風のささやき 俳句のblog

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初夏の風景に

2019年08月08日 | 
初夏の風景に

僕の眼差しが透き通って行くのは
頭の上の緑が風に楽しそうに揺れるから
その合間から見える青空の色が美しくて
こぼれる光が目の上で遊ぶから

夏の風に足首をつかまれたように
動けなくなる僕の瞳は
一瞬ごとに表情を変える
タペストリーから目が離せなくなって

その編手のしなやかな指先を
せっせと動く不思議な手の営みを
光る編み棒と巻き糸の数々を
見てみたいと思っているから

透き通って行く眼差しからは消えていく
僕を取り囲む灰色のビルの色合いも
列を成す数々の車の姿も
そうして通り過ぎていく人々の姿も

僕の中の時間も序列を失くして
自意識過剰の日常の奥に閉じ込められている
幼い時分の陽射しの匂いする楽しさが
いつの間にか頭をもたげてくる

僕の体も指先から美しく透き透ってしまい
解きほぐされた糸の先のように
風の中に乱れていって
この風景の中に編みこまれてしまえばいいのに

見えない両手に絡み取られて
その微笑の意のままに
風や空や緑と編みこまれて
風景に色を成すように

やがては立ち尽くす僕を
怪訝に思う人の群れに体を押されて
僕は透き通りきれない体にまた
日常を詰め込んで歩き出している

二歩三歩よろめき転び立ち上がる七転び八起き地で行く赤子よ 【短歌】

2019年08月07日 | 短歌
一人で立つようになった子供

何かにつかまらないでも
体をちょっと震わせながら
頑張っています

ここのところは更に進歩が見られ
二歩、三歩と歩くようになりました

当然ちょっと歩くと
疲れてしりもちをつくのですが
また思い出したように立ち上がっては
歩こうとします

ほんとうに良くめげないものだと
七転び八起きの実例を
目の当たりにする気がします

自分は一度めげると
なかなか起き上がれないので
子供のタフネスさが
うらやましいなと思います

汗疹には石鹸しみて泣く子かな 【季語:汗疹】

2019年08月03日 | 俳句:夏 人事
この時期は汗ばむ季節
体温の高い子供ならなおさら汗をかくのでしょうか

子供の体のあちらこちらに汗疹ができていて
手で掻いてしまい傷だらけになっています

久しぶりに引っかき防止用に
手袋をしたのですが
それを簡単にとってしまいまた掻いています

一緒に風呂に入ったときには
その傷に石鹸がしみるのでしょう
静かに体を洗わせてくれません

自分で力加減を調整できるようになれば
もう少し違うのでしょうが

小さな生命(いのち)に 【詩】

2019年08月01日 | 
世界一可愛いクリオネを見たと君が言った
超音波の写真に小さく写っていた新しい生命
確かにそれは見間違える事なき天使の姿だったのだろう
君のメールの文面からは素直な興奮が伝わってきた

何もなかった君のお腹に突然宿って
僕らと同じ生の時間を小さな鼓動が刻みだしたこと
日々見えないところで成長を続け
人の姿に近づきながら
この世に産声を上げるため
それは確かに奇跡だと思えてくる

僕は小刻みに動く心臓を思い浮かべ
後何回それが打ち鳴らされれば
僕らは出会うことができるのだろうと

この世への期待が鼓動を高鳴らせるのであれば
少しでも生まれ来る新しい生命が
喜べる場所にしてあげたいものだと
何も創りだしていない両手を
しみじみと眺め今更ながらに
反省をしている自分もいるけれど

順調に大きくなってくれるかしらと
喜びは君の中に新しい心配を生み
僕はそんな心配がやがては
喜びの中に取り込まれてしまえばいいと思っている

新しい生命の小さな手が
僕らの指先をつかむ感触を
しっかりと胸の奥に感じ取れる瞬間の喜びに