J・マンデル絡みでエヴァンスの晩年作を取り出した。マンデルの曲を収録しているのは左の二枚ですが、この際、まとめて。
リアルタイムでこの時代のエヴァンスを聴いていた者にとって、当時を語るには辛いものがあり、なかなかキーボードが進まない。
この頃のエヴァンスの評価、人気は現在では信じられない位落ち込み、「もう、あかん」ならまだしも、公然と「カクテル・ピアニスト」と名指しする者も現れるほどで、もし、「起死回生」の一発となった真ん中の”YOU MUST BELIEVE IN SPRING”がなかったなら、「エヴァンス伝説・人気」今ほどではなかっただろう。”QUINTESSENCE”(1976年)辺りから自分の中でそろそろ「ヤバイ!」と思うようになっていた、のも事実です。
この3枚の裏事情からも、エヴァンスの微妙な立ち位置が朧気ながら掴める。
まず、録音日は、左から順に、
① ”I WILL SAY GOODBYE”(FANTASY) 1977/5/11~13
② ”YOU MUST BELIEVE IN SPRING”(Warner Bros) 1977/ 8/23~25
③ ”WE WILL MEAT AGAIN” (Warner Bros) 1979/8/6~9
そして、リリースは、
①は1980年1~3月ごろ
②は死後翌年の1981年
③は1980年3~6月ごろ(一説には1979年末)
つまり①、②は所謂「お蔵入り」状態になっている。なお、エヴァンスが亡くなったのは1980年9月15日。
①はFantasyでのラスト作。
最終作なので「立つ鳥跡を濁さず」とでも言うのでしょうか、思わせぶりなタイトルとカヴァの割に澄ましたプレイに専念している。エヴァンスとFantasyの音はあまり相性が良くないせいか、クリアだけど高域が薄く派手なのでプレイ自体が軽く感じられ、更にゴメスのピック・アップで増幅したbが相変わらず味気ないのも難点ですね。録音技術のせいかもしれない。
全体に及第点はクリアしているけれど、エヴァンスにしてはなにか物足りない、どこか気取っていて、もう少し深みが欲しかった。
リリースを先延ばししたのはエヴァンスの意向なのか、Fantasy側の事情なのかは兎も角、それなりの理由を孕んでいる。
今回はこの一枚で。辛口でゴメン。