雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

新・本と映像の森 206 川端裕人『川の名前』<ハヤカワ文庫>、早川書房、2006年

2018年11月13日 14時16分30秒 | 本と映像の森

 

 新・本と映像の森 206 川端裕人『川の名前』<ハヤカワ文庫>、早川書房、2006年

 487ページ、定価本体800円、原書2004年早川書房刊行。

 小学生の男の子たちを主人公にした小説なのだが大人でも十分読めるというより、大人の文学だと思う。主題は「人間と自然」、それを「生きもの」「川」「少年の成長」で描き出す。

 語り手の菊野脩(しゅう)は小学5年生。夏休みを前にして自由研究のプランを考えている。父は写真家・冒険家で滅多に家にいない。母はいないが小説では描かれない。

 登場順に主人公たちを紹介してこの物語の面白さを伝えたい。

 菊野脩 あだな「キク」。自宅はマンション7階。
 鬼澤(おにざわ)先生 担任。あだな「デビル」
 手嶋 優等生。背が高い。
 喇叭爺(らっぱじい) 喇叭を吹く謎のじいさん
ゴム丸 亀丸拓也。家は「五番街」のケーキ屋「パリジェンヌ」。
 もえちゃん ゴム丸の妹。三年生
 河童(かっぱ) 河邑宏童(かわむらひろお)。自宅はセキレイ橋の近く
 海野 クラスの男子。
 委員長 クラスの美少女。
 恵美さん 父の妹。看護士。脩と同居する。
 鈴木さん 多摩川からいちばん近い水族館の獣医。

 物語が展開するフィールドは、主人公達と同じくらい重要だ。いやフィールドも主人公で成長していくのだ。

 桜川北小学校 普通の公立小学校
 親水公園 カブトムシやノコギリクワガタガ普通に見られるのは区内でここだけ
 桜川 親水公園の中を流れる川。多摩川の支流の野川の支流。
 セキレイ橋 親水公園からすぐ下流の小さい橋
 鳳凰池 桜川から200mほどの小川の暗渠でつながる池。
 
 では、ちょっとだけ物語の始まりを……。

 脩は親水公園の草むらのなかに、何か生きものを見る。それは、まるで脩が描いているマンガの主人公ミクロラプトールのような…。

 親水公園を調べ始めた脩は、謎の足跡と羽毛を発見して、謎の生きものの存在に確信をもち、ゴム丸や河童と3人で探し始める。

 同じころ脩は、喇叭爺と出会い会話する。

 「カワガキが少ない。夏だというのに少ない。わたしはまた校庭へ行くのだ」
 「もう夏休みだから、だれも来てませんよ」
 「そうか、ならば、おぬしに会うために、ここに来たことになるな。おぬしは、カワガキになるのではないか。川の名前を持ったのではないか」
 「カワガキってなんですか」
 「決まっておる。川で遊ぶ餓鬼どものことだ。川とは特別なものだ。カワガキも特別なものだ。おぬしにもそれがわかったのだろう。遠く旅して来た者ほど、足もとを見よ.足もとにはどこでも川が流れている。最も近しい流れを知ってこそ、おぬしの旅も意味を持つだろう。」(p140~141)

 生物ははたして小型恐竜?それとも……

   ☆

 むかし「水道」「水」「灰木川」と関わったことがあり、いま浜松で「水道民営化」問題でがんばっている人たちのことを聴くと、懐かしい記憶があふれ出す。

 「水」「川」をまもるため、可能なかぎりボクも支援しようと思う。