何十年も前に『ゴーマニズム宣言』を買って読んで以来(ハテ、何故買ったのか覚えていない)、
我が人生とは相容れないと思っていた小林よしのりさんへのインタビューを、
4か月遅れで読みました。
ワーワー騒がれているときは、そこからスッと引き下がり、後ろ向きになる私の癖で、
ネットで小林よしのりさんの発言が話題に上っていることは知っていたのですが、
ほとぼりが冷めた?この時期に、どれどれと読んでみたのです。
読んで、驚きましたよ。
なんか私が普段思っていることとかなり重なるのです。
小林さんが変わったのか、あるいは、変わったのは私なのか。
以前田中康夫元長野県知事が言った言葉に、
「ぼくは舞台の右に立っていて、自分の立ち位置はちっとも変わっていないのに、
舞台がグルグル回って、いつのまにか左に立っているのです。」
というのがあり、この小林さんもそうなのかなと思いました。
『ゴーマニズム宣言』を読んでうへっと思った時から
私自身、そんなに変わっていないと自分で思っていますが、
時代の極右傾向が、
極右以外の人間たちを相対的にひとまとめにするのでしょうか。
「野党は共闘!」もそういうことかと思います。
極右に勝つには、それしかないとも思います。
――――――2015年07月14日 (弁護士ドットコムニュース)
「自民党議員は『保守』ではなく『ネトウヨ』」安保法案・小林よしのり氏に聞く(上)
与党が7月15日にも、衆議院の特別委員会で採決する構えをみせている安全保障関連法案。この法案をめぐっては、多くの憲法学者が「憲法違反だ」と声をあげるなど、反対論が根強い。安保法案をめぐる政治の動向をどうみればいいのか。安保法案に異をとなえる漫画家の小林よしのり氏に聞いた。
●安保法案は「従米法案」
ーー安保法案について、どう考えているのか。
ワシはそもそも改憲派で、いまの「自称保守」の連中よりタカ派だと思ってる。
けれども、今の安保法案には反対しないといけない。
それは、あの法案がひとえに「アメリカ」を向いているから。
政府があの法案を通したい理由は、「夏までにこの法案を通す」ってアメリカに約束したからです。
あの法案を一番正確に言い表す言葉は「従米法案」。
戦争法案っていう表現は、的確ではない。
これは、アメリカについてくためだけの法案だから「従米法案」で、
だからダメだってワシは言ってる。
こんな法案に賛成するやつのどこが保守ですか。屈辱ですよ。
ワシは別に左翼になったから、法案に反対って言ってるわけじゃない。
●集団的自衛権を使いたいなら、憲法改正するしかない
そもそも、自衛隊は軍隊じゃないんですよ、やっぱり。
自衛隊は軍隊じゃないっていうことを、みんなどうやら忘れて議論しているみたいで。
軍隊じゃないもので集団的自衛権をやろうとすると、
これはどうしても矛盾が出てくるんですよ。
軍隊は「やったらダメだ」と言われたこと以外はできる。
でも、自衛隊は予め「やっていいよ」と決められた範囲内でしか活動できない。
軍隊が軍隊じゃない組織と共に戦うとなると、これはもう矛盾だらけになっていくわけよ。
集団的自衛権っていう風になると、
軍隊じゃないものを軍隊として動かすということになってしまうから、やっぱり違憲になっちゃう。
集団的自衛権をやりたいなら、憲法を改正して、自衛隊を軍隊にするしかない。
絶対にそれしかない。
ただ、憲法を変えるにしたって、アメリカに付いていくための憲法改正だったら、
わしは反対しちゃうけどね。
●原発にミサイル落とされることのほうが危機
法案を通したい人たちは、もはや一国では守れない世界になりましたという。
でも、これは全くのウソ。
軍事同盟を結んでない国って、世界にいくらでもあるわけ。
それで、国は守れないっていうのはウソなわけ。ペテンのプロパガンダだよ。
ーーどういうプロパガンダなのか。
やつらのプロパガンダは「国際安全保障環境が非常に厳しい状態になった」「激変しています」っていうわけ。
これがまたペテンなんでね。
国際安全保障環境がものすごいきびしいって・・・冷戦時代のほうがすごかったよ。
米ソが核開発競争をやってたときは、明日にも核戦争が始まるってぐらいの感覚だった。
ワシが子どもの頃なんかは、いつ核戦争が始まるんだろう、って思ってたよ。
子どもがだよ。
テレビや新聞でも、核戦争による人類滅亡までの危うさを示す「世界終末時計」
なんていうものが「人類滅亡まであと2分」って報じていた。
子どもながらに「えー、もうだめだおしまいだ」って、それくらいの緊迫感があった。
実際キューバ危機とかもあった。
みんなそういうリスクを抱えながら生きてた。
よっぽどその時のほうが緊迫してた。
そのときと比べたら、今はなんてことはないという状態なわけですよ。
もっというなら、日本海側に原発がぶわーっとあるでしょ。
ここにミサイルが落とされたら終わりでしょ。これのほうが危機だよ。
日本の一番の危機は、ここにミサイル落とされておしまいってことよ。
ノドンだろうとなんだろうと。それでもう終わりなんですよ。
若狭湾の原発に何発か落とせば、日本列島は分断される。
六ヶ所村にも核廃棄物が一杯あるでしょ。あれを撃たれたら大変なことになるよ。
この危機は、存立危機ですよ。なんでこれ、ほっぽらかしてるの?
北朝鮮の軍事力は、韓国と戦うのにほとんど全力を傾注して、
やっとというレベルだけど、もし北朝鮮が暴走したら、
日本の原発と米軍基地にミサイルが飛んでくる可能性はなくはない。
でも、日本の領土を守ることは「個別的自衛権」の話だからね。
●「存立危機」は存在しない
ーー政府が主張している「存立危機」をどう考えればいいのか。
政府は、さっき触れたような話を全く言わないで、
尖閣諸島の無人島を取られることが存立危機だとか言ってる。
スクランブル発進が多すぎると言うけど、
あそこは日中間で棚上げ合意がされていたところを、日本側が刺激した。
そうなったら、にらみあうのは前提で、その緊張感に耐えないと仕方ない。
それにもし仮に、あの島に上陸したとして、維持はどうするんですか。
海上を封鎖されたり、空爆をされたりしたら、どうしようもない。
結局、どこに危険があるかというと、ないんですよ。
万が一、仮に中国がシーレーンを封鎖したら、存立危機がくるかもしれないよ。
でも、シーレーン封鎖を中国がやりはじめたら、これはもう周辺諸国への宣戦布告になる。
中国もそんなことは絶対にしない。
中国経済は崩壊しつつあるし、中国はこれから国内問題で大変だよ。
ちょっと海を取ったところで、国内問題がどうかなる状態ではない。
そんな中、東南アジア諸国の反発も全部無視して出てくるとか、相当難しい話だよ。
アメリカも、アジア経済圏の地歩を固めようとしている。
アメリカは絶対、中国の市場を狙っているわけね。
資本主義ってそういうものだから、周縁の途上国に拡大しないと発展はないから、
アメリカがそれをやらないわけがない。
でも、アメリカも中国も核を持っているし、米中間は絶対に戦争はしない。
結局のところ、「存立危機はない」ってことでしょう。
●立憲主義の原則を崩してはならない
ーー今回の安保法案については、憲法学者から「違憲」との声が多く出ているが、憲法問題としてどうとらえればいいのか。
結局いま、立憲主義を守るのか、国際関係の逼迫感なのか、
この2つが天秤にかかっている。
ワシが問題視しているのは、「立憲主義の危機」なんですよ。
憲法9条の危機ではない。左翼は憲法9条の話をするけど、ワシは違う。
「立憲主義が壊れることがとってもまずい」って言っているんです。
日本が近代国家として、「法の支配」を守ろうという前提があるのなら、
立憲主義を大事にしないと何にもならない。
憲法を守らなくていいなら、憲法改正の意味はなくなる。
やはり権力の暴走は法でしか止められない。法で国民は戦うしかない。
立憲主義を壊してでも、対処しなければならない危機があるというけど、
それは「権力に暴走を許せ」ということ。それが自称「保守」の論理なんだ。
ワシは違う。
権力が暴走して国を滅ぼすことは、現実にあった。
権力はやはり縛らないといけない。
必ずしも軍人だけが暴走するのではなくて、シビリアン・コントロールをしても、
シビリアンだって暴走する可能性があります。
権力をしばる立憲主義の原則は絶対に崩してはならない。
昔は天皇に軍隊を統べる大権があって、それが利用されてしまった。
天皇に統帥権があったから、シビリアン・コントロールがうまくいかなかった、
という反省が今の憲法にはある。
そのへんを自称保守の連中はわかってない。
「改憲」だって、憲法を無視しないことが前提です。
立憲主義じゃないと意味が無い。
それを保守の側から言わないと分からなくなってしまう。
自称「保守」の理念は、反サヨク。だから、何かを守るといった理念はない。
左翼の反対をやろうとしてるだけだから。
●みんながネトウヨ化している
ーー自称「保守」とはどのようなものなのか。
自称「保守」の感覚と、ネット保守の感覚って同じなのよ。
より罵倒語をネットのほうが使うだけで、原理は一緒。
自民党の議員は、『WILL』みたいな雑誌を読んで影響を受けているし、
ネットもよく見ているし、『チャンネル桜』みたいな番組を見ている。
勇ましくても、論理が破たんしている情報ばかり話すんです。
勉強がめちゃくちゃ浅いわけですよ。
だから、在特会とかと一緒に写真を撮ってたり、
仲良くしているような連中がおるわけですよ。みんながネトウヨ化しているんだよ。
安倍首相のフェイスブックでも、ネトウヨが発信した情報をシェアしちゃう。
それにネトウヨがいいね、いいねと押して、全部ネトウヨ化という状況なのよ。
沖縄のことなんかも、全然知らない。
百田尚樹は、普天間基地がある所はもともと田んぼしか無かったというけど、
その時点ですでにおかしい。
田んぼだって沖縄県民のものですよ。
もう無茶苦茶な、もう何のことを言っているのかわからんレベルの話が、
ネトウヨの中では通用している。
アメリカ軍が沖縄の土地を徴用したときの「銃剣とブルドーザー」という、
沖縄県民なら誰でも知っている言葉ですら知らないんですよ。
沖縄の歴史を根本的に知らない。
そういうことは『沖縄論』を出した時に全部書いたけど、
自称保守は「汚点になる」と思って読まない。
気持ちよくなるところだけは見るけど、日本のまずいところは見ない。
見たいものしか見ない、見たくないものは見ないということになってしまっている。
たとえば、安倍首相が、米議会で演説したとき、
「日本にとって、アメリカとの出会いとは、
すなわち民主主義との遭遇でした」と言っちゃったわけ。
ホントだったら、保守だったら、激怒しないといけない発言ですよ。
違いますよ。
日本とアメリカの出会いは、砲艦外交と不平等条約だから。
幕末にだって、横井小楠のように議論で政治をすべきだと言っている人がいた。
以前改憲論議が盛り上がった際に、
美智子皇后さまが「五日市憲法」に触れられた意味を考えないといけない。
明治時代にも、日本国民が自ら憲法を作ろうという動きは、いっぱいあったんだ。
だから、アメリカに民主主義を教えてもらったわけではない。
日本を誇りたいのなら、あんなバカなウソはゆるしちゃいかん。
でも「保守」は「あの演説はよかった」というんだから、無知だよ。
それほど保守論壇は劣化している。ネトウヨと何も変わらない。
それに影響を受けた議員もネトウヨ化している。
保守がいなくなってネトウヨしかいないんだ。
http://www.bengo4.com/other/1146/1287/n_3382/
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