこれが設置され、カーブでは散水してレールの摩耗を防いでいます。他の鉄道では潤滑油を散布しますが、急勾配の登山鉄道では潤滑油では車輪が空転して危険なので、代わりに水を撒いているのです。
モハ1形は車両老朽化の為に2005年に廃車となり、改良型のモハ2形(左上写真)もわずか1編成を残すのみとなりました。代わりに、姉妹関係を結んでいるスイスのレーティッシュ登山鉄道の技術が使われたアレグロ号(右上写真)とベルニナ号が、観光客の輸送に大活躍しています。
箱根登山鉄道各駅の標高を次に書き出しておきます。小田原から強羅まで直線距離ではわずか約15kmしかありません。それだけ走る間で500m以上も上がるのですから、この鉄道がいかに険しい山中を走っているか、お分かりいただけると思います。
箱根湯本108m
塔ノ沢165m
大平台349m
宮ノ下448m
小涌谷535m
彫刻の森551m
強羅553m
沿線のあじさいも、この高低差のおかげで、下から上まで開花前線が上がり切るまで、6月中旬から7月中旬まで約1ヶ月かかります。私が行った時は既に終点の強羅付近もだいぶ咲いていましたが、それでもやはり麓の方が咲き方が若干華やかでした。
箱根登山鉄道では、この急勾配を上がる為に、3ヶ所のスイッチバックが設けられています。スイッチバックで電車の向きを変えながら、ジグザグに山腹を上っていきます(前記の地図参照)。上の写真はそのスイッチバックの信号場です。駅ではないので乗客は乗り降り出来ません。でも小さなホームが設けられています。何故でしょうか?(実際に電車に乗ればすぐに分かります)
旅行2日目は1日目に訪れる事が出来なかった場所に行く事から始めました。最初は箱根湯本駅から小田原寄り一つ手前にある入生田駅です。駅名の入生田は「いりうだ」と読みます。最初は何で読むのか分かりませんでしたが、栃木県の桐生(きりゅう)、京都府の芹生(せりゅう)と同じ読み方である事に気が付きました。そう言えば政治家にもいましたね。萩生田(はぎうだ)と言う統一教会絡みの人物が。
この駅には登山電車(箱根登山鉄道)の検車区があります。同じ箱根登山鉄道でも小田原から箱根湯本までは小田急の車両が乗り入れ、登山電車はこの検車区に出入りする場合しか来ません。登山電車と小田急とはゲージ(軌間=線路幅)が異なります。小田急は狭軌の1067mm、登山電車は標準軌の1435mm。箱根湯本からこの駅までは登山電車も乗り入れるので、2種類のゲージの線路が並行して走っています。前から見ると3本の線路が走っているように見えます。これが三線軌条です。日本ではもうここでしか目にする事が出来ません。
険しい山間部を走る登山電車のゲージの方が、ほとんど平野部しか走らない小田急のゲージよりも広いのは何故か?山間部の急な勾配を登るには、より大きいモーターが必要だからです。登山電車は、急カーブも回らなければならないので、車両の長さがわずか17mしかないのに、ゲージの幅はこちらの方が大きいのです。
三条軌道の撮影を終えた後は塔ノ沢駅に向かいました。こちらは箱根湯本で小田急電車から強羅行き電車に乗り換えて一つ目の駅です。上り線ホームの横に深沢銭洗弁天があります。この弁天様の湧水でお金を洗えば、お金が倍になると言い伝えられています。ネットには小銭だけでなくお札も柄杓付きのザルに入れて洗おうとする写真もアップされていました。お札なんか水で洗ったらクチャクチャ、ベトベトになって使い物にならなくなるのでは?
私は近くの早川橋梁(通称・出山の鉄橋)の写真を撮る為にこの駅に降りました。早川渓谷に架かる現存する最古のトラス橋です。大正時代の鉄橋架設工事の際には地上60mまで木の足場が組まれました。駅の雰囲気や、駅から崖下の国道1号線に降り立つまでの風景は、もう秘境感たっぷりで、南海高野線の紀伊細川駅を訪れた時の事を思い出しました。
但し、そこから出山の鉄橋に向かうまでが一苦労です。鉄道と並行して走る旧東海道の国道1号線を辿る事になりますが、ひっきりなしに車が行き交い、道を横断する事も出来ません。道自体も2車線の細い道で、横断歩道もありません。車に気を付けながら、必死の思いでようやく鉄橋撮影スポットに辿り着く事が出来ました。箱根登山鉄道は小田急傘下の地方私鉄で、電車の運転本数も多いので、他の撮影スポットよりはシャッターチャンスに恵まれています。交通事故に遭う危険さえなければ絶好の鉄道撮影地なのですが。
但し周辺の旅館街は寂れています。国際観光地の箱根も、潤っているのは箱根湯本と強羅、大涌谷と箱根町周辺だけはないでしょうか。この国道沿いの廃屋も、かつては有名旅館として繁盛していたのでしょうか。