新・本と映像の森 205 北森鴻(こう)『暁英 贋説・鹿鳴館』徳間文庫、2011年
581ページ。定価本体680円。2010年4月徳間書店刊。
ボクの大好きな北森鴻さんの終末近くの作品。p578から581に「北森鴻著作リスト」があって33冊の作品が掲載されている。その32冊目。
編集部によれば「結果的に最後の掲載となった2010年2月号の原稿は、2010年1月14日、12時49分、担当編集者宛にメールで送信されました。北森鴻氏はその11日後、1月25日3時頃、逝去されました。」
☆
主人公は明治10年(1877)に来日したお雇い英国人建築家メサイア・コンドルさん。彼と彼の日本人学生たちの学業とからんで日本の政治が活き活きと描かれる。
主題は建築・首都・武士たちというところかな。それに画家・河鍋暁斎(かわなべぎょうさい)さんが絡んでを構成する。
脇役は政府高官の井上馨・三菱の岩崎弥太郎・同僚のドイツ人医師エルウィン・フォン・ベルツ、そしてトーマス・ブレイク・グラバー。
登場しない重要登場人物として、技術者トーマス・ジェームス・ウォートルスと西郷隆盛。
裏表紙のPR「謎に包まれた鹿鳴館を描くという作業は、近代日本そのものを描くこと」と書いてある「作業」に北森鴻さんはメサイア・コンドルさんの心でかなり肉薄していると思う。
河鍋暁斎さんの絵はリアルで見たいです。暁斎さんに「鳥獣戯画」があったというのは、これを読んで初めて知りました。
つまり、① 鎌倉時代の「鳥獣戯画」 ⇒ ② 明治維新の河鍋暁斎さんの「鳥獣戯画」 ⇒ ③ 現代の松山文雄さんの「鳥獣戯画」、という系列・伝統が存在するわけです。
☆
この作品は未完なので、北森鴻さんに代わって結末を妄想する自由画読者にはあります。さあ、どうしようかな。