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人権問題としての脱原発

2011年09月29日 21時08分18秒 | 福島の犠牲の上に胡坐をかくな
 

 いささか古い記事になりますが、国公一般労組のブログ「すくらむ」から転載します。

(転載開始)
ピンハネ率93%・核燃料プールに潜る外国人労働者-重層的下請構造で使い捨てられる福島原発労働者

(前略)
 福島第1原発の労働者の多くが宿泊する福島県いわき市で市議会議員をやっています渡辺博之です。
 上の図は私が作成した「原発の重層的下請構造の構図」です。
 東京電力から日立や東芝などプラントメーカーなどへの発注のほか、「東電御三家」と呼ばれている「東電工業」「東京エネシス」「東電環境」という2次下請の企業に発注されます。この「東電御三家」の下に、3次下請となる「常駐下請」の企業がそれぞれ20社ぐらいずつぶら下がっています。
 さらに、その下請として、地元の専門業者が4次下請となります。4次下請は、パイプやバルブ、電気など、それぞれ固有の技術力を持っている業者で、ある程度地元では知名度がある企業です。
 この4次下請の専門業者が、5次下請となる「派遣会社」――「派遣会社」と一応呼んではいますが実態はまともな派遣会社からすれば一緒にしてくれるなと怒り出すような違法な「人夫出し業者」と言うべきものです――この人夫出し業者(派遣会社)を経由して、必要なだけの作業員をかき集めているのです。
 さらに、人を集めることができなければ、その下に、6次、7次の下請となる人夫出し業者(派遣会社)から作業員を集めることになり、場合によっては20次下請ぐらいまでの重層的な人夫出し業者(派遣会社)がからんでくることもあります。
 5次下請以下の人夫出し業者(派遣会社)になると、下請の順位はその都度入れ替わったりしますし、派遣会社から派遣会社への多重派遣というのも日常的に行われてます。
 実際の労働者は、5次以下の下請となる人夫出し業者(派遣会社)に雇われていたとしても、書類上は「常駐下請(3次か4次下請)」の社員ということにされています。しかし、給料は実際に雇われている4次下請以下の人夫出し業者(派遣会社)から受け取ります。
 東電からは労働者の日当が多い場合1人10万円ぐらい出ていますが、この重層的下請構造の中で中間搾取され、4次、5次下請労働者で日当8千円ほどにされ、さらに末端の原発労働者では私が知っている中で最も低い日当は6千500円程度でした。底辺の原発労働者の実態は、日当10万円から9万3,500円も中間搾取され、ピンハネ率は93%で9割を軽く超えているのです。
(後略)
(転載終了)
 http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10977201393.html

 その記事では、8月4日に日弁連主催の「原発労働問題シンポジウム」での地元共産党市議の上記報告が取り上げられています。当該報告ではその後に続いて、下請け作業員に対する上記の賃金ピンハネ事例以外にも、作業員の名義貸しや偽装請負の横行、社会保険未加入などの人権侵害や、東電・下請け企業ぐるみの「口封じ」、暴力団の暗躍などの実態や、最底辺でより危険な作業に就かされる外国人労働者の存在などが語られています。

 以前、NHK番組「クローズアップ現代」で、大阪・西成あいりん地区の労働者が、宮城県でのダンプ運転手募集と騙されて、福島原発の作業員として働かされていた話を取り上げていました。その番組でも、今回の件はたまたま労働者の告発によって明るみに出ただけで、あくまでも氷山の一角にしか過ぎないと言われていました。
 また、この様な違法行為の記述は、原発作業の実態を描いた下記の「原発労働記」にも、幾度となく顔を覗かせます。

原発労働記 (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


 昨今、脱原発運動が世間の耳目を集めるようになるにつれて、原発推進派からの巻き返しも目立つようになりました。曰く、「原発がなくなったら電気が途絶える」だの「電気料金が割高になる」「二酸化炭素の排出量が増える」だのと、お為ごかしの屁理屈を伴いながら。
 それらの全てが、実際は為にする屁理屈にしか過ぎないのは、もはや明らかです。電気が途絶える所か、それまで原発フル稼働の為に休止していた既存の火力発電所を動かせばそれで済む話。
 日本の電気料金が割高なのも、実は原発が張本人。原発を作れば作るほど儲かる「言い値」の独占価格体系(総括原価方式)によるもの。キロワット時の発電コストも、水力4円、火力9円に対し原発12円と、実は原発が最も高コスト。原発は出力調整の融通が利かず、余剰電力を消費するために揚水発電所も付設しなければならない。その揚水発電のコストまで含めると最も割高となる。
 燃料供給について見ても、化石燃料よりウランの方が先に枯渇するし、海外依存度もウランの方が高い。ウランの採掘・精錬・加工でも化石燃料を使う。従って「二酸化炭素排出」云々は為にする口実でしかない。

 この様に、純粋に経済コストだけで見ても、原発はもう「良いトコ無し」な上に、放射性廃棄物(核のゴミ)の貯蔵・管理・処分をどうするか、温排水や放射能汚染の問題をどうするかといった、他の発電所には無い原発特有の巨大な矛盾を抱えているのです。原発が「トイレ無きマンション」に準える所以です。
 その矛盾を解消するために強行されたプルサーマル(核廃棄物リサイクル)計画も、その一部を再利用するだけで、後には更に危険な高濃度の「核のゴミ」が残される。計画も悉く失敗の連続で、実用化の目処が立たない原型炉「もんじゅ」に多額の税金がつぎ込まれてきた。核廃棄物を南太平洋やモンゴルに捨てろという主張なぞは論外。ゴミ押し付けの手前勝手な論理以外の何物でもない。地球は「核のゴミ捨て場」ではない。

 だから、電力会社は原発マネーを使って安全神話を振りまきながら、決して大都会に原発を作ろうとはしないのです。また、自分たちで現場の作業を担おうとはしないのです。電源三法交付金で過疎地帯を原発依存の「企業植民地」に変え、地域経済自立の目を摘み取り、下請けの下請けのそのまた下請けの零細業者・ワーキングプアに被曝のリスクを全て押し付けているのです。
 他にもっとまともな仕事さえあれば、誰もそんな仕事には就かない。無いから仕方無しに就くのだ。そこに食い詰めた訳アリの労働者や、それを食い物にする寄生虫(暴力団・手配師)が集まる事になる。電力会社も、裏ではそれを体よく利用しながら、表向きはあくまで無関係を装ってきたのだ。

 つまり、原子力発電とは、その様な被曝ピンハネ搾取労働の上に胡坐をかく「差別の発電体系」なのです。そんな差別的・非人間的で不正義な仕組みを改め、もっと人間らしい経済の仕組みに変えようというのが、脱原発運動の目的です。
 それに対しては、「これは何も原発に限った問題ではない、派遣・請負などの非正規労働や、名ばかり正社員などのワーキングプア全体に言える事だ」「だからと言って、非正規労働を今すぐなくせとは言えないだろう」などの反論があるかと思います。中には、「これは必要悪だ」と居直る輩もいるかも知れません。
 しかし、その諸々の差別・搾取の最底辺に位置するのが、この原発労働です。何故ならば、それは被曝という形で、他の労働以上に生命の危険に直接晒され、また地方過疎地の多重下請け構造の下で、他の労働以上に無権利状態に据え置かれた、謂わば「蟹工船」と同じ状況に置かれた労働なのですから。これは逆に言えば、この「沈め石」の最底辺で労働者が立ち上がれば、その他の労働現場にも多大な波及効果を及ぼす事が出来るという事でもあります。

 そういう意味では、原発問題は環境や経済コストの問題以前に、人権問題として捉えるべきなのです。勿論、環境保護や経済コストの面からも考えなければなりませんが、あくまでも基本は人権問題として捉えるべきです。
 人権問題である以上、あれこれの口実をつけて、脱原発の目標を先延ばしにしたり放棄する事は、もはや許される事ではありません。ましてや産経新聞の様に、作業員の所在不明問題を人権問題として見ずに、名義貸し・偽装請負や賃金ピンハネも黙認しながら、テロの脅威だけを言い募る立場は、労働者への敵対以外の何物でもありません。「下請けの命より原発存続の方が大事」と言うに等しいのですから。
 自然再生エネルギーは所詮原発の代替とはならない?政府・財界にその気がないだけだろう。ドイツやデンマークでは今や電力供給の2割をそれで賄っている。フランスの原発頼みの偽装「脱原発」だ?原子炉も核燃料もそれ以上に米国依存のままで、脱原発を貶める資格が原発推進派にあるか。テメエら原発推進派こそが、福島を放射能で侵略し、酪農家を自殺に追いやり、国民にテロ行為を仕掛けているのだろうが!北朝鮮と同様に、原発の下請け労働者や地域住民を「原子力村」の強制収容所に囲い込んでいるのだろうが!

東日本大震災 原発事故怒りの歌 「うつくしま福島をかえせ!」
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3 コメント

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原発労働記 (あるみさん)
2011-09-30 22:18:59
の元、「原発ジプシー」が、なんと水木しげるさんの手で漫画化されているのを、近所の書店で発見しました。パラパラと見てみたのですが、「現代テクノロジー」の塊であるハズの「原発」の本当のおどろおどろしさが描かれているようです。
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原発ジプシーの漫画復刻版 (プレカリアート)
2011-09-30 23:50:19
>「原発ジプシー」が、なんと水木しげるさんの手で漫画化されているのを、近所の書店で発見しました。(あるみさん)

 朝日新聞出版の「福島原発の闇 原発下請け労働者の現実」ですね。以下、当該amazon.co.jpから引用します。

内容紹介
『原発ジプシー』の著者で知られる堀江邦夫、『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるが1979年、福島原発の“闇”を描いていた!下請け労働者として原発に潜入、その知られざる現場の実態を書き下ろした堀江邦夫のテキストに、水木しげるが福島原発近くまで赴いてイメージを膨らませて、原発内部の緊張感を圧倒的迫力で描いた。過酷な労働、ずさんな管理態勢……。3・11以降のすべては、32年前当時から始まっていたことがわかる。福島原発の現場を初めて表した貴重なルポ&イラストであり、大人から子どもまで、原発労働の現実、原発の本質が一気に理解できる。初の単行本化!イラスト多数。

福島原発の闇 目次
第1章 パイプの森の放浪者たち
「原発の仕事も考えもんだ」/ 原発を渡り歩くジプシーたち/ 防護とは名ばかりの防護服 / 汚染水が突然吹き出す/ 高線量エリアでの作業// 故障していたアラームメーター/ 激しい頭痛に座り込む 
第2章 傷ついた者たちの墓標
史上最悪の事故に口を閉ざす/重装備でヘドロを掻き出す/“被ばくノルマ”の達成/管理区域内で重傷を負う/想像を絶する「事故処理」/“無災害”を讃える記念碑
 http://www.amazon.co.jp/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AE%E9%97%87-%E5%8E%9F%E7%99%BA%E4%B8%8B%E8%AB%8B%E3%81%91%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%E3%81%AE%E7%8F%BE%E5%AE%9F-%E5%A0%80%E6%B1%9F-%E9%82%A6%E5%A4%AB/dp/402330980X

 私も早速書店で見てみよう。
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今読んでいる本の紹介など (プレカリアート)
2011-10-01 08:15:59
 本の話が出たついでに、今読んでいる本の紹介など。浅川凌という元・原発技術者の方が書いた「福島原発でいま起きている本当のこと」(宝島社)がそれで、500円位の薄手の本ですが、原発労働の実態がつぶさに語られています。
 その本によれば、作業者一人当り被曝線量の制限があるので、それを人海戦術で補う為に、人を半ば騙して連れてくる様な事が平然と横行しています。その被曝線量の上限も、原発補修工期が差し迫ったり、今回の様な過酷事故が起こったりすれば、線量計を外して作業させるといった「辻褄合わせ」が、幾らでも行われています。現場の労働者も、線量オーバーで仕事を干されるよりはそっちの方がまだマシだという事で、異常な状態に慣らされてしまっています。
 そういう「線量を金で買う」「頭数さえ揃えば良い」という感じで作業が行われているので、人材育成も放射線管理も、実態は出鱈目そのものです。まずはご一読を。
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