70年代の初め、いつもレコードを購入していた名古屋ヤマハで、忽然と目の前にこのレコードが現れた。まだ、この手のレコードについてそれほど知識はなかったけれど「ホンマかいな?」と目を疑った。
当時、本当にリリースされているのか?と噂されるほど激レア盤で、ファクトリー・シールドの新品、しかも、値段も普通の輸入盤と同じ位だった。
疑問を憶えつつ開封してみると、白っぽいチープなラベルで、‘DISTRIBUTED BY STARDAY-KING RECORDS’と記されており、「あぁ、ニセ物や、やっぱりなぁ~」と妙に納得した。
後で小耳に挟んだ情報では、真偽は兎も角、日本の業者がSTARDAY-KING社に委託制作したブツとか。ベツレヘムはもともとKING社のジャズ専門レーベルで、買収されSTARDAY-KING社になったようです。
不安げに針を降ろすと、チリチリ雑音が・・・・・・・・・・・・、
通称「カゼひき」と言われる盤で、ガッカリし、聴く気にもならずそのままレコード棚の隅に。「カゼひき」とは、粗雑な剥離材を使用したためスタンパーからビニールがうまく剥がれずに細かい凹凸が出来、それが原因でチリチリとノイズが発生したものです。
それから何年か後、バランスウォッシャーというレコード・クリーナーが評判になり、スクラッチ・ノイズが気になるレコードに試したところ、思いの外、効果があった。ふと、このカゼひき盤を思い出し、ひょっとして・・・・・・と。
これがものの見事に的中、チリチリ音を蹴散らし、まるで霧が晴れたように本来の音が蘇ったのです。果して、それがオリジナルの音と比べてどうか知りませんが、自分のレベルではもう充分でした(モノラルです)。
このバランスウォッシャー、シビアに聴くと音にやや副作用もあるそうですが、一般的レベルではそれほど問題ないのでは、それよりメリットの方が絶大ですね。
もう一つ、長年の疑問が・・・・・・・・・、それは「Friends」ではなく「Friend」になっているタイトル。
今回、カヴァを眺めていて、花紋のような二つのマークに気が付いた。共演者達ではなくtpがフレンドだったのですね。それなら、もう少しマシなイラストにならなかったのだろうかと。
長い前置きはこの位にして・・・・・・・・・
tpは人の感情「喜・怒・哀・楽」を最も表現する楽器で「花形」とも言われるが、リトルのペットは常に「哀」、「メランコリー」が強く寄り添い、その「陰気さ」に抵抗を感ずる人も少なくない。
でも、本作の‘If I Should Lose You’を余分な感情移入をせずストレートに吹くリトルに胸が詰まるほどの「痛々しさ」を憶えない人はいないでしょう。
同じtp、J・コールズの‘THE WARM SOUND’やモブレーの‘SOUL STATION’を聴くと、違いに驚くはず。
この録音の後、急逝、享年23。この遺作は死後、リリースされている。
「未完」というより「未知」の大器のイメージが強いです。
同い年(1938年生れ)でリトルに一目も二目も置いていたハバードは、翌年、自己のアルバム‘HUB-TONES’ の中で‘Lament For Booker’を以て追悼している。
厳粛さに満ちたELEGYは完璧だった。