・・・・・・あわぞうの覗き穴・・・・・・

気が向いたときに、覗いてご覧ください。
何が見えるかは、覗く方々のお眼め次第です。

時代の寂寥

2012年11月05日 | つぶやきの壺焼

喫茶店ではない、繁華街の大通りにあれば茶店とも呼びにくい。

甘味屋という呼び方を使っているところもあるが、どこか情緒がない。
しるこ屋という呼び名がやはりしっくりくる。
そんな店が、むかしあった。

いまは路地の奥に引っ込んでたばこを売っている。
むかしのたばこ屋は、販売窓口があって、道を尋ねればわかりやすく教えてくれる人がいつも坐っていたが、そういう店ではない。
商号だけは、むかしのまま厳存している。

大通りの店を引き渡すとき、名前だけは残したいと、おかみさんががんばったかどうかは知らないが、ずらっと並んだ自販機と看板灯を見比べると、なぜなぜ症の人は、名前の由来を尋ねたくなるのではないかと思う。

大通りの空気も、この一年でまた変わった。
にぎやかさと言うより騒がしさが増して、ふらっと入ったり、何も買わずに出てきたりしやすい店が、ほとんどなくなってしまった。

やはり人がいて、ものを“みせ”るところでなければ、店とは呼びにくいのである。


老舗の訓(おしえ) 人づくり (岩波アクティブ新書)
鮫島 敦
岩波書店