山吹や点り初めたる常夜燈
山吹は、山の谷間で枝が風に揺れ動くさまから「山振」と呼
ばれたのが語源とされている。
京都の松尾大社(まつのおたいしゃ)に夕方詣でた。
赤い大鳥居の上部に乾びた枝が垂れ下がっていたが、これ
は「脇勧請(わきかんじょう)」と呼ばれるもので、鳥居の原始
形式を示すものという。
十二の榊の束があり、月々の農作物の出来具合を占ったと
いう。
山門をくぐると小流れがあり、その両側に八重山吹が奥まで
連なって咲き乱れていた。
境内にはほとんど人の姿は見られなかった。
ただ少女が一人、しゃもじの形をした絵馬に恋の願い事を真
剣な表情で書いていた。
次第に暗くなってきたので、常夜燈が点り始めた。
近くの八重山吹が一層艶やかさを増した。
絵馬に書く少女の願ひ濃山吹