風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

酔いの果て虫責めるなり赤い月 【季語:虫】

2017年10月07日 | 俳句:秋 動物
その夜は友人と会い
話しが盛り上がって
ついつい深酒をしてしまいました

楽しい気分は家に帰るまで続いていたのですが
足元は覚束ず
記憶もところどころが無くなり
あんなたくさん飲まなければよかったと
少しずつ後悔の念も湧き起ってきます

すると秋の虫も僕のだらしなさを
責めるために鳴いているように聞こえ
空を見ると不吉な色をした赤い月

月にも責めたてられているような気がして
僕の後悔の念はますます大きくなるばかりでした

空遠く追いつけなくて秋の蝶 【季語:秋の蝶】

2016年10月08日 | 俳句:秋 動物
秋の気配が風景に染みて行くにつれ
冷たくなっていく地上を嫌ってか
空が高さを増して行きます

その空に追いつこうとしているのでしょうか
小さな蝶が空高く舞っていました

きっと蝶は自分の生きられる時間の少なさを
予感しているのでしょう
その最後の場所として
青空にたどり着こうとしているように思えて

けれどそれを拒絶するかのように
空は日毎に高くなる一方です

鳴くほどに宵闇深めるちちろかな 【季語:ちろろ】

2015年10月04日 | 俳句:秋 動物
姿はまるで見えないのですが
窓辺を開けていると
ちちろ(こおろぎ)の声が
波のように寄せて耳に届きます
虫の声は不思議です
虫が鳴きだすと
その音に耳を澄ますかのように
あたりの物音が止み
静けさが深まっていきます

夜、目が冴えて眠れず
一人いた僕は
虫の声に部屋の闇が
深まっていくような感じを覚えて
快い闇に身を浸していました

雨後の虫待つや月影漏れるまで 【季語:虫】

2015年09月27日 | 俳句:秋 動物
家路へと向かう道を歩いていたら
にわか雨が降って来ました

さっきまでは空も晴れていたので
あまりにも突然のこと
僕は仕方なく店先の庇に逃げ込んだのですが

驚いたのは一生懸命に鳴いていた
虫たちも一緒のようです

一斉に声を潜めると
うんともすんとも言わなくなってしまいました

しばらく休んでいると雨も小降りになり
僕は店先を後にしたのですが

慎重になった虫たちは
雲の間から月の明かりが零れるまで
黙ったまま空の様子を窺っていました

ぎんなんをあわてる子供の注意報 【季語:銀杏】

2014年10月04日 | 俳句:秋 動物
道を歩いていたら幾つかの銀杏の木に
たくさんのぎんなんが実っていました
風に揺られてすぐにでも
頭の上に落ちようと
爆撃体制を整えているさまです

子供たちはそんなぎんなんの
匂いを嫌がってでしょう
どこか楽しさそうな
ぎんなん注意報を発しながら
銀杏の木の下を走り抜けていきました

雨上がり虫の声音に教えられ 【季語:虫】

2014年09月20日 | 俳句:秋 動物
久しぶりに強い雨が降りました
窓を開けたままでいたら
窓べが水浸しになるほどです

雨は時々止んだりしながら
なおも降り続いたのですが

雨の合間合間に
虫の声がどこからともなく
聞こえてきました

それは雨に呼応するかのようで
雨が強くなると弱まり
雨が弱まると強くなるといった具合です

その声はきっと
傘をさす人なみよりも敏感に
雨粒を感じるのでしょう

雨が止む瞬間を今か今かと待っている
虫を思うとどこかユーモラスで
その声音が聞こえてくると
よかったなと思ってしまいます

紅に命高めて赤とんぼ【季語:赤とんぼ】

2014年09月13日 | 俳句:秋 動物
どこか高くなった空を
赤とんぼが一匹
静かに横切っていきました
随分と高いところを飛んでいた
とんぼが目に付いたのは
きっと随分と赤い体の色が
空とのコントラストを奏でていたからでしょう

とんぼも風の流れの中に
秋の気配を感じているのでしょうか
その紅は夏の終りに
自分の命を燃やし尽くそうとする色にも見えて
飛んでいる最中から炎が点り
燃え上がってしまうのではとも思われました

赤とんぼ触れて川面に夕べの火 【季語:赤とんぼ】

2014年08月09日 | 俳句:秋 動物
秋の気配が迫るにつれて
赤とんぼはその色を深めていくようです

それは、遅くなく訪れる
彼岸の時間に向けて
小さな命の勢いを高めているかのようです

産卵のためでしょうか
赤とんぼが水面近く飛んで
おしりを川面につける仕草をしていました

夕暮れの中で繰り替えされるその行為は
真っ赤に燃えた体で
川に炎を点そうとしているかのようでした