怒髪天を抜き 気は大地を覆いつくす。
精気は満ち満ちていながら ここで挫折せねばならないとは。
・・・虞や。虞や。汝を如何せん。
・・関羽さんの いかんせん。
・・・・。
咄嗟のことであった。
土州は津野山郷の郷士 矢野折右衛門は鯉口を切り 居合いを抜ける体制に身構えた。
おろかな・・・。自分でも分かっていた。此処で先に抜けば確実に切られる。
じりじりと 袴で相手には死角となっている 効き足の中指に 力を込めた。
なぜだか 今日はやけに 中指の水虫が痒かったのである。
・・いかんせん。痒い。
・・・・。
算用。才覚。始末。
井原西鶴さんは、商売人の王道をこう説いた。
できるものはできる。できないものはできない。おのれの才覚を知ること。
できるものはできる。できないものはできない。おのれで算用がつくこと。
できるものはできる。できないものはできない。おのれが始末をつけること。
・・いかんせん。わたしにゃ才覚もなく算用も立たちがたく。始末におえませんなあ。
如何せん。の風景。
・・おっぺけぺ。おっぺけぺ。おっぺけぺっぽう。ぺっぽっぽう。
どうしようか?
という分岐点に立つことは、日常茶飯事である。
朝飯前に済ませられることもあれば、昼飯まで持ち越すこともあれば、晩飯まで考えなくてはいけないこともある。飯にありつけない事だってある。
そう茶飯事の如く、人は選択を行いながら生きている。
じぶんの持っているもの。
じぶんが掴もうとしているもの。
じぶんの生き様。
如何せん。