「もてなし」という言葉に一文字の漢字はありません。
一つの漢字では表しにくいことだからでしょう。
新しい複合漢字を作る遊びもときどき見られますが、これまでなかった文字を作り出したところで、それを公用文にも使えるまでにはならないでしょう。
「もてなし」と、もう一つの「しつらい」という言葉は、ともに茶のこころ、日本人の心の根にあるものの代表であるといわれます。
どちらもその場で互いの心を感じ取ることがだいじで、その場を設けられた機会に恵まれたからといって、以後どんなことも聞き入れてくれるなどと思うのは大間違いです。
招かれたことを強固な友好の実績のように掲げて、商談や国交に利用しようなどと考えるのは、ただ「さもしい」の一語に尽きます。
「さもしい」にも一文字の漢字はありません。
もし、国家が正式に客として外国の元首を招待するのであれば、日本人の心を受け入れられる「さもしい」心根を持たない相手でなければなりません。
たとえ百年の計を持った実力者であっても、ことあるごとに他国の国政に口をはさんだり、脅威を示したりするような輩には、日本人の心を受け入れることは望むべくもないのです。
国賓は、国民の大多数が心から喜んで迎え入れる人でなければ、招き入れることは差し控えなければなりません。