風のささやき 俳句のblog

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籠の中の小鳥 【詩】

2019年06月06日 | 
「籠の中の小鳥」

籠の中の小鳥は寂しい
持って生まれた羽で
空高く舞い上がることもできない
落ちて行く夕陽を追いかけて
山並を飛んでいくこともできない

調子よく鳴いている朝の歌を
聞いてくれる物もいない
籠の中の小鳥は哀れだ
歌声の音符を青空に
撒いてみる楽しさを知らない
歌声に応えて歌声が
大きく響きあうことを知らない

籠の中の小鳥の黒い瞳が映すもの
それは見慣れた飼い主の姿
空を忙しく飛ぶ蜂の姿を
見たことがあるだろうか
天がける虹のプリズムの色合いを
見たことがあるだろうか

籠の中の小鳥は
一人小さな鈴を鳴らして遊ぶ
花と遊ぶことも
虫と遊ぶことも
風と遊ぶことも
雲と遊ぶことも
籠の中の小鳥には
許されていることではなくて

籠の中の小鳥は悲しい
けれどそれは
空を飛ぶ小鳥と比べてみたら

空を飛ぶ小鳥は
空を飛ぶ小鳥で苦しくて

風を受けてきしむ羽根には
冷たい雨水が沁み込んで来る
安心して眠れない夜の闇が
どれぐらい黒くて恐ろしいものか

籠の中の小鳥は暖かく安心な夜を眠るのに

一人ぼっちで空飛ぶ小鳥は
終わりの無い広さに戸惑うばかり
口ずさむ歌は時として
神経に不安が刺さる悲鳴であったりと

きっとどの小鳥もどの小鳥で
苦しくて 寂しくて
どの小鳥もどの小鳥で
楽しみが分け与えられていて

そうして僕の目の前にいる
小さな籠の中の一匹の小鳥
朝日の中で僕を見上げるお前に
僕は素直に湧いてくる
愛情を傾けることにしよう

太陽に背向けぬ仕事出来てるかすぐさまハイと言えぬ我あり 【短歌】

2019年06月05日 | 短歌
自分のやっている仕事が
太陽に顔を向けても恥ずかしくないものかと
自問自答をするときがあります

すぐにはいと答えるには
いつでも自分はどこか自信がなくて
どうしたものかと思い込んでしまうときがあります

自分の中にはいつでも
もっと出来たのではないかという
自分への不信感があって

それが素直に自分にハイと言わせぬ
一因になっているようです

いつか即答できる時まで
頑張るしかないなと思うばかりです

仏にも初夏の風にも千手あり 【季語:初夏】

2019年06月01日 | 俳句:夏 時候
初夏の風が頬に触りました
まるで柔らかないくつもの手が
優しく撫でて行くようでした

そのときには確かに
風の中にたくさんの手が
見える気がしていました

まるで千手観音に
たくさんの手があるように

風の中の手は僕に触れては
何か言葉を授けていき

けれど僕の耳はそれを聞き取るには
あまりにも無力

ただ柔らかく撫でつけられながら
風の中を歩いて行くだけでした