その日は少し冷たい雨が降っていました
僕は駅で電車を待っていたのですが
通過する電車も雨に濡れて
手すりにつかまり立っている人たちの姿も
濡れた車窓の向こうに歪んで見えていました
笑って会話をしている人、俯いている人
スマホに熱中する人と
それぞれだったのですが
心の奥底には本当は
泣きたい気持ちを抱えていて
濡れた車窓の上にそれが
現れているようで
勝手な納得感を持って
通り過ぎる電車を眺めていました
速度を少し落とすために
ブレーキをかけた電車と
レールとが軋む音も
悲鳴のように聞こえていました