60年代末のジャズ・シーンを席巻したロイド・グループのブームも収まった70年代初頭、また、新しいグループが躍進し、多くのジャズ・ファンのハートをギュッと捉えた。
「ミュージック・インク」のネームはC・トリヴァーのリリース初リーダー作”THE RINGER”(1969年)に既にクレジットされていますが、実質的にはこのSTRATA-EAST原盤が1st・アルバム(1970年11月11日)と言って良いでしょう。所有するのは原盤と白黒が反転している英ポリドール盤です。
世はマイルスが先導するエレキ・ジャズが主導権を握っているかのようにマスコミは喧伝するが、必ずしもそうではなく、この4人組はストレート・アヘッドなアコーステッィク・ジャズ。
トリヴァーは所謂、新主流急進派、カウエルはニュー・ジャズ畑のESP出身者で、マクビーはあのロイド・グループのオリジナル・メンバーですね。
このスタート・アルバムはカルテットだけではなく総勢13人からなるホーン陣がバックに付き、tpにはR・ウィリアムス、V・ジョーンズ、ts・flにはJ・ヒース、C・ジョーダン、tbにはC・フラー、G・ブラウン、その他、H・ジョンソンと錚錚たるメンバーが門出を祝っている。
収録曲は双頭コンボらしく、トリヴァー、カウエルが其々、3曲ずつ出し合いアレンジも担当している。リキの入れ具合が分かりますね。
TOPのトリヴァーの”Ruthie's Heart’から全開モード炸裂!いやはや、50年の歳月を忘れ、瞬く間に「あの頃」に戻ります。
STRATA-EAST盤は自主運営と言うやや特殊なレーベルのため、当初、輸入盤でしか手に入らず、名の浸透にやや時間が掛ったが、「ジャズ・フラッシュ」(NHK)でオランダ・ルースドレヒト ジャズ フェスティバル」のライブ盤(1972年)が放送されるや一気に大ブレークした。同じ職場にジャズをかじっていた女性がいて、翌日、一番に駆け込んできて「体中、痺れちゃいましたよ!」興奮気味に話しかけてきたことを今でも鮮明に覚えている。男は余計なことを考えるけれど、女性は素直ですね。
人気絶頂の1973年来日し12月7日、東京郵便貯金ホールで内部対立で袂を分っていたカウエルが復帰した”IN TOKYO”が録音され、オランダと甲乙付け難い見事な出来栄えとなっている。個人的にはカウエルのpが入る”IN TOKYO”の方が断然、好きですね。
tpワンホーン カルテットという難しい編制で、あの時代、ジャズ・シーンをあれほどまでに盛り上げ、支持を受けた”MUSIC INC.”の魅力って何だったのだろう。「アコーステッィク・ジャズに限界はない」ということを証明したからだろう。
そういう意味で、この”MUSIC INC.”の存在価値はジャズ史上、非常に大きい。
なお、1970年5月1日、NYの”Slugs’”でカルテットによるライブが2枚、既に録音されていましたが、リリースは1stの後になっている。
”Slugs’”は1972年2月、モーガンが射殺されたクラブです。