春の宵

渓流の音を窓辺に春の宵



　



日が暮れて夜がまだ更けない頃をいう。

春の宵は艶めいた情緒があり、どことなく華やいでいる。

湯上りに宿の窓辺に寄ると、下の方から渓流の音がより大きく聞

えてきた。

春の宵のくつろいだ気分に浸った。






春宵や摘みて回すひねり独楽



　

遅春

春遅し松島のその島影も



　



春の訪れの遅いことをいう。

暦の上では春であるのに、春とは名ばかりで未だに寒く、季節

の移り変わりが一向に進まない状態。

松島へ行った。

大震災による津波の被害は、島のお蔭で他よりは少なくて済ん

だという。

その島々は未だに寒そうで、春が遅々としているのが感じられた。




円通院三慧殿


山裾の禅寺の庭春遅々と




円通院小堀遠州作の庭（伊達藩江戸屋敷にあったものを移設）


陸前の遠州の庭春遅し



　

柳の芽

釣人の池を囲めり柳の芽



　



早春に新しく伸びた柳の枝に、浅緑の新芽が吹き出す。

枝垂柳の芽は美しく、いかにも春らしい。







小さな池を囲むように釣人が竿を垂れていた。

その上を芽柳がゆっくりと靡いていた。






芽柳や藁葺屋根に雀きて



　

エリカ

「アイーダ」の思い出されしエリカかな




　



ツツジ科エリカ属植物。

ヨーロッパ西部、イギリス、南アフリカ等原産。

花はばら色または紫紅色。

露地や温室で栽培。

丈は低いが早くもエリカが咲いていた。

エリカは地中海沿岸にも分布しているためか、数か月前に観た

ヴェルディの歌劇「アイーダ」が思い出された。






曇り日のエリカといふもよかりけり



　

椿(2)

禅林の椿といふも真紅



　



寺の墓地には椿が何種類か植えられている。

禅寺とはいえ真紅の椿が咲いていた。






子規のこと乙女椿を律と見て






今年はや誰彼の逝き白椿