日本古代史 「万葉集」を読む 1 「日本」と「倭」と「ヤマト」と
講談社文庫の中西進さん全訳の『万葉集(二)』のp40に「956番」の大伴旅人さんが太宰府で詠んだ歌が載っています。
中西さんの読み下しは以下の通りです。
「やすみししわご大君(おほきみ)の食国(おすくに)は倭(やまと)も此処も同(おや)じとそ思ふ」
原文はこうです。
「八隅知之 吾大王乃 御食國者 日本毛此間毛 同登曽念」
ぼくは、こう思います。原文の「日本」がなぜ、読み下しでは「倭」と漢字で書いて、しかもふりがなが「やまと」なのでしょうか。
日本をヤマトと訳していいのなら「日本書紀」も「ヤマト書紀」、「続日本紀」も「続ヤマト紀」に題名を訳しても良いことになります。
普通の理解では「日本」は八世紀以後の日本国とか日本列島全体のことで、「倭」は七世紀以前の日本の旧名ですね。
紀元五世紀の「宋書倭国伝」、紀元3世紀の「魏志倭人伝」での「倭国王」卑弥呼も有名ですし、紀元一世紀の「金印」に「漢委奴国」と記されているのも「委=倭」です。
『万葉集』でも「日本」と「倭」が両方とも出てくるので、それぞれ「日本(にほん)」「倭(わ)」と訳せばいいのではないでしょうか。
日本の一地方である「ヤマト」と訳すのは混乱・混同の元ではないでしょうか。
「956番」の2つ前の「954番」は膳(かしわで)王さんの歌ですが、原文で「倭部越」を読み下しでは「倭(やまと)へ越ゆる」と訳しています。
956では「日本」を「倭(やまと)」に、954では「倭」を「倭(やまと)」にというのは、違う原語を同じ訳語にするのは無理があると思います。
すくなくとも、どうしてそうするかという説明は必要ですが、それがあるのかどうか、もっと学習します。
「1047番」の長歌の最初は「やすみしし わご大君の 高敷かす 日本(やまと)の國は」と読み下していますが、原文は「日本國」で、現代語訳は「八方を支配なさるわが大君が、高々と治めなさる大和の国は」となっています。
大君が治めるのは「大和の国」というのは、あまりにも小さすぎて大君から抗議声明が出るのではないでしょうか。
大和の国は天皇家の最初の拠点であり、天皇家が治めていたのは日本全体というのが記紀や万葉の世界の前提ではないでしょうか。
ですから、この1047番の場合、「日本」は大和という一地方ではなくて「日本」でないとつじつまがあわないと思います。
ヤマト朝廷というのは歴史学者たちの名付けた他称で、自称は「日本天皇家」ではないでしょうか。
「万葉集」を原文・読み下し・現代語訳で比較しながら、読んでいきたいと思います。
講談社文庫の中西進さん全訳の『万葉集(二)』のp40に「956番」の大伴旅人さんが太宰府で詠んだ歌が載っています。
中西さんの読み下しは以下の通りです。
「やすみししわご大君(おほきみ)の食国(おすくに)は倭(やまと)も此処も同(おや)じとそ思ふ」
原文はこうです。
「八隅知之 吾大王乃 御食國者 日本毛此間毛 同登曽念」
ぼくは、こう思います。原文の「日本」がなぜ、読み下しでは「倭」と漢字で書いて、しかもふりがなが「やまと」なのでしょうか。
日本をヤマトと訳していいのなら「日本書紀」も「ヤマト書紀」、「続日本紀」も「続ヤマト紀」に題名を訳しても良いことになります。
普通の理解では「日本」は八世紀以後の日本国とか日本列島全体のことで、「倭」は七世紀以前の日本の旧名ですね。
紀元五世紀の「宋書倭国伝」、紀元3世紀の「魏志倭人伝」での「倭国王」卑弥呼も有名ですし、紀元一世紀の「金印」に「漢委奴国」と記されているのも「委=倭」です。
『万葉集』でも「日本」と「倭」が両方とも出てくるので、それぞれ「日本(にほん)」「倭(わ)」と訳せばいいのではないでしょうか。
日本の一地方である「ヤマト」と訳すのは混乱・混同の元ではないでしょうか。
「956番」の2つ前の「954番」は膳(かしわで)王さんの歌ですが、原文で「倭部越」を読み下しでは「倭(やまと)へ越ゆる」と訳しています。
956では「日本」を「倭(やまと)」に、954では「倭」を「倭(やまと)」にというのは、違う原語を同じ訳語にするのは無理があると思います。
すくなくとも、どうしてそうするかという説明は必要ですが、それがあるのかどうか、もっと学習します。
「1047番」の長歌の最初は「やすみしし わご大君の 高敷かす 日本(やまと)の國は」と読み下していますが、原文は「日本國」で、現代語訳は「八方を支配なさるわが大君が、高々と治めなさる大和の国は」となっています。
大君が治めるのは「大和の国」というのは、あまりにも小さすぎて大君から抗議声明が出るのではないでしょうか。
大和の国は天皇家の最初の拠点であり、天皇家が治めていたのは日本全体というのが記紀や万葉の世界の前提ではないでしょうか。
ですから、この1047番の場合、「日本」は大和という一地方ではなくて「日本」でないとつじつまがあわないと思います。
ヤマト朝廷というのは歴史学者たちの名付けた他称で、自称は「日本天皇家」ではないでしょうか。
「万葉集」を原文・読み下し・現代語訳で比較しながら、読んでいきたいと思います。