風のささやき 俳句のblog

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夏休み 【詩】

2024年08月01日 | 

「夏休み」

農作業を終えた昼間、朝から今日も暑かった
皆は昼寝、眠気を知らない、子供の僕は
退屈のあまりに蝉を取りに行く
近くの神社の参道、年老いた背の高い
杉の木のうっそうとしたところ

いつの間にか油蝉と、太い幹との
色の区別もつくようになって、そっと網を伸ばす
鳴き止んでしずかに、飛び立とうとする
網と蝉とのせめぎ合い、僕の野球帽には汗が
滴り、一夏で、駄目になりそうな帽子よ
僕はそれだけ、走って息を切らした、体はそれを求めていた

蝉の幼虫は毎夕、誰が教えるともなく
土の中から這い出してきて
例えば、桑の葉の裏につかまり動かなくなり
やがてひび割れる背中から
立ちあがる、青白い柔からな生き物の
命の限りの鳴き声を、僕は捕まえに行くのだ

水路には水草、僕が走ると
ドジョウが逃げた、たがめやアメンボ
蝉よりもそちらが面白くなって
足を、その流れに託した
土を浚って、ヤゴを手に乗せた
これが蜻蛉に変わるなんて、その変容の不思議

人は、目に見えて脱皮はしない
けれど日々に生まれ変わりたい
僕もいつかは、姿を変えて
空を羽ばたくのかしらと
そう思えていたのは、遠い夏の日

そんな素直に、自分が羽ばたく姿を
思い描くことが出来なくなった
それは、空を見上げて、飛んでいく力を、心が
失ってしまったからなのかも知れない
でも、僕はまだ憧れ、羽ばたける日のことを思っている

祖父の手にしていた、アヤメの葉につかまって
生まれたてたシオカラトンボが
柔らかい乳白色から、色を変えて空に飛び立った
夏の朝の陽射し、その不思議、真似ようと
今でも胸には、秘めるものがある



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