雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

新・本と映像の森 202 北森鴻『メビウス・レター』講談社文庫、2001年

2018年11月05日 22時18分09秒 | 本と映像の森


新・本と映像の森 202 北森鴻『メビウス・レター』講談社文庫、2001年

 347ページ。定価本体619円。原書1989年講談社より刊行。

 「長編ミステリー」。「メビウス」という意味は「ねじれ」である。いくつもの意味で。

 1990年7月12日、絵が好きな男子高校生が美術室で焼身自殺をとげる。さらに、もう1人の写真好きの男子高校生が暗室で死ぬ。

 2つの死は謎のまま、何年かが過ぎる。

 中年作家・阿坂龍一郎にこの事件を独自に追跡した当時の高校生「ぼく」の手紙が届けられる。なぜ阿坂に手紙が届くのか。差出人はいったい誰なのか。

 主な登場人物を紹介する。まず現在。

 阿坂龍一郎 マンションに住む作家
 鳥丸好江  秘書。2年前から勤務。
 野島克明  Y社出版編集部。殺される。
 若桜(わかさ)妙子 同じマンションの住人。阿坂のファン
 根岸    練馬署の中年警察官
 四阿(あずまや) 練馬署の若い警察官
 
 登場人物の過去編。

 キミ     殺された主人公。美術部
 小島正(ただし) 写真部の高校生.12月に暗室で死ぬ。
 ぼく     手紙を書いた高校生
 沢渡(さわと)卓也 高校生。美術部。

 夏川麻美   キミをかげで慕う女子髙生。
 キミの母   ぼくと共に事件を調べる
 小椋女史   音楽教師
 三島武義   体育教師     



 小説は「赤」を基調に展開する。べつに殺人事件の血の赤ではない。キミが描いていた絵に描かれていた赤い鳥の赤と絵の具の赤、そして絵の具の原料の赤である。

 キミは、この赤を追求してその色を出すための原材料を、ついに見つけ出し絵を完成させる。

 残念ながら、この魅力的な「赤」のことは事件から叙述が移るとともに消えてしまい、物語の終わりまで生かされません。

 そのことがボクは非常に残念です。

 その赤い鳥とは「アカショウビン」です。(「雨宮智彦のブログ 20180923 切手は世界 3 鳥切手 ② アカショウビン」で掲載)