電話機のACアダプター出力側電圧が、2回路ともゼロというのはおかしい。
どちらか一方の回路が故障ならわかるが、一度に両方やられることは、不運の重なりすぎで、そんなことは滅多にない。
むかし、設備の故障対策論議で、ダブル・コンティンジェンシーを考えるべきかどうかと、何度も何度も繰り返していた I さんを思い出した。
一つの器具で、偶発故障が同時に別々に起きたことを想定するよりも、ほかの現象をつきとめるのが順序なので、もう一度出力電圧がゼロというのが本当かどうかを調べることにした。
ACアダプターの出力端子はモジュラージャック型で、接触部分が狭い溝の中にある。
電圧ゼロというのは、テスターのリードの尖った先端が、モジュラージャックの接触片に触れそこなっていたのではないかと疑いを持った。
そこで、リード線に極細のドライバーをつないでもう一度電圧を測定。
予想的中で、定格より少し高めの電圧が出ていることがわかった。
それなら電話機本体の故障だと、底蓋をあけてみようと思ったが、この止めねじが、小さな穴が花形に並んだ特殊なもので、専用のドライバーでなければあけられなくなっている。
仕方なしに電話機を交換して、ひとまず点検はお預けとなった。
特殊ドライバーに出会う機会がなければ、そのまま忘れられる。
こうして古いものが故障の原因をつき止められずに、問題未解決のまま世を去っていくのだ。
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