風のささやき 俳句のblog

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詩や短歌も掲載しています

春疾風赤子(こ)の頬もプルルと揺れそうで 【季語:春疾風】

2020年02月22日 | 俳句:春 天文
その日は朝から
随分と風が強く吹いていました
ベランダを通る風も
すごい音をたてて通っていきます

鉢植えやら物干し竿やらが
飛ばされてはいないかと心配になり
目を覚ましたぐらいです

こんな風の中に子供を連れ出したら
どうかなと想像したのですが
パンパンに膨れた頬っぺたが
プルプルと震えるのではないかと
そんな姿が浮かんで来て
一人でニヤニヤと笑っていました

破れ傘騒ぐ子濡らす春の雨 【季語:春の雨】

2018年04月21日 | 俳句:春 天文
春の柔らかな雨が降っていました
学校帰りなのでしょうか
ランドセルをしょった男の子たちが
ふざけ合いながら道を歩いてきました

その内の一人の男の子の傘は骨が折れて
半分破れた状態です
きっと悪戯をして壊してしまったのでしょう

それでも諦め悪く
破れた傘をかざしていたのですが
雨はお構いなしにその肩を濡らし

男の子は「冷てえ」と笑いながら
僕の横を通り過ぎていきました

春雷の怒声見上げる怖さかな 【季語:春雷】

2016年05月15日 | 俳句:春 天文
街を歩いていたら
ちょっと前まで青く澄んでいた空に
急に真っ黒な雲が一杯になって
大粒の雨が落ちてきました

傘をもたない僕は
雨宿りにと軒先に姿を隠したのですが

暗い雲の奥では大きな雷が走り
空が光ったかと思うと
太鼓を耳元で鳴らされたような
大きな音が僕を驚かしました

僕は何か悪い悪戯をして
怒られた子供のように
どこか心細くなって
暗い空をしっかりと見守っていました

絵本読む童麗し風光る【季語:風光る】

2016年05月08日 | 俳句:春 天文

先日親戚の小さな男の子が遊びに来ました
疲れを知らずちょろちょろと動き回るので
付き合う方は結構大変です

それでも時々は体を動かす遊びに飽きて
持ってきた絵本を一緒に眺めたのですが
真剣な眼差しを絵本に注ぐその横顔が
とても麗しく思えました

きっともの凄い勢いで
知識を頭にしみ込ませているのでしょう

窓から吹く光る風は
その姿を祝福するかのように
頭を撫でてゆきました

(Haiku)
Eyes full of wonder,
Child turns pages, tales take flight,
Spring breeze, aglow.


羽根よりも軽い舞いかな名残雪【季語:名残雪】

2016年02月27日 | 俳句:春 天文

家に帰ろうと駅に向かったら
パラパラと雨が落ちてきました
小ぶりだったので
傘も差さずに歩いたのですが

電車に乗り家に近づくにつれ
雨は雪に変わり
家に着くころには空一面の雪

フワフワと風に舞う雪は
行きつ戻りつ
重力も感じられず
真っ白な羽根が空に踊るようです

その羽根に埋め尽くされた空
街灯に照らされて幻想的です

心奪われて
家を急ぐ人波に乗り遅れて
空を見上げた僕でした


ペダルふみ木々くぐる頃風光る 【季語:風光る】

2014年05月03日 | 俳句:春 天文
この前
若葉に茂る道を走る自転車を
印象深く眺めていました
それが緑のトンネルの中を
軽やかに走り抜けていく
不思議な乗り物のように見えたからです

どこか音も静かなその自転車には
きっと光る風が荷台に乗って
一生懸命に背中を押していたのだと
そんなふうにも思われました

春風と芝生の上の添い寝かな【季語:春風】

2014年04月23日 | 俳句:春 天文

春の公園に遊び
歩きつかれて芝の上に休むと
青く茂った芝は柔らな布団のように僕の体を沈めて

目をつむる僕は春風の中に抱かれるように
ひとときを眠っていました

それは眠ったことさえ
わからないような軽い眠りでした


(Haiku)
Spring wind enfolds me,
On verdant lawn, dreams whisper,
Together we rest.


あくびして涙潤ます春の空 【季語:春の空】

2014年04月20日 | 俳句:春 天文

長閑な春の日
ベンチに座り本を読んでいたら
眠気に誘われました

何度もあくびをして
見上げた空は涙に潤み
ぼんやりかすんだで
一層、柔らかい色合いに見えました

本を置いて
見飽きない穏やかな色合いの空を
涙もぬぐわずに眺めていました


(Haiku)
Yawning, tears well up,
Moistening the springtime sky,
Hues of gentle blue.