脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

老後の時間

2018年04月27日 | 二段階方式って?

小・中・高校と同窓だった美代子さんが誘ってくれたので、茨城県の彼女の家まで飛んで行きました。
あれこれと思い出話に花が咲き、古いアルバムを持ち出してくれて二人で記憶を補い合って、本当にかけがえのない豊かな時を過ごしました。
「あの時代に、お誕生会をしてたのよ。あなたのうち」
「そうそう、父が写真が趣味だったから、毎回写真撮ってくれたけど、結構みんな緊張してねえ。ピースなんかしなかったよね」
「あの、ボッと焚くのなんて言ったっけ?ストロボ?それからフラッシュになったのよね」
前列左端が美代子さん。後列左から2人目が私。

考えてみれば、父は趣味の写真にはけっこう没頭していたように思います。小さな現像室もあったし、写真を乾かすのを手伝っていた記憶もあります。何よりカラー写真がまだ出回ってない頃に、マゼンタとかシアンとか言いながら上皿天秤を使ってmg単位で薬を量っていましたから。60年以上も前の話です!

1時間半もかけて念願だったひたち海浜公園へ連れて行ってくれました(4/19)
Mr.Y原 ほんとうにありがとうございました。
ラッキーなことに晴天に恵まれ、さらに当日のネモフィラは今年のベストタイミングだったようです。話は変わります。

またまた昔話。今度は30年くらい前になります。脳外科による「脳精密検査外来」と名付けられた、ボケ外来(当時は「ボケ」でした)で、患者さんの脳機能を測定し、生活歴をきいたり、生活改善指導をすることが私の仕事でした。
担当医が精神科医でないということと、脳外科医がボケを診ることそのものが全国的に皆無だったことで、患者さんは全国各地から来院されました。年間2000人以上という大繁盛の外来でした。
もう一つ特徴的だったことは、いわゆる徘徊、不潔行為、暴言・暴力等がなく、生活面でも全面介助は必要がないレベルの方たちが多く来院されたことでしょう。

当時「ボケは治らない」と言われていました。だから介護保険へという流れが生まれたのですけれども。
ボケの専門医と言われた方々は、皆さん精神科。当時は精神科に受診することそのものに大きな決断が必要で、結果的には重症化してしまって初めて受診する→専門医は重症のボケしか出会えない→(重症化してしまった)ボケは治らない。OMG!(Oh My Got=なんということ)

ボケのごく軽い症状を訴えてくる人たちを、脳外科ならお手のものの様々な器質検査を駆使して調べます。CT やMRI、少し遅れましたがPETまで使ったのです。
そして結論。
「ボケは、脳の器質的な変化が原因ではない」
全国各地から、重症化する前の軽いボケの人たちがたくさん受診されました。その外来の仕事をしているうちに「仕事一筋。趣味・遊びを楽しまない、というよりも意味を認めずむしろバカにしている」タイプの生き方をしている人たちが、仕事を辞めてからボケていく・・・と気づいたのです。
とにかく「趣味なく、生きがいなく、交遊もなく、運動もしない」ナイナイ尽くしの人たちばかりがボケていっている圧倒的な事実!
(この考え方は原則的には正しいのですが、理解が表層的だったということが今なら言えます。一番大切な前頭葉機能の理解が足りませんでした)

そこで、講演の時に強調しました。
「左脳重視の社会を見直しませんか?左脳の能力はデジタルだから測りやすい。主要5科目と言われる教科は点数がすぐ出ます。確かに進学や就職などに有利だということは言えるかもしれません。
でも、ボケ外来で働いてみて、仕事一筋で頑張ってきた人たちの定年後の寂しさや悲しさ・・・仕事がなくなったら、いくら強がって何と言い訳しても、することがないのです。左脳中心で生きてそれが持つのは定年まで。20歳で社会に出て60歳で定年として40年。そこから20年以上の時間があります。(今なら、65歳まで現役。そしてそれから25年でしょう。このあたりにも年月を感じますね)
どんな仕事人間、会社人間と言われる人でも、一日24時間すべてを会社のために使いはしません。でも退職後は24時間すべてを自分で裁量して使って生きていくのです。その時右脳を使うことを知らなかったら、趣味も遊びも交遊も楽しむことができない。そしてボケて行ってしまう。
万一「退職したら遊ぶ」と決めていても、それまでに楽しさを体験しておかなくては踏み込んでいくことなんかできません。右脳を豊かにするには、体験するタイミングが大切で、左脳よりはるかに早く教育の可能性が閉じてしまうのです」

高齢の方たちにこの話はそんなにピッタリくるわけではありませんが、考えてみたら、PTAや婦人会などでも講演していたのです。

当時と比べたら、少しはましかなと思うこともあります。左脳中心の教育ではこの社会を乗り切れないという考えは少しずつ浸透してきているようですね。
先日、目にした文章です。
毎日の、家事と睡眠を除いた自由時間は14時間。
65歳から80歳で約77,000時間。
1日8時間で38年勤務と同じ。
小学校から大学までの標準授業時間12,000時間の6倍以上。
それで導き出された結論は「だから、何でもできる

一言付け加えさせてください。
「意欲さえあれば!意欲の座は前頭葉にあるのですから、豊かな前頭葉を育てましょう」
そしてもう一言。
「老後の宝は、何といってもお友だち。一緒にその時間を楽しめる友を持っていることは、そのままボケ予防につながります」

 

 


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