新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

死因究明の問題でふと思ったこと

2008-08-05 07:51:59 | 医療

おはようございます

今日はこの後東京方面に行きますが、時間があるので一個だけ問題提起してみます。

 

先日CBの記事で「死因究明で議論錯綜―日本医学会(中)」という記事があった。昨日アップした木ノ元弁護士の発言が書かれている記事です。

その場所だけ抽出します。

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 【刑事司法の問題は】

会場の医師 業務上過失致死傷罪の改正が必要。業務上過失致死傷罪は死の可能性を予見できたという「予見可能性」と、論理的・事後的に死亡が回避可能だったという「回避可能性」という二つがあれば、犯罪として成立する。起訴されないというのは単に検察の情状。(可能性が)ゼロでなければ犯罪は成立しており、あとはすべて情状だ。なぜ起訴されるかと言っていたが、すべて検察に委ねられている。検察は法の番人で、法があると動かねばならない。法律がある限り、死の危険がある医療は常に犯罪と紙一重。誰でも「あの時ああすれば良かった」ということがあるが、それが犯罪ということで、単に情状で猶予されているだけだ。これで救急や外科医療をするのは無理。法の中に、「医療行為に関しては特に事実の当否に関して問題があるような業務過失に関しては免責される」という条文を入れる必要がある。死と隣り合わせの医療は、常に犯罪と紙一重だ。

鈴木利廣弁護士 今の意見は解釈が誤っている。「予見可能性」と「結果回避可能性」があれば犯罪になるというが、そんな法律はない。結果の「予見可能性」と「回避可能性」があり、その上で、法規範として「ねばならない」とういことがあって、初めて義務違反になる。その「ねばならない」とは、医学会がどういうスタンダードをつくるかということ。それが「標準逸脱」という考え方。標準逸脱の範囲がはっきりしないなら無罪で、起訴されない。標準的なものがあり、それをしなければいけないと医学会が言っており、命を守ることが可能なのにしなかっただけでなく、「しなければならない」のに「しない」というときに法規範が適用される。だから今の意見は刑事法の論理として間違っている。 

また、報告義務との関係で刑事免責と言うが、無罪とか起訴されないとかの問題ではなく、「報告されたことが有罪判決の資料に使われない」ということを刑事免責という。世界中が医療過誤について刑事免責しているかのような議論は間違っている。

■スタンダードあっても不当な逮捕ある

木ノ元直樹弁護士 今の鈴木先生の意見で、根本的に医療者が解決できない問題は、スタンダードをいくらつくっても大野事件のような不当な逮捕・起訴があるという現実。そこをどうするかの答えが出ていないのに、法律がこうだといくら言ってもしょうがない。

鈴木氏 それは医療事故だけではなく、刑事司法全体の問題で、別の問題。刑事司法が誰から見ても公正にならない限りは、医療事故に対する刑事司法を運用してはならないというのと同じ論理だ。

木ノ元氏 大野事件の逮捕は、(逮捕した警察官に)特別公務員職権濫用罪が成立することが問題だ。

鈴木氏 わたしもあの逮捕はおかしいと言っていた。逮捕がおかしいのは医療過誤だけではない。

木ノ元氏 そういう議論があまりにも出てきていない。鈴木先生自身が言っていない。

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「しなければならない」のに「しなかった」というのが罰せられるとありますが、どうなのだろうか・・・・と思っています。

 

実際には「助けようとして」できることを行っているのに「一般的にはこのような治療法が推奨されている」がこの施設、この人員では「ここまでしかできなかった」のに・・・「しなければならない」とされているのに「しなかった」という結論になるのか?

 

たとえば先日「緊張性気胸」になりかかっている人の写真を上げたような気がしますが、あの時は「トロッカー」ではなくて18Gさしています。緊急なので。そしてトロッカーがなかったから。

 

もしあったとしても・・・ま、あの状態なら絶対に肺には当たらないけど、ただの気胸だったら・・一人ではあまりやりたくなかったですね。僕がやって何かあったらいいわけがきかないですもの。

 

まぁ、やれることをしたのですけど・・・。

 

個々の事情を考慮しなくては難しい問題だと思う。

 

もちろん、患者さんの個人個人の事情というものもある。

こちらが「治療を今行いたい」と思っていても、「毎年親戚で集まる会議があるから、これに参加しなくてはならない」といって治療拒否されたり・・・。

この患者さんの状態が悪すぎて、一般的な治療はできない

ということもある。

 

そして「刑事免責」に関して、一部の弁護士さんが強く否定されているということであるが・・・・どこまで考えていらっしゃるのだろうかとは思う。

例えば去年のMSNの記事にこれがある

患者にわいせつの産婦人科医に懲役5年求刑2007.11.29 14:16 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071129/trl0711291417003-n1.htm  

診察を装って女性患者にわいせつ行為を繰り返したとして、準強制わいせつ罪に問われた産婦人科医、平嶋仁博被告(43)の論告求刑公判が29日、福岡地裁(鈴木浩美裁判長)であり、検察側は懲役5年を求刑した。  

平嶋被告は「通常の診療だ」と無罪を主張しているが、検察側は論告で「触り方が診療行為からかけ離れており、患者の下半身の写真を撮る際にも同意を得ていない」と指摘。「患者の信頼に付け込んだ卑劣で常習的な犯行だ」と非難した。  

起訴状によると、平嶋被告は福岡市中央区で女性専門のクリニックを開業。昨年3月末から4月にかけ、診察と称して17歳の女子高校生ら3人の体を触ったり、写真を撮ったりした。

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これが本当にいかがわしい行為をしていたのであれば・・・・「こんな事件で無罪主張をする医師は信用ができない」と思われる方々がいるかもしれない

 

ただ、本当に通常診療行為・・・。写真を撮ったことが「治療前後」での変化をみるためのものだったとかですね。 皮膚病変出現時に「その部位の写真を撮る」ことは普通だと思いますし・・・高校生などには産婦人科的な診察が…通常診療ではないように感じることもあるかもしれない。

 

だから、この件に関してはどちらなのかを本当に詰めてからしか、一般国民に対して公表すべきではなかったのではないかと思っています

 

「誰から見ても明らかなもの」は罰せられるべきだと思います医師が…ではなくて「人としてどうか」という意味合いのものは罰せられるべきだと思います。

 

しかし、この件ですら…解釈の仕方はさまざまだと思います。そしてこの記事は「医師が自分の都合のよいようにいいかねない」と思われてしまう一因だと思っています。

 

ただ、普通の医者は精一杯やっているだけ。できることを最大限行い、患者さんのために尽くしたいと思っているだけだと思います。

 

「しなければならない」が様々な理由で「できない」こともあるのだ…ということと、「とんでもない」事件の無罪主張が…本当に「無罪」なのか、「とんでもない医者」なのか、解釈が分かれるところではないかとは思っています

http://blog.with2.net/link.php?602868

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コメント
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