風のささやき 俳句のblog

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蜜柑 【詩】

2023年04月13日 | 
「蜜柑」

子供が、高い所に実った
蜜柑を取ってくれとせがむ

見上げれば、今朝の柔らかい
春の朝焼けを手に取って
おにぎりのように丸めた蜜柑が
靴べらの様な葉っぱの間に見える

ごめん、僕に手が届く場所にはない
世界で一番、背の高い人でも届かない
けれど、子供は聞き訳もなく
棒でも使えばいいと、一丁前のことを言う

それだけ、春の日差しの
柔らかな皿の上にのった蜜柑は
何よりも美味しそうな、ご馳走に見えるのだ
降り注ぐ陽ざしから、酸味と甘さの
成分を絶妙に、じっくりと抽出して
閉じ込めた、丸み

しかし、気づきもしなかった、僕は
そんな木の上の蜜柑の存在に
手の届かない所には、目を向けようとはしない
知らんふりをする、気弱さの
いつの間にか、自分になっている