脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

30年前の「天竜市熊」での調査報告ー小ボケ・中ボケ・大ボケがまんべんなく存在

2019年09月16日 | エイジングライフ研究所から
フェイスブックを読んでいたら、友人の投稿に「天竜市熊(くんま)」の文字が!(今は浜松市なのですが、投稿者と同じようにどうしても「天竜市熊」と言ってしまいます) 私がいま取り組んでいる認知症予防の活動の原点のひとつは、ここ熊での5年間にわたるフィールドワークでした。その試みは日本医事新報に平成元年から4回にわたって報告してあります。 調査を始めた昭和62年には、熊地区は人口1217名。65歳以上の高齢者は276名、高齢化率22.3%でした。高齢化率22.3%は日本の近未来社会のモデルと考えられていました。昭和60年の全国高齢化率は10.3%でしたから、至極当然のことですが、昨日9月16日に総務省から発表された今年の全国高齢化率は、なんと28.4%! 私が住んでいる伊東市は、平成29年の高齢化率なんと、なんと40.6%! 今後も40%を超えて増え続ける予想が出ています。 このような時ですからこそ、このグラフをよく見ていただきたいと思うのです。 以下に、大切にしているグラフを示します。

これは、調査開始から5年たった平成4年に行った結果です。 熊地区の高齢者303人中231名に、個別に、前頭葉テストとMMSからなる神経心理機能テストを実施しました。地区で行われている「健康教室」の参加者が主な対象者という偏りはありますが、実施率は73.2%というのはかなりの達成率だと思います。「健康教室」に参加しない人たちは脳機能低下群が多いことが想定されます。
さて、説明です。横軸に前頭葉テスト結果、縦軸にMMSの結果を表しています。MMSは、国内外を問わず24点以上で合格とされています。 緑のプロットは、前頭葉テストもMMS も合格している人たち。 黄のプロットは、前頭葉テスト不合格、MMSは合格。 橙のプロットは、前頭葉テスト不合格、MMSはやや低下。 赤のプロットは、前頭葉テスト不合格、MMSも低下が著しい。 熊地区の高齢者が、見事この分類の中に入ってしまうという実態に、見通しはあったもののびっくりしました。 車が一度では曲がれない、バックでないと入って行かれないなどの山間集落の家庭訪問の大変さも吹き飛ぶほどの満足感と感動を、この記事を書きながらまざまざと思い出しています。 白のプロットは脳卒中後遺症、精神症状が強い方など例外でした。 病院外来では、この脳機能を物差しにボケの三段階をクリアに分類し、その症状までも関連づけて説明していましたが、外来受診される方々だけでなく世の中一般に小ボケ・中ボケ・大ボケの方がいるという見事な証明ができました。
詳細な数値は、後述記事にまとめます。
 
MMSでは合格していますから、前頭葉テストを実施しなくては発見できない、最も早期の認知症です。 自覚がありますから、回復は容易なのですよ。

家庭生活にトラブルが出てきますから、家族はとても困りますが本人にはその自覚がなく、家族は「言ってることを聞くと、まともなんですが、やってることを見るとギョッとさせられることばかり」と訴えます。 努力は必要ですが、まだ回復可能な段階です。

ここまで来て、世間ではぼけたと騒ぎ始めますが、回復は困難で、介護負担が大きくのしかかることになります。 もう一度見てください。

世の中には、正常な人とボケた人(大ボケ)だけいるわけではありません。 小ボケの人も、中ボケの人もいることが示されています。この事実は高齢社会の日本に対して、大きな展望と希望があることを示していると思います。


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