新・本と映像の森 202 北森鴻『メビウス・レター』講談社文庫、2001年
347ページ。定価本体619円。原書1989年講談社より刊行。
「長編ミステリー」。「メビウス」という意味は「ねじれ」である。いくつもの意味で。
1990年7月12日、絵が好きな男子高校生が美術室で焼身自殺をとげる。さらに、もう1人の写真好きの男子高校生が暗室で死ぬ。
2つの死は謎のまま、何年かが過ぎる。
中年作家・阿坂龍一郎にこの事件を独自に追跡した当時の高校生「ぼく」の手紙が届けられる。なぜ阿坂に手紙が届くのか。差出人はいったい誰なのか。
主な登場人物を紹介する。まず現在。
阿坂龍一郎 マンションに住む作家
鳥丸好江 秘書。2年前から勤務。
野島克明 Y社出版編集部。殺される。
若桜(わかさ)妙子 同じマンションの住人。阿坂のファン
根岸 練馬署の中年警察官
四阿(あずまや) 練馬署の若い警察官
登場人物の過去編。
キミ 殺された主人公。美術部
小島正(ただし) 写真部の高校生.12月に暗室で死ぬ。
ぼく 手紙を書いた高校生
沢渡(さわと)卓也 高校生。美術部。
夏川麻美 キミをかげで慕う女子髙生。
キミの母 ぼくと共に事件を調べる
小椋女史 音楽教師
三島武義 体育教師
☆
小説は「赤」を基調に展開する。べつに殺人事件の血の赤ではない。キミが描いていた絵に描かれていた赤い鳥の赤と絵の具の赤、そして絵の具の原料の赤である。
キミは、この赤を追求してその色を出すための原材料を、ついに見つけ出し絵を完成させる。
残念ながら、この魅力的な「赤」のことは事件から叙述が移るとともに消えてしまい、物語の終わりまで生かされません。
そのことがボクは非常に残念です。
その赤い鳥とは「アカショウビン」です。(「雨宮智彦のブログ 20180923 切手は世界 3 鳥切手 ② アカショウビン」で掲載)