春陰や温かきもの自販機に
春の曇りがちな天候をいう。
漢詩に由来する漢語だが、近代以降、季語として使われるようになった。
春は明るいイメージがあるが、「春陰」は憂いを帯びた陰りを感じさせる。
空はどんよりと曇り、春陰となった。
何か温かいものを求め、自動販売機へ向かった。
春陰やアンテナに鳥一羽きて
春陰や温かきもの自販機に
春の曇りがちな天候をいう。
漢詩に由来する漢語だが、近代以降、季語として使われるようになった。
春は明るいイメージがあるが、「春陰」は憂いを帯びた陰りを感じさせる。
空はどんよりと曇り、春陰となった。
何か温かいものを求め、自動販売機へ向かった。
春陰やアンテナに鳥一羽きて
止むはずがやまぬ春雨散策す
春に降るしっとりとした趣のある雨をいう。
『三冊子』は陰暦の正月、二月初めの雨を「春の雨」とし、二月末から三月に小止みなく降り続く雨を「春雨」として区別している。
だが、現代ではそこまで厳密には分けられていないようである。
雨はもともと暗いものであるが、「春雨」「春の雨」には「春」という季節特有の華やぎが感じられる。
天気予報ではもうじき雨が止んで曇りになるはずであった。
そこで散策に出たのであるが、なかなか止まず細かい雨に変わっただけであった。
畑土の黒々として春の雨
喜ぶを慎みゐたり春の雪
春になってから降る雪のことをいう。
太平洋岸の関東以西では、春先になってから思わぬ雪が降ることが多い。
冬の雪と違って解けやすく、多少積もってもすぐに消えてゆく。
冬には降らず、春になって初めて雪らしい雪が降った。
春の雪を喜びたかったが、豪雪地帯の苦しみを思うとそうもいかなかった。
春雪の畑に鴉や茫として
一万歩超しゐて春の入日かな
春の日はうららかな明るい太陽、その入日をいう。
二月は春といっても依然として寒さが厳しく、日本海側や北日本では豪雪となることもある。
太平洋側では晴れることが多いが、春の日らしくなるのは三月に入ってからであろう。
春の入日には春の一日への愛惜の気持ちがある。
散策で二時間近く歩き、一万歩を超した頃、春の入日となった。
春入日坂の上より山見えて
気がつけば真夜となりけり朧月
朧に霞んだ春の月をいう。
ヴェールのような薄雲が広がる夜には、月は雲を通して朧に見え、暈がかかることも多い。
宵には春満月が綺麗に見えていたが、後で写真を撮ろうと思ってすっかり忘れてしまった。
真夜中に気づいて見上げたら、薄雲があっという間に広がり、朧月になってしまった。
ファックスは訃報なりしよ月おぼろ