脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症の初期に料理の味付けが変になりますか?

2014年05月18日 | 正常から認知症への移り変わり

質問が来ました。

「テレビで言っていたことの確認です。この通りですか?
家族でできる認知症チェックとして、二つ上がっていました。
1.料理
料理というのは非常に複雑な作業の積み重ねです。急に料理の味が変わったりした場合は、作っている人に異常があるサイン。
2.趣味
ゴルフの場合、スコアが数えられなくなる。好きだった趣味がうまくできなくなって嫌いになってしまうということがあります。趣味が急に変わった場合も要注意。」

 クマガイソウの群生(5月6日)

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以下はコメントです。

 料理の味は、急には変わりません。
味付けが おかしくなるのは中ボケの半ば過ぎ。

その頃になると、家族はだいたいこういいます。
「辛すぎてとても食べられないものを作るのですが、本人はまるで平気な顔をしてパクパク食べるのです」

いつも言うことを繰り返します。
昨日まで上手に手際よくおいしい料理を作っていた人が、今日になったら、突然とても食べられないような料理を作るでしょうか?

P1000029_2とてもとても珍しいことですが、もしそんなことが本当に起きたとしたら、何らかの精神疾患の発症か、脳外科的な病気が起きたとしか思えないのですよ。

前頭葉機能は、だれでも年齢とともに能力低下を起こしてきます。正常な加齢現象です。
普通の、高齢期に起きるアルツハイマー型認知症は、その前頭葉機能が年齢による低下を超えた形で始まります。

注意すべきはふつう言われる認知機能にはまだ支障は起きてきていないことです。だから、しゃべらせるとまるで普通。計算もできるし、模写などの右脳の機能も問題なし。
認知症の始まりは、前頭葉機能だけがうまく機能していないのです。だから認知症のごく初期には、生活上では前頭葉機能低下(障害)症状があれこれとみられるようになります。

今回は「料理」という分野での支障に絞ってみてみましょう。
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・同じものばかり買ってくるようになる。
冷蔵庫の中を見ると豆腐が3丁。あぶらげ5袋。
テーブルの上にはアンパンが5個もあるというようになるのです。

・今まで手作りのおかずを食卓に並べていた人が、出来合いのものばかり買うようになる。
忙しいときや体調がすぐれないとき、その食品がどうしても食べたいときなど納得できることもありますが、あまりにもその変化が大きいときや継続するときは要注意です。

・もともと出来合いのおかずで済ませていた人でも、パックのまま出すとか「今までとは違う」と家族が感じるならそれも兆候だと考えた方がいいでしょう。

・味は変わらないのに、作る人が変わったようなお皿が並ぶ。
料理が得意で、盛り付けや食器にも一工夫していた人などは、変化がはっきりわかります。あまりにも雑になるのです。

・手順が悪くなる。
ベテラン主婦ともなれば、「いただきます」に合わせて料理を作るものですが、カレーはできてるのにご飯が炊けていないとか、麺類を茹で上げた後で出汁を作り始めたり、暖かい料理を先に作ってしまって、食べるときには冷たくなったままサーブするようなことが起こります。
フライパンが温まった後からお肉を取り出して切り始め、フライパンから煙が出てきても火を止めないというようなこともおきます。
食事の用意ができたときには、流しは片付いていたような人では、信じられないくらい流しは汚れ物でいっぱいです。

・手際が悪くなる
包丁さばきが別人のようになります。野菜の切り方が妙に大きすぎたりして「いかにもおいしくなさそう」と家族が言います。
ご飯を炊くときの水加減がざつだったりもします。
今までの時間では食事作りが終わりません。長い時間をかけて「たったそれだけ?」と家族がびっくりする料理しかできません。

そしてさらに疑問符がたくさん付く事件が続いて、小ボケが始まって3年くらいで中ボケに突入。
脳機能から言えば、前頭葉機能だけでなく認知機能にも支障が起きてきたことを意味します。

その真ん中を過ぎたところから、ようやく、味付けが変といわれるようになるのです。


「今日もコロッケ明日もコロッケ」ー料理作り
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20080517 に詳しく書いてあるのですが、ちょっと引用してみました。

中伊豆わさび田(5月6日)

P1000019P1000021 趣味についての回答です。

 ゴルフのスコア:小ボケで起こりうると思います。

ゴルフをする以上ボールを飛ばすことやあてることだけは続けながらコースを回ります。前頭葉機能は注意の集中や分配を担いますから、その働きが落ちれば、ボールとクラブには意識がいっていても、何打打ったかまでは保持していられない。十分に考えられます。

 P1000025 できなくなって嫌いになる:嫌いになるというよりは面倒くさい方が主です。

長く続けてきた趣味であっても、没頭できない様子が見てとれ、手際が悪くなります。
作品は、その人らしさがなくなって、驚かれるほど月並みなものになります。

そのうえに、いずれの場合も、
「最近、何だかやる気がなくって」とか
「歳をとって、下手になりました」とかいうのですが、その言葉ほどには気にしている様子がないこともまわりを驚かせます。

これらのことをコントロールするのが前頭葉機能ですから、当然といえば当然ですけれど。
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趣味が急に変わる:変わるのではなくて、理由を付けてやめていく。

小ボケの段階で、新しいことを始めることはまずありません!

新しいことに挑戦するときには、前頭葉の意欲が必須です。
前頭葉機能が老化を早めるときには、最も基本的な「意欲」から低下が始まります。
だから、新しい趣味を始めるはずがないのです。
付け加えましょう。続けて低下していくのが、注意集中・分配力、発想、計画などになります。

重度の認知症に至るまでには、いろいろな症状はありますが、起きてくる順番が無視されているのはなぜでしょうか?
趣味の説明のように、ありそうでも、実は認知症の初期症状としてはありえない症状までもあげられて・・・
認知症の初期症状とか、家族でも気づくといわれても、ちょっと困りますね。

goo blog編集画面からアクセス解析ができるのですが、この記事がよく読まれていることがわかりました。
2020年4月19日に書いた『Stay Home  タケノコを満喫』の後半に、それまでに料理に関して書いた10記事をまとめて掲載しました。興味がある方はお読みください。

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