・・・・・・あわぞうの覗き穴・・・・・・

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だだもれとはどういうことか

2012年11月28日 | つぶやきの壺焼

言葉のもつ意味は、使い方によってだんだんずれてくる。

髪の毛の荒れを治す化粧品のCMに「だだもれ」という言葉が使われている。
髪の毛の表皮が崩れて、中の髄質や皮質の構成物質が漏れ出すことをだだもれと表現したのだろう。
しかし、人が目にするのは髪全体のささくれた状態で、髪の毛一本一本にどういうことが起きているかは、その知識がなければ見てすぐにわかるものではない。
全体のささくれた状態の表現を、細部に起きている現象の理由に言い換えて表現すると、言葉を知らない人は、髪の毛の「ささくれ」た状態を「だだもれ」と言うものと思ってしまうこともないとは言いきれない。

「あら、きょうは髪の毛、どうしたの」「そう、だだもれよ」
言う人が増えれば、しゃれのつもりが日常語になっていく。

こうして「だだもれ」とはどういう意味かという問いに、「髪の毛がぼさぼさになっていること」という珍答がいつしか定着する。
何年か後に発刊されるふざけた国語辞典には、そのまま載るかもしれない。

ものごとの状態あるいは現象の表現を先にするか、理由あるいは原因の表現を先にするかは、本質を言い当て得るかどうかにかかわってくる。
直接表現でわかりやすくするか、迂遠な言葉でわかりにくくするかは、どう伝えたいかにかかってくる。

いきなり理由や原因を説明しても、目の前にない現象は伝わらない。

こんなこともある。
ある人が会に遅れてきた場合のように、その場の皆にわかり、現象が説明不要のことなら、電車が遅れて、という理由から入るのも有効だろう。
「電車、遅れちゃって」ですむかもしれない。

ただ、それで遅刻への謝罪をまぬかれたつもりでいると、なんだこいつという見方をされることは間違いなく、行き先、だだもれ人生が待っているということになるおそれもあるのでご注意を。


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門倉 貴史
光文社