新・本と映像の森 210 松谷みよ子『アカネちゃんと涙の海』講談社文庫、2012年
原書1992年、289ページ、定価本体581円。
松谷みよ子さんのライフワークの1つだと思います。
松谷さんが196年に「三つになったモモ」を書いてから、モモちゃんとアカネちゃんのシリーズが「それにしても、ほんとにみんな大きくなりました。モモちゃんも、アカネちゃんも、ほんとにみんな大きくなりました。だから、このお話も、おしまいです。」と本としては完結したのは「30年かかって」のことでした。
この文庫本には『アカネちゃんとお客さんのパパ』と『アカネちゃんの涙の海』が入っています。
妹の「ちいさいアカネちゃんは、とってもとっても大きくなって、もう二歳と七ヶ月になりました。ママが、
「えーと、おねえちゃんは、どこにいるのかな?」
なんて、モモちゃんをさがしていると、アカネちゃんが、とたとた走ってきて、
「おねえちゃん、ここにいるよ」
って、自分の顔を指さすんです。」
幼児の世界は、ほんとにおもしろいです。『アカネちゃんとお客さんのパパ』の第1話「アカネちゃんの腕時計」ではオモチャの腕時計をもらったアカネちゃんが「いまはおひるねのじかんじゃないもん、おやつだもん」と保育園を抜け出します。
野原に行くと「ヒメジョンのあいだの細道を、きらきら光る銀色のおさじさんが、一列に並んで、よちよち、よちよちやってくるのです。
おやつだ おやつだ
おやつだ おやつだ
プリン プリン
プリンのおやつ
ぼくは おさじさん
おてつだいします
お口のトンネル
ああんとあけて
ぼくは おさじの
きしゃぽっぽ
おいしいものを
はこびます
ネコのプーやクツシタのタッタちゃんやタアタちゃん。パパおおおかみ。ぬいぐるみのカバコーフ=モシモーノ。
学校の幽霊や死に神や「アカネちゃんの涙の海」を泳ぐ赤ちゃんクジラやら。
アカネちゃんが1才半のとき、ママはパパと離婚し、パパのやっていた劇団「太郎座」から退団します。離婚やパパの死、核実験などを書いた幼年童話はたぶん多くないでしょうう。
このなかで歌われるうたがとても好きです。
ののさま どちら
いばらのかげで
ねんねをだいて
花つんでござれ
花つんでござれ
残念ながら、ボクはまだ前作『ちいさいモモちゃん』『モモちゃんとアカネちゃん』を読んでいません。
< これまで取りあげた松谷みよ子さんの本 >
本と映像の森 307 松谷みよ子さん『いない いない ばあ』童心社、1967年
2014年07月13日 18時59分27秒 | 本と映像の森
新・本と映像の森 120 松谷みよ子『死の国からのバトン ー 直樹とゆう子の物語ー』偕成社、1976年 2018年03月10日 19時08分53秒