脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

慢性硬膜下血腫で初笑い

2015年01月10日 | これって認知症?特殊なタイプ

お正月に行った伊豆シャボテン公園の写真と一緒に笑ってください。

岩手県のT葉さんからお電話「せんせい・・・」
いつもの声ですが、でも、あれっ何か違う!?
予感的中。
「実は・・・暮れから入院して・・・退院したところ・・・」

びっくりする私に続けられた説明には、またまたびっくりさせられました。

去年11月にお会いした時に、「慢性硬膜下血腫」の話をしていたのです。なんとその「慢性硬膜下血腫」で入院治療を受けていたといわれるのです!

「いやあ。まったくおかげさまでした。あの時よくよく聞いていなかったらこんなに簡単なことじゃすまなかったはず。なんとお礼を言っていいか!」
「命の恩人」とは言われなかったような気がしますが、とにかく大絶賛されました(^^;

 

 

 

 

 

 

 


実は最初の心配は、説明の慢性硬膜下血腫の言葉を聞いたとたんにどこかへ飛んで行ってしまってました。
「なあーんだ。それは暖かくていいお正月でしたね」とのんきに答える私の声に、ちょっと戸惑い気味のT葉さんを感じたものですから
「脳外科では一番簡単な手術って言いましたよね。ちょっと穴を開けて、洗うだけですもの」と続けました。
するとT葉さんも
「そういえば、手術台の上でもうよくなった気がしたなあ。スタスタ歩いて帰ってもいいかって思ったもんな」
このあたりから、いつものT葉さんの闊達な話し方になってましたよ。

「『慢性硬膜下血腫』は頭を打って3か月後ってよく言われるんですよ。1か月後って早いですねえ。ということはT葉さんの脳が若者並にピチピチなので少しの血腫でも脳を抑えたってことかな?」

「あっ、それいただき。ボクはかっこつける方だから、気に入った!」
ほとんど漫才・・・

11月に話した「慢性硬膜下血腫」の説明です。
「頭を打ったその時には、特別何の症状もないのです。CTやMRIを撮っても正常。それがしばらくたった後で、急に変な困った症状が出てくるのです。
例えば、手足に運動障害が起きてくるとか言葉がうまく繰れなくなるとか。もちろんボーとしているとか記憶障害の場合もありますから、『急にボケた』なんて言われることもあります 」

「脳は、頭皮と頭蓋骨で守られています。
そのうえに、頭蓋骨のすぐ下に張り付いている脳硬膜という硬い膜、脳に張り付いている軟脳膜、その間のくも膜という3層の膜で包まれて脳脊髄液に浮いている状態です」

「頭を打った後、血液やら脳脊髄液やらが脳硬膜の下側に少しずつたまって、頭蓋骨があるので外に出られないため血腫を作って行くことがあります。大体3か月程度たったころが多いのですが、ある程度の大きさになると脳を圧迫して、その部分の働きが障害されます。
血腫の大きさが、脳機能を障害してしまうほどになるとドンドン症状は進んでいきます。つまり急に症状が出るといわれるわけです」

「突然症状が起きるから、まさか3か月前に頭を打ったことが原因と思いつかないことはよくわかります。急にボケて恥ずかしいからと受診を先延ばしにすることがないように気を付けてください。
頭を打ったら、3か月後のカレンダーに印をつけておくことが大切ですね」
このようなことをお話ししました。

「ところで、どういうことだったんですか?」

「12月30日。押し迫って、急に足が上がらなくなって。ほんとにその朝から変になったものだから、これは急がないといけないと思って病院へ急いだら、年末なのにうまく連携プレーしてくれて、とんとん拍子に手筈が整って当日すぐ手術。手術台の上で治ったって感じたのはもう言ったでしょ」

「頭を打ったのは?」

「11月末、トイレで気持ちが悪くなって倒れて頭も打ったので、すぐ受診。MRIまで撮ってくれて正常と言われて帰ったけど、妻と一緒に『頭を打ったことは忘れないようにしよう』と言ってたので、12月30日に受診できたんだね」

「今回の事件はもう完全解決。脳の病気をしたから生活を控えめにしようなんて考えないでくださいね。
今までどおりが一番。楽しく皆さんのリーダーでいらっしゃってください」

最近、手術で治る認知症と取り上げられることが多くなったのが、この『慢性硬膜下血腫』と『正常圧水頭症』です。

確かに手術で劇的に治るのですが、注意事項が二つ。
ひとつは、その頻度です。例外中の例外ですから!
「劇的回復と喜び過ぎないでー正常圧水頭症」参考にしてください。
世の中で問題になっている認知症のほとんどが『アルツハイマー型認知症』ということはとても重要なことです。

もうひとつは、家族が「手術で簡単に治る」ことに飛びつく傾向が生まれることです。
認知症の大部分を占める『アルツハイマー型認知症』は、高齢者が何かのきっかけから、生きがい、趣味、交友なく運動もしないナイナイ尽くしの生活を続けるうちに、脳が老化を加速してしまって起きるものです。
つまり生活のあり方そのものが、認知症を作り上げるし、軽いものであれば改善も図れるということを忘れないようにしましょう。

 


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