岐阜駅でお勧めの店を発見した。一階の美濃味匠である。好きなものを皿にとって重さで値段がつく。従業員は全て女性だ。さて岐阜からは在来線で京都に出た。そこから5番の岩倉行きのバスに乗る。烏丸、四条、河原町、三条通りと折れて、平安神宮の大鳥居をくぐり動物園の壁に沿って二条通りの法勝寺町で降りると目の前は白河院の玄関だ。私学共済の直営の宿泊施設である。京都市名勝指定の白河院の庭園は宿泊客の目を楽しませてくれる。私はこのような施設利用は那須、葉山についでこれで三度目である。
食事の申し込み方が失敗だったことを知る。どうしますと聞かれて高価なものを予約した。値段の違いは品数の違いだった。食べ過ぎて苦しくなるほどだった。見栄を張ってはいけない。大いに反省である。夕食時に英国人の夫婦が私達と同じようにゆかた姿で食事をしている。途中から座椅子を注文し畳に足を投げ出していた。なす田楽、もずくなどを残していた。彼らの質問はこれが日本人の日常の献立なのかということだった。
翌朝5時半に目がさめた。散歩に出ようとして片隅の自転車に気づいた。さっそく借用することにした。まず南禅寺である。巨大な山門の下では犬を連れた人たちが談笑している。早朝ならではの風景である。境内の端をレンガ作りの琵琶湖疏水が横切っている。アーチの上まで登って速い流れにしばらく見入っていた。つぎは地下鉄蹴上駅だ。旧東海道を山科からの旅人は蹴上を通る。蹴上から京都の屋根並みが見えはじめると心躍らせながら粟田神社へと駆け下り三条大橋へと急ぐのだ。蹴上では琵琶湖疏水を利用した日本最初の発電所や船を台車に乗せ電力で傾斜を上り下りする水運ルートのインクラインが見られる。最後は神宮道を三条から少し南に行くと青蓮院だ。親鸞聖人が得度したときに植えたと伝えられる樹齢八百年のくすのきの大木が外の通路まで枝を広げていた。
10時前に手荷物を宿舎に預けて出かけた。哲学の道の起点である若王子までは近い。そこから銀閣寺までの1.8キロメートルを歩いた。汗がすぐ噴出し行き交う人もまばらだ。途中立ち寄った法然院でほっと一息し清浄な気持ちになる。初めてこの寺を訪れることを悔やんだ。京都駅ビルで昼食の後に南へ向かう新幹線に乗ることにした。驚いたことに巨大な駅ビル空間をエスカレーターが斜めにぐいぐいと最上階に延びている。駅ビルは外枠を保ちながら斜めに切り裂かれて空洞ができている。外気に開かれた斜めの層にもエスカレーターや階段があり暑さの中を人々が行き交っている。ここは一年を通して連日にぎわっているのだろう。写真は南禅寺にて。