バカ正直という言葉は、バカに見えるほど正直な人のことをいうのかと思っていたが、また違う意味があった。
まったく筋の通らない話を、相談ずくでまとめて、それをそのまま大勢の人に伝える代弁者というバカ正直の変化形である。
代弁者というよりただの伝言人で、さすがに本人も恥ずかしいのか、顔は前を向いているが眼を上げなかった。
そこでバカにされていたのは、発信者側でなく受信者側だった。
重要な組織の人選問題である。
通常ならば協議の上で決めなければならないのに、決定のルールに仕組んであった、わずかなザルの目を潜り抜けて、協議なしで決めてしまった。
話の中身は、またかと思うようなよくあることなのだが、それを決めた経緯の説明が、いかにも聞き手をバカにしたようなものだったのである。
「なぜ協議しなかったのか」への答えが、「協議すると反対されるから協議しなかった」というもの。
そこでけしからんと思うのはまだ早過ぎなのである。
「反対されるから」が大うそで、協議の相手はそれを受け入れる態勢にあったそうなので、反対を怖れてではなく、協議の場を開くことに何か不都合があったらしいという。
決めた方法がルールの捻じ曲げで説明のしようがなく、急いでいたのでごめんなさいとも言えず、証明困難な大うそを理由にもちこんで記者会見をする。
記者のほうも無関心を装ってそのまま伝える。
「反対されるのが嫌で相談しなかった」という正直風虚言が、それとは知らされることがなくまかり通っていく。
寒い、雪の万里の長城に追いたてられているような気分である。
詳しい話はこちら、40分余り続けられるときにご高覧を。
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ニュース・コメンタリー
(2012年11月03日)
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